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*さいはての西*

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【ネタバレなし編】『カンフー・パンダ3』(2016)とりあえず感想


ドリームワークス・アニメーション「カンフー・パンダ」公式サイト

この記事は2016年7月26日現在の情報です。

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今年6月28日にリリースされたUS盤Blu-rayで『カンフー・パンダ3』を見ました。
これまで日本未公開のドリームワークス・アニメーション(以下DWA)の映画は、できるだけブログには感想を上げないようにしてきたのですが、思うところあって今回はアップすることにしました。
「すっごい感動しました❤」とか「映像がきれいでした~❤」とかあたりさわりのないことを言ってお茶を濁す方法もなくはなかったのですが、やはりきちんと書いておこうと思います。

英語でざっと一回見ただけ、特典などでの裏・補足情報未見。アートブックはざっと見、ノベライズも一度ざっと読んだだけです。(ところどころ必要があれば再読しています)


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感想の前になのですが、来ませんねえ、日本での公開情報……。


当ブログでもこちらの記事で「公開決定したようです!」と喜びいさんでご紹介したので、毎日のようにこの記事にヒットしたと思われる方にお越しいただいているのですが、記事を書いた時点で噂されていた「2016年夏公開説」も、残念ながらまた流れてしまった模様です。
いちおうまだ2016年ですし、劇場版ペンギンズのときのように日本盤ディスクがリリースされるときに限定公開という可能性もなきにしもあらずのようですが、やっぱり劇場で正式に公開されないと意味がないと、改めて思うようになってきました。
こんな状態で結局根本的に何も解決されていませんし、「劇場で正式に公開されない」というそのこと自体が、作品のある面での評価になってしまっているからです。
(これには人それぞれご意見があると思いますが、日本で公開されている劇場用海外アニメがコンテンツとしても最大公約数的に大勢の人に人気があるのは、やはり理由があるなあと納得せざるをえません)

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IMDbでは日本は2016年3月18日公開になっていて、
相変わらずいいかげんだなあと
生あたたかい目で見るしかありませんね…。


『ヒックとドラゴン2』やペンギンズのときにふりまわされて疲れてしまった反省から、今回は公式筋から信頼できる情報が出て来ない限りはTwitterでも安易にRTしたりしないと決めていたのですが、あれから本当にうんともすんとも音沙汰なしです。
(できれば、「って書いたとたんに公開情報出ましたよ!」と言いたい…)

2015年末時点での記事は、ソース(情報源)が20世紀FOX映画さんのYouTubeの公式チャンネルですので、この時点ではさすがにデマや噂ではなかったと思うのですよね。夏くらいに公開したいなあという目算があったのだろうと思います。

ですが、「ドリームワークス・アニメーションの新作"The Boss Baby"情報」でも書いたように、もう最近は海外アニメもディズニー/ピクサー一社だけがDWAのライバルなのではなくて、D/P社に追いつくか、興業成績だけなら追い越しているイルミネーション・エンターテインメントやブルースカイ・スタジオ、その他これまでアニメ映画を製作していなかった会社までがアニメ映画を発表してきているので、何も日本での知名度も人気も低めのDWAの作品を無理して公開するリクスを背負わなくても、『ミニオンズ』や『ペット』を公開する方がよほど安全パイだということは、よくわかります。
自分で言ってて、涙が止まりませんけどね!!!
しかもカッツェンバーグCEOが日本の映画の業態を嫌いだと名言してるらしいんですもの。人間関係は鏡ですから、嫌いだと言われて好きになるのは人情として難しいですよ。仕事は人間がしているわけなので、これは軽視できない部分だと思います。
(自分の会社の上司を悪く取られかねないようなことを、社外で、不特定多数の人の前で言ってしまう人がいる、そのこと自体がDWAの会社の状況がうっすら見えるようで、悲しかったです。おかげで現状を把握できたのですけれども)
自分で言ってて、涙が(2回)

***

私はDWAというスタジオ自体が大好きで、一部の作品を除いてはどの作品も好きですが、だからと言って、狂信的になったり、黒を白と言いくるめることは好きではありません。ダメだと感じたところはダメだと言います。
DWAの作品に少しでも批判がましいことを言われるのは我慢ならないという人は、まずここで回れ右でお願いします。


以下、『カンフー・パンダ3』の感想から、その辺りについて思ったことです。
なんだかんだ言ってファンであるがゆえのぜいたく者の愚痴だと思っていただければ。

この記事は、物語の核心に触れるようなネタバレはありませんが、真っ白の状態で映画を楽しみたい人にはおすすめしませんので、ここで回れ右でお願いします。















全体的な感想ですが、映像がまた格段にすばらしく、劇場の大スクリーン映えすると思います。DWAの作品だから映像が美しいのは当たり前と言えばそうですが、劇場版ペンギンズより『カンフー・パンダ3』の方が、私は3Dで劇場で見たいです。
カンフー・パンダシリーズは、2Dの手書きっぽい映像とCGの画像を巧みに混ぜて演出されていて、それがセンスが良くて素敵なのですが、そのあたりの部分は「3」でも健在。
内容も、シリーズの「1」「2」をきちんと抑えたエンタテインメント作品に仕上がっておりました。安心して見ていられるクオリティだし、楽しいエンタテインメント作品に仕上がっていますし、これまでのシリーズ総括としてもよくできているし、見終わってから「1」をもう一度ちゃんと見たいと思って見直しました。

あと、とても失礼な感想なのですけど、ジャック・ブラックってうまい役者さんですね。
DWAのキャラクターの表情はものすごく繊細で、見ていると同じ表情になってしまうくらいなのですが、それとあいまって、ジャック・ブラックの演技が改めて沁みてきました。
名台詞も多かったです。メモしちゃった。

けれど、何度も繰り返し「3」を見たいかと言われると、私はそうは感じませんでした。
「2」は見終わってすぐサントラもアートブックも買ったし、何かにつけて「そうだカンフー・パンダ2、見よう」と、しょっちゅう見てたのに、同じような中毒症状は「3」は起きませんでした。

ポーを主人公とした物語としては、もう「1」「2」で語り尽くしてしまった感があります。
また、ヴィランも、「1」のタイ・ラン、「2」のシェンは、どちらもポーが向き合わねばならない、対峙しなければならない理由がありました。そして敵とは言え、ていねいにそのバックグラウンドが語られるので、気持ちがわかる部分がありました。この「敗者側にも敗者なりの理由があったんだよ」という描き方が、これまでのDWA作品は上手で、視線が優しいので、こういうところもDWAは大好きでした。
ところが「3」ではヴィランがなぜこういう人になってしまったのかという背景も動機も語られないので共感しようがないし、「とにかくシリーズ中で最強の敵」という設定ありきのキャラクターという印象をぬぐえませんでした。(確かにある意味「最強」ではあるのですが…。)
J.K.シモンズさんの演技は最高だし、動きがもちろんすばらしいのです。けれどもそこまで行く前、キャラクターとしての深みや厚みのようなものは、薄くなっていると感じました。

「3」まで来てキャラクターが増えて散漫になってきたこともあるかもしれません。
一番まずかったと思ったのは、「いらない女性キャラクターをむりやり出した」こと。これ劇場版ペンギンズでもやってましたよね。今だから言いますが、正直げんなりしました。
DWAの作品はこれまでも本国で「女性キャラが極端に少ない」とフェミニストの姐さんがたにぼっこぼこに言われていました。確かにそうなのですが、DWAの場合は、男性キャラクターがジェンダー役割としての女性性を担っていると思えるところが多くて(カンフー・パンダだったらピン父さんとか。これは声のジェームズ・ホンさんもおっしゃっています。ペンギンズのコワルスキーや新人なんかもそうだと思います)、無理矢理女性キャラクターを出さなくてもいいんじゃないかと思う部分もあります。作り手が女性キャラをあんまり楽しんで描いていないのも(うっすら)わかるので、あまり感心はしないけれども、のびのび作ってくれてたらそれでもいいんじゃないかなと思っていました。
なのでなおさら、「いかにもPC配慮的に、当て馬持ってきました」みたいに女性キャラを出すのなら、いっそ出さない方が良かったと思います。
(そんな中、カマキリの自虐ギャグは今回も冴え渡っていました。好き。もっとツルとの絡みが見たかった)


それと、「DWAがこれやっちゃったのか…」と思ったところが2つあり、どうしてもそこが引っかかって、素直にこの映画が好きだと言えない。「2」までが大好きだっただけに、なおさらそこが残念で、期待が大きかった分、DWAの作風の将来が見終わって心配になってしまいました。
物語のポテンシャルとしては明らかに失速してきているし、「え、これやっちゃったの、DWAが?」という部分がだんだん増えてきているし、『ヒックとドラゴン』や「マダガスカル」シリーズのときのように「これしかないんだ」という作り手の強い意志のようなものがだんだん見えなくなってきていて、特にカンフー・パンダは人気シリーズなだけに、その財産に甘えてはいないだろうかという隙をちらちら感じるようになってきました。

シリーズものは安全パイなのだろうけど、ここへ来て今更「シュレック」の新作を作ると言い出しているようで、なおさら「これはDWAまずいのでは」と思っています。
過去の栄光にしがみつく、新しいアイデアを出せない、新しいコンテンツでヒットを出せない。
あるいは、新しいアイデアを出す優秀なクリエイターさんが絶対にいるはずなのですが、その意見をうまく吸い上げる上層部の人間がいないか、上層部が応じてくれなくなっている可能性もあります。
それは会社が左前になっていっても仕方がないのでは…。

カンフー・パンダシリーズは「6」まで作ると、過去カッツェンバーグCEOはおっしゃっていましたが、「3」のノベライズと作品を読み比べて、あれっと思う部分もありました。
すでにDWAのCEOも交代の話が出ているようですしね。
これらについてはネタバレなしには語れないので、「ネタバレ有り編」で書きたいと思います。





by n_umigame | 2016-07-27 00:07 | 映画・海外ドラマ