*さいはての西*

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『ペンギンズ FROM マダガスカル ザ・ムービー』(2014)感想その1:総評編


ドリームワークスの人気アニメ「マダガスカル」シリーズに登場した「ペンギンズ」を主役にしたスピンオフ作品。かつて動物園でペンギンズに人気を横取りされたことに恨みを抱くタコのデーブが、人間の姿をしたオクト博士に変身し、世界中のペンギンたちに復讐しようと計画していた。その企みを知ったペンギンズの隊長らは、一世一代の任務を決行する。監督を「マダガスカル」のシリーズ3作を手がけたエリック・ダーネルが自ら務めた。英語版のオリジナル声優にはベネディクト・カンバーバッチ、ジョン・マルコビッチら豪華俳優陣も参加している。
(映画.com)


劇場版ペンギンズ鑑賞は、わたくしは12月13日をもって事実上の千秋楽となりました。
本当に、楽しい時間をありがとうございました。
3週間の限定公開としてスタートでしたが、大ヒットしたおかげで公開延長、それがさらに数日から一週間単位でじりじりとロングランとなり、最長12月18日までの公開となりました。
まずは感謝の意をお伝えしたいと思います。
限定とは言え、公開してくださって、ほんとうにほんとうにありがとうございました。

その心意気に対してファンができること、それは劇場に通うことだ!! ってんで、見ましたよ。

11回。(暇か)
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……たいへんでした。(告白)

だって映画館、どこも遠かったのです。
交通費と移動時間だけでペンギンズ本編何回見れたかなっちゅう話です。
最寄りの劇場一日2回しか上映していないところばっかりで、映画館にこもってれば一日5回余裕とかないのです。
でもいいのです。そういうお祭りだったのです。満喫したのです。
移動中にたくさん本も読めたしいいのです。
ユナイテッド・シネマグループのカードを最初に作っておいてよかったです。
今後出番があるのかどうか定かではありませんが。すみませんだって遠いから。遠いからー!!(ユナイテッド・シネマさんから来たペンギンズどうでしたかメールアンケートには全身全霊を込めて回答して万感の思いを込めて送信押した。)


US盤Blu-rayで見ていたので、いくらなんでももうだいじょうぶと思っていて、でもさすがに3年以上ぶりに劇場の大画面でドリームワークス・アニメーションのロゴ見たら泣いちゃうかな、と思っていたら、めっそうもなかったですね。
20世紀FOXのロゴの時点で泣いてましたね。
その後なんかのスイッチ入ったままになってしまい、最後まで顔笑ったままぼろぼろ泣いてましたね。
さすがに泣いたのは初回だけでしたけれども、もう、傍から見てたら確実にどっか具合悪い人にしか見えなかったと思います。

***

そんなわけで、やっと日本で公開され、それも終了し、ディスクもリリースされたこともありますので、感想をアップいたします。


今回は、「劇場版ペンギンズ感想、その1:総評編」。


全体的なこと、監督のこと、英語版について、吹き替え版について、字幕について、その比較、興行成績について等々、言いたいことが山のようにあるのですが、まずは、一映画として観た全体的なことを、できる限り客観的な目で見た感想としてアップしたいと思います。

相当クールな感想です。
劇場で泣いた涙はなんやったんやっていうくらい、ちょうクールです。

もちろん全面的にネタバレですので、未見の方は回れ右でお願いします。
繰り返しますが今回の「総評編」は、かなり辛口の感想になっています。批判的な意見はいっさい見たくないという方にもオススメしません。ブラウザ戻るでお帰りください。
あといつもどおり長いですので、ご用とお急ぎのない、以上2点了承済みの方だけ、どうぞお入りくださいませ。

*以下の作品についても触れています。
TVシリーズのペンギンズ(日本未放送回あり)
『ターボ』
『マダガスカル3』
『ヒックとドラゴン2』













最初に吹き替え版の感想ですが、吹き替えはシナリオも声優さんも最高でした。

英語版の駄洒落などは、元のニュアンスを、気持ちいいくらい、ほぼ全部無視してありました。
おかげで日本語としての勢いやリズムがあり、作品の持つハイテンションのペースに水を差さず、とても見やすくなっていました。
一面、英語版も大好きな身の上としては残念ではあるのですが、英語版で繰り返し出てくる俳優名の駄洒落などは英語でなければ意味が通じませんし、面白さがわかりません。
小さい子どもはゲラゲラ笑っていましたが、アニメーション作品としての勢いで笑っている様子でした。本来のターゲットをはずさずロック・オンできたということでしょうから、結果として大成功だったのではないかと思います。
おかげで絵とセリフがつながらないところもありましたが、これは仕方がないと思います。物語と関係のないシーンなので、全体的には問題ありませんでしたし。
冒頭、字幕の方が、英語版が伝えようとしている意を深く汲んでくれているなと思うところがありました。けれども、ここもそもそも作品として失敗しているところなので、あまり気にしなくてもいいと思います。
(この辺りの原語版との比較は、別記事でまとめたいと思います。)


ただ、作品単体で見た感想としては、

「なぜ、こんな中途半端な作品にしたのか」

もう、これに尽きます。

「マダガスカル」三部作を作ったチームの実力は、こんなもんじゃないだろうと。


最初はUS盤Blu-rayでは英語で見たので、自分の理解の足りないところが必ずあるだろうし、それでかなと思っていたのですが、劇場で吹き替え版を見ても、この感想はなんら変わらなかったです。

子ども向けになりきれていない。かと言って大人にもアピールしきれていない。
カッツェンバーグCEOのおっしゃったDWAのコンセプト、「子どもの中の大人」へのアピールが失敗しているということです。
ファンが多いTVシリーズと、「マダガスカル」シリーズの大人っぽいペンギンズからいいとこ取りしようという虫のいいことを考えたのが見え見え。
それが成功していたら良かったのですが、(結果論ではありますが)むしろあだになってしまっている。

興行的にも失敗に終わったのは、この、「みんな」にいい顔をしようとした結果、結局どの層にも深く、強くアピールするということがなかったために、リピーターを生まず、映画を観たあとディスクや配信サービスを購入しなかった層も多かったということだろうと思われます。
成績不振についても、ペンギンズの大ファンで「マダガスカル」シリーズがDWAの不動のオールタイムベストという自分から見ても、冷静に見れば、(悲しいかな)納得せざるを得ないと思いました。
(興収についても別記事でまとめたいと思います。)


***

なぜこんな中途半端な、「八方美人は誰の友だちでもない」という、ドイツだかフランスだかのことわざのとおりの作品になってしまったのでしょうか。


同情すべき点はあります。

当初、経験の浅い、しかも過去の監督作品を見るだに実力に不安のある監督が単独監督だったこと。
配給の20世紀FOXの判断で、公開が半年も前倒しになったこと。
途中からTVシリーズの脚本家がクレジットされたこと。
途中からベテランの監督が入り、フタを開けたらクレジットは主・副逆転していたこと。
IMDbでは最初はTVシリーズのキャラクターや、マダガスカルシリーズの主役もキャスティングされていたが、途中からなくなったこと。

これらの事実関係から想像できるのは、以下のような状況です。

・最初に単独で任せた監督に、そもそも強い創作意欲や、こういう映画にしたいという強いビジョンがなかった。
・≪売れるコンテンツ・ペンギンズ≫にあぐらをかいて、「ペンギンズってこんなんだよね?」というイメージ先行で、TVシリーズと映画からいいとこ取りしようとしたけれど、監督にビジョンがないので、キャラクターからして芯がぶれぶれ。キャラクターの魅力に乗っかったスピンオフなのに。
・そこへ公開が前倒しになったこともあって、スミス監督単独ではぶれてとっちらかったディティールをマネジメントできなくなった。
・見かねた上層部の判断で、中途半端な時期から監督として入ったベテランの方が、作品の蓋を閉めざるを得なくなった。(あとから入ったダーネル監督が結局蓋を閉めたので、最終的にクレジットも主・副逆転した)
・そこへもってきてTVシリーズの脚本家のアイデアが強くなり、既成作(=TVシリーズの最終回)とまったく同じプロットの焼き直しという、豪華なTV映画になってしまった。
(TVシリーズとの比較についても別記事にまとめたいと思います。)

しかも、正味80分の尺の映画で、説明不足なところ、伏線すら拾い切れていないところがあるのに、要らないセリフやシーンが多い。
全体的にはTVシリーズ最終回と同じ話だけれど、キャラクターがぶれているので、ドラマとして収斂しないままです。

TVシリーズの方はペンギンズの中でいちばん未熟者のコワルスキーががんばってハッピーエンドになる、という点で、「ついにか」(←リコにまで言われてた)「よかったね!」という、ビルドゥングス・ロマンとしてのカタルシスがありました。映画にはそれがありません。新人はメンバーから軽く見られていますが、ある意味一番大人でよくできた子です。だから彼は内面的には"成熟"はしません。むしろ"気づき"を経て変わるのは隊長の方です。(あるいはシークレットの方です)隊長を主役にすればもう少し面白いドラマになったかもしれません。
新人を主人公に据えるのであれば、そこに何らかの成熟のドラマが必要だったと思うのですが、ホモソーシャルとマチズモのカリカチュアであるペンギンズでそれをやろうと思ったら、物語のセオリーで言えば≪父殺し≫しかありません。目の前の壁である父的なものを倒して乗り越えなければならない。
それを端的に(あるいは即物的に)やってのけたのが『ヒックとドラゴン2』でしたが、「それはマダガスカルではやらない」とトム・マクグラス監督が明言されていますので、このシリーズでは禁じ手でしょう。
新人にとっての父的な存在と言えば隊長ですが、隊長を殺すわけにはいきません。
なぜなら、ペンギンズは実体は隊長というキャラクター一人だけなのであって、コワルスキーが頭脳、リコが肉体、新人は隊長の心であることを、やはりトム・マクグラス監督が明言されているからです。(隊長は最初「Joe Penguin(ペンギン君)」とだけ呼ばれていて、一人だけだったことがわかります。Skipper(潜水艦の艦長)という呼び名は、ほかのメンバーがいて初めて出てくる、相対的な名前ですしね。)

こういった点を、はたしてどれほどスミス監督がきちんと理解していたのか。映画を観ているとはなはだ疑問です。


横からクルマがつっこんできてキャラがはねられる、というネタはDWAらしくてブラックで大人向けじゃない? という向きもあろうかと思いますが、これの元ネタは、たぶん『ターボ』です。エンディングに『ターボ』の監督であるデヴィッド・ソレンさんがスペシャル・サンクスとしてクレジットされていますので。
『ターボ』で同様のシーンを見たときはご近所迷惑なくらい笑いましたが、映画ペンギンズで見たときは、正直「またか。というか『ターボ』の自社パロディ?」と思っただけでした。(ちょこっとは笑いましたけれどもね。)

つまり、何もかも「どこかで見た」ようなネタで、しかもおんぶにだっこなんですね。
DWAは映画のパロディてんこもりなのは作風でしたが、今回はDWAの自社ネタのリサイクルてんこもりでもあり、「どこかで見たぞこれ」が二重になっています。
コメンタリがないので詳細がわからないのですが、スミス監督が出したアイデアってあるのだろうかと。
(日本では幸か不幸か『ターボ』は日本未公開ですし、TVシリーズのペンギンズも3年経ってやっと世界が放送済みの話に追いついてきている状況でしたので、地味ながらもロングランできるくらいヒットしたのは、それが幸いしたのかもしれません。)

わたしはそんなにマニアックな映画ファンではありませんので、個別の作品でおもしろそうだと思ったら見る、というタイプです。スタジオにこだわって全部見るというようなことをしているのはDWA作品だけです。まれに俳優さんにハマって出演作マラソンをすることもありますが、監督にこだわって見るということもしていません。

ですが、改めて、映画の監督って本当に重要なんだなと思いました。

海外のファンで「トム・マクグラス監督を戻して撮り直せ」と言っている人があり、それを読んだときはまだ映画を見ていなかったのでピンとこなかったのですが、見終わってつくづく「同感だ」と思いました。

スミス監督の単独作品は『ビー・ムービー』くらいしかないのですが、今回ペンギンズも見て思ったことは、スミス監督という方はきっと、まじめで頭のいい人なんだろうなということです。
言い換えると、理屈が先にたってしまうようなところがあって、肌感覚で面白いということを表現できるタイプの監督ではないのかもしれません。


そんなこんなで、本当に悔しいというか、フラストレーションのたまる映画になってしまったうえに、2015年12月20日現在『マダガスカル4』もペンディング、ペンギンズの続編も一瞬浮上したものの現状半永久的に未定という状況で、つらくて仕方がないです。

ですが、映画ペンギンズを見て改めて、マダガスカルシリーズはやはり自分のDWAオールタイムベストだということを認識しました。
これだけぼろぼろと穴がある作品ではありましたが、それでもやはりペンギンズが大好きですし、これからも好きでしょう。
惚れた弱みってこういうことなんですね…(しみじみ)。

これについても記事を改めたいと思います。
きっと燃え萌え語りになりますので、今のうちに避難しておいてください。




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by n_umigame | 2015-12-23 01:41 | 映画・海外ドラマ | Trackback | Comments(0)
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