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『ソーセージ・パーティー』(2016)と『クルードさんちのはじめての冒険』続編中止etc.(後編)

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(画像はAWN.comより。)



***

この記事は後編です。

前編はこちら。→

映画『ソーセージ・パーティー』の結末に触れていますので、ネタバレをさけたい方は、ここで回れ右でお願いします。


***

了解済みの方は↓からどうぞ。












もう、毎回毎回、「これ前も見た」というデジャヴ感ありありの記事で申しわけないのですが、よく考えたら(考えなくても)自分のせいでもないので、やっぱり記事にしておきます。



昨日知った情報によりますと、DWAは来年(2017年)1月に、またレイオフを行うようです。(上のリンクと同じ記事です)


これまでも2012年末から数百人単位のレイオフが複数回、その後もPDIスタジオの閉鎖、インドスタジオの閉鎖と続きましたが、ここでまたさらにグレンデールのメインのスタジオで200以上のポジションで170人以上のレイオフ。
DWAは、他の作品のスタッフとしてか、研修を受けるなどして残留して欲しいと言ったそうですが、結局辞めることになったということなのでしょうか。この中には、「クルードさんち~2」の監督の予定だった、クリス・サンダースさんとカーク・デミッコさんも含まれるようです。わたくしが申し上げるのも口はばったいですが、たいへん才能のある方々ですので、DWAにとっては人材の損失という意味で、非常に大きいと思われます。
アニメーターさんたちだって、そんな半年やそこら訓練すれば使えるようになるという性格のお仕事ではないわけですから。


これより少し前に告知された情報ですが、2018年に公開予定として進められていたドリームワークス・アニメーションの『クルードさんちのはじめての冒険』の続編の製作が、ユニバーサルとDWAの判断で中止されたようです。


■Universal and DreamWorks Animation pull the plug on The Croods 2


『クルードさんちのはじめての冒険』は傑作だっただけに残念ですが、逆に傑作だったからこそ、続編の製作中止は英断とも思います。
一作できれいに完結していますし、ネットフリックスではスピンオフ作品を連続(2D)で配信していますし。
『カンフー・パンダ3』が個人的に期待していたような作品ではなく、かえって物語作法としては退行しているように感じていたこともあり、今のままのクオリティで続編を無理に作らなくてもいいように思います。
カッツェンバーグCEOも退任されましたし、これまでのシリーズものの人気に乗っかるだけの方針を転換する意味でも、良い判断ではないかと。だらだらとシリーズものの人気に乗っかるだけの状況にもてこ入れするために人事異動や買収を行ったのでしょうから、変わっていかなければ意味がないと思います。
ですので、「クルードさん~」の続編の制作中止については、残念ではあるけれども納得の判断ではありました。

ありましたのですが。


コンラッド・ヴァーノン監督は、IMDbによると、次の作品はタイトル未定のピクサー作品に参加されるようです。
とうとうライバル社に転身されてしまいました。
劇場版ペンギンズではリコの声を担当されていましたが、この配役に関してもいろいろもめた末に、芸達者のヴァーノン監督に白羽の矢が立ったのではないかと思っていました。声優さんや俳優さんに配役するともめるだけだったでしょうから、制作側の人にお願いしたというのが真相だったんじゃないかなと想像しています。
このあとヴァーノン監督はすぐDWAは退職されたようです。『ペンギンズ FROM マダガスカル ザ・ムービー』でリコの声で出演されたのが、DWAでのほぼ最後のお仕事だったのでしょうか。

『ソーセージ・パーティー』は、「おれたちはただのアニメにすぎない」とアニメキャラに言わせてしまった映画ですが、わたしはここで、これはヴァーノン監督の作品なんだなあと思いました。(もちろん制作のセス・ローゲン節も炸裂しているのだろうと思いますが)
なぜかと言うと、やはり共同監督を務めた『マダガスカル3』のコメンタリーで、ヴァーノン監督が「これはアニメだよ!」と突っ込みを入れるシーンがあって、ほかの監督お二人が黙っちゃった、というところがあったからです。


これはわたくし個人の想像ですが、ヴァーノン監督は、最近のアニメ作品があまりにもポリティカリー・コレクト的にお行儀が良すぎたり(ディズニーの『ズートピア』やワーナーの『コウノトリ大作戦!』など)、「大人も楽しめる」の前提をもとに、大人への気配りや目配りが重視されすぎていると考えてらっしゃったのかな、と『ソーセージ・パーティー』を見て、改めて思いました。

アメリカでカートゥーン(アニメ)と言うと、もうずっと「子どもが見るもの」であって、いい大人がたしなむ趣味ではなく、大人になっても「そんなもの」を見ているのはどこか問題があると考えられてきました。
かつてはSFもパルプフィクションで描かれるようなミステリーやハードボイルドものも、そしてアメコミも同じような位置づけで来ていたところへ、最近はSFもアメコミも大人が堂々と楽しめるコンテンツになってきていると思います。依然として一部のギークの趣味だという向きは根強いと思いますが、昔ほど日陰の趣味ではなくなってきているのではないかと。
そこへアニメまで列に加わってしまったことは、ある面では歓迎すべきことなのですが、カートゥーンが持っていた、いい意味でのばかばかしさ、むずかしいことを考えずに、ただ見てゲラゲラ笑っていればいいナンセンスさを許す雰囲気は損なわれていっていると、ヴァーノン監督は考えられているのではないかと。


DWAは2005年の『マダガスカル』辺りから、アニメではタブーだった問題に切り込んで、広い意味でのマイノリティーに対する優しい視線を感じる良作・傑作を輩出し続けていました。
日本に比べてこの辺りの規制が厳しいアメリカで、R指定にならないように知恵を絞って、際どいネタもひねって盛り込んでいました。それは臭わせる程度でしかありませんでしたが、ディズニー・ピクサーなどがそんなことができなかった時期に、すばらしい挑戦だったと思います。わたしがDWAの作品に目を開いたのは、DWAのこの姿勢でした。

ただ、それが少し早すぎたのか、あるいは徹底してやらなかったせいか、結局この辺りの「大人にも評価される」美味しい所は、全部他社が最近の作品でまんまと丸め込んでしまった印象です。
荒野を耕して種を撒き、芽が出たのに、実った作物は全部他人に取られちゃった。

平行してDWAは、その他社の動きに逆行するように、劇場用長編で人気が出たシリーズものをネットフリックスでの配信で連打するようになったころから時期を前後して、長編映画の方も挑戦することより守りに入ってしまったと感じていました。
ここ数年は過去に人気の出たシリーズものの続編やスピンオフが多く、そうでない作品も劇場用長編は佳作ではあるもののぱっとせず、すぐネットでスピンオフ作品になったりということの繰り返しでした。
それか過去の他社作品のリメイクです。
長編自体も、最近はディズニーですらやらないような保守的なヒーロー像をもってきたり、素人目にもシリーズものの人気にあぐらをかいてしまったなと感じるものだったり、続編やスピンオフはぱっとしなくなってきていました。
『ヒックとドラゴン』のラストシーンのような、「これしかないんだ」という挑戦を、しなくなってきている。映像の美しさと通りいっぺんの感動で物語をやっつけようとしている、その姿勢が、虚心に見ていると伝わってきてしまいます。
だいたい映画の感想が「映像がきれいだった」しか出て来ない作品は、個人的には黄色信号です。
映画はまずは見せる芸術だと思いますので、もちろん映像が美しいことも大切ですが、これではいつまでも観客をごまかしつづけることはできないでしょう。


興行成績がふるわない時期が続いたせいでレイオフが続き、それでなくても人材が流出しているところへもってきて、作品のクオリティも安全パイ狙いが続いては、作っているクリエイターさんたちも、きっとつまらないのではと思っていたところへ、コンラッド・ヴァーノン監督がとうとうピクサーに移籍されたということを知って、「ああやっぱりか」と。

上の記事では、クリス・サンダース監督もカーク・デミッコ監督も辞められるのかもしれませんし、もう辞めてしまわれたかもしれません。
「マダガスカル」シリーズのエリック・ダーネル監督も独自の短編映画を発表されていますし、もしかしたらもうDWAを抜けられたのかもしれません。
才能がある人はどこででもやっていけるでしょうから、才能(と新しいことをしたいという熱意)がある人から、DWAを辞めていってしまうという状況に陥っているのではないかと、隙間から見ていてもはらはらしています。

ディズニー・ピクサー一強だった日本ですら、他社の秀作アニメ作品がどんどん公開されてきている現状で、(しかも『ソーセージ・パーティー』ですら公開されているのに(笑))DWAが日本の市場に戻って来るためには、ほんとうにほんとうに分厚い壁を破らないといけないのではないかと、日々心配はつのるばかりです。

何かこう、ぱーーーーっと明るいニュースをこのブログでもお届けしたいので、がんばってほしいです。DWA。
たまに朗報をお伝えできたと思ったら、ぽしゃるしね!!!(号泣)

せめてディスク化くらいしてくださいよ、『カンフー・パンダ3』。
お願いしますよ。
いやほんとうにお願いいたします。





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by n_umigame | 2016-12-05 00:03 | 映画・海外ドラマ | Trackback | Comments(0)
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