*さいはての西*

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『バーナード嬢曰く。』(1~2巻)施川ユウキ著(REXコミックス)一迅社


読むとなんだか読書欲が高まる“名著礼賛"ギャグ! 本を読まずに読んだコトにしたいグータラ読書家“バーナード嬢"と、読書好きな友人たちが図書室で過ごすブンガクな日々──。 『聖書』『平家物語』『銃・病原菌・鉄』『夏への扉』『舟を編む』『フェルマーの最終定理』……古今東西あらゆる本への愛と、「読書家あるある」に満ちた“名著礼賛"ギャグがここに誕生!!
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本好きさんの間(一部?)で話題沸騰だったこの作品を、やっと読みました。

ウワサどおり、とっても面白かったです。
もう、笑えばいいやら泣けばいいやら、あるいは我が身をかえりみて穴掘って隠れればいいのかやらです。
本好き、読書好きには、必ず身につまされるところがあるのではないでしょうか。
本ネタマンガだと思っていたのですが、最初は格言マンガだったのですね。格言だけでもたなくなったので本マンガに転向したのだそうです。いいのかそれで(笑)。おかげさまで楽しいから読者としてはありがたいですけれども。


”バーナード嬢”こと町田さわ子は、図書室に入り浸る女子高校生。
それだけでもめずらしいのに、さわ子嬢(と個人的に呼んでいます)は、「本を読まずに読んだフリしたい」人なんですね。
これも今どきめずらしい。
と言うのも、本を読んでいるとかっこいいとか、ある種の基本図書読んでいないと恥ずかしいといったメンタリティそのものが、もう絶滅危惧の考え方だからです。
もうここだけで本好きに支持された理由がわかろうというものです。

さわ子嬢がいかにダメな子かということが、作中何度も強調されて、それで笑いを取るパターンも多いのですが、いやいや、さわ子嬢、全然ダメな子じゃないと思います。

理由のひとつは、上に述べたように、いわば教養主義的な考え方自体が、今どきの人にしてはもうめずらしいから。本を読むことでしか得られないものがあるということを知っているからです。本好きの我田引水と言われればそれまでですが、少なくとも、「そこ」を「良きもの」として目指そうしている人だから。
ふたつめは、「読めと言われたらちゃんと本を読むことができる」から、です。
ここで言う「読む」とは単純に「通読できる」ということです。
よく、歴史上のエピソードとして、お馬鹿さんの代名詞的に、マリー・アントワネットが生涯一冊の本も読み通せないくらい集中力のない人だったと言われますよね。
実はわたくし、常々、そんな人いるのかよと思っていたのですが、いるんですね、実際に。「字しか書いてない本は退屈で読み終われない」そうです。(それを堂々と言ってしまえるところに、皮肉でも何でもなく、ある種の清々しさを感じたくらいです)
確かに本を読むという作業は、訓練だと思います。
小さいうちからやっていると大して苦にならないのですが、いざやろうと思うと、けっこう体力も精神力もいる作業だろうと。自分はスポーツ音痴なので、これがスポーツだと思うと「やれ」と言われても急には入っていけない気持ちがよくわかります。ふだんから体を鍛えていると何でもない山道も、そうでなければ険しいものですよね。(そしておそらく体力を無駄に消耗しない=楽しく行うコツがある。これも訓練でしか身につかないのだと思います)
しかも、本は、映画のように座ってながめていれば何かしらは入ってくるというタイプの情報媒体ではありません。積極的に入っていかないといけない。

ですので、この2点だけをもってしても、さわ子嬢はとても立派だと思いましたよ。本当に。

さわ子嬢のキャラクターも、こんな感じでいいのですが、脇を固めるキャラもとてもいい。

まず、遠藤くん。
遠藤くんも、もちろん男子高校生なのですが、どういうわけか図書室にしょっちゅう入り浸っています。そこでさわ子嬢と出会うわけなのですが、遠藤くんはこのマンガの狂言回しです。"ちょっと前に流行ったベストセラー"を読むのが趣味。ただこの「ちょっと前」もけっこう古くて(笑)、シドニイ・シェルダン(シェリダン)の『真夜中は別の顔』とか、『一杯のかけそば』『さおだけ屋はなぜつぶれないのか』、ダン・ブラウンの『ダ・ヴィンチ・コード』とかとかなんです。遠藤くんのチョイスだけで、うわあ懐かしい(笑)というノスタルジーに浸れること間違いなしです。
次に、神林しおり。
名前からもわかるように(笑)、神林さんはSFファン…というかもうマニア。高校生とは思えないくらいですが、ジャンル小説は特に、10代のころのあの集中力をもってして読みあさる方が良かったなって今になって思うので、神林さん正解です。「SFは基本図書1000冊読んでないとSFファンとは言えない」そうなので、よかったわたしSFファンじゃない(笑)。
そして、長谷川スミカ。
図書委員で、遠藤くんに憧れています。そしてバリバリのシャーロッキアン。長谷川さんも高校生とは思えないくらいめんどくさいシャーロッキアンです(笑)。
もうね、神林さんと長谷川さんの言ってること読んでると、SFファンとシャーロッキアンがいかに面倒くさいかということがとってもよくわかり、じっと手を見ましたよ。
この4人がレギュラーメンバーです。
自分が一番近いのは、神林さんです(笑)。もう断言します。こんなにSF読んでないけど。

そして、キャラクターどうしの化学反応がとてもいいのです。
一話完結のコメディなのに。
私が好きなのは、やはり、さわ子嬢と神林さんの関係。
神林さんは、ある意味、優等生的/マニアックな本との接し方、読み方しかできない読書家で、自分でそれを多少コンプレックスに感じていると思しきところがあります。
最初は俗物っぽいさわ子嬢の読書への態度に、怒りもあらわにからんできて、それどころかグーで殴ったりするような過激な子なのですが(あとで謝ってるけどそのわりにはよく手が出てる(笑))、「かっこつけない」さわ子嬢の本への接し方を見ているうちに、神林さんも自由になっていくのですね。

それが爆発するのが2巻です。(と言うか2巻は神林さんのデレが炸裂してます。かわいいよ神林…)
さまぁ~ずのダジャレ本に大受けしているさわ子嬢を見て、
「見栄とか関係なく
好きなモノを
純粋に好きって
言えるのは
すばらしいな…」
と心から感動して、うるうるしてしまう神林さんに、私もうるうるしちゃいました(笑)。
そうだよね、そうだよね。

優等生が自由すぎる子に感化されたりあこがれたり…という作品はいろいろとありますが、本が好きな神林さんの、このさわ子嬢への何とも言えない憧れのような気持ち、とてもよくわかる気がします。そしてこれが完全に神林さんの片思いだというところも(笑)。

神林さんの名誉のために言うと、さすがに名言も多いです。
「グレッグ・イーガンは
多少よくわからなくても
すっっっごく
おもしろい!!」
「ハードSFを
読む上で求められる
リテラシーとは
『難しい概念を理解
できる知識を持って
いるか』ではない
よくわからないまま
でも 物語の本質を
損なわずに作品全体を
理解するコトが可能な
教養のラインを
感覚で見極められるか
どうか』……だ」

「ディックが死んで
30年だぞ!
今更 初訳される
話が面白いワケ
ないだろ!!」

とか、P.K.ディックやグレッグ・イーガンてハードル高けえと思いがちな向きにも福音のひとこともあれば、

「本は 読みたいと
思った時に読まなくては
ならない
その機会を逃がし
『いつか読むリスト』に
加えられた本は
時間をかけて
『読まなくていいかも
リスト』に移り
やがて忘れてしまうのだ」

とか、いつも心の掲示板に朱書きで貼っておきます! という鋼鉄並みに重量のあるひとことまであります。


いろいろとこねましたが、このマンガを読み終わったときに思うことは、「本っておもしろいよね」という、これにつきます。
そして、読んだ本についてああだこうだ言える友だちがいるって、すばらしいことだよね、と。
3巻も楽しみです。






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by n_umigame | 2016-03-20 23:15 | コミックス | Trackback | Comments(0)
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