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『みんなの道徳解体新書』パオロ・マッツァリーノ著(ちくまプリマー新書)筑摩書房

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日本人の道徳心は本当に低下しているの?小中学校での道徳教科必修化の前に、道徳のしくみをくわしく勉強してみよう!学校では教えてくれない、道徳の「なぜ?」がわかります。
(Amazon.jpおり・画像も)


今年の初笑い本はこちらをご紹介しようかと思っていたのですが、最後の3分の1が、とてもおもしろいのですが笑いはできないので、ふつうにおもしろい本ということで記事を書かせていただきます。(いや、それでええやろ)


「道徳」が必須科目になるそうですね。
なんだかいやな感じです。だいたい学校で教わってどうこうという問題ではないと思うことと、戦前戦中の修身の教科書みたいな「美談」を上から押しつけるつもりなんじゃないかという気がして、偽善臭がすでにぷんぷんします。
自分の個人的な経験からも、あのお涙頂戴というか、小ぎれいな話で本質を覆い隠し、感動を強制するような雰囲気が、子ども心に大嫌いでした。教科書と思っていましたがあれは副読本だったのですね、も、暗いし怖いし読んでてぜんぜん楽しくなかった。

本書でも触れられていますが、こういうことを良しとしたがる人は、何かあったときに「自分はやることはやった(鼻ほじ)」と言い訳するための保険が欲しいのだろうと思います。アリバイ工作ですね。見え見えですので、ちょっとはその手のミステリーでも読んで、自分たちこそ勉強し直してほしいと思います。(そこをかい)


…というような自分のもやもやを、いつものマッツァリーノ節で笑い飛ばしてくれる本でした。
もう、マッツァリーノさんのクールで的確なつっこみの数々に、正月から笑い転げましたね。ありがとうございます。
ちくまプリマー新書なので、あっという間に読めますしね。プリマー新書、装丁もかわいいし(クラフト・エヴィング商會さんです)物理的に軽いし(紙質かな?)大好きなのですが、いかんせん大人にはややコスパが悪いかもしれません。同じジュニア向けでだと岩波ジュニア新書の方が腹にたまるものが多いように感じます。


笑えるところ以外には、今回も名言多しですよ。

 よのなかで本当に必要とされるのは、ともだちを作る能力ではありません。ともだちでない人と話せる能力なんです。
(p.42)

 相手に文句をいわないのは、仲がいいのではなく、相手に気をつかっているだけです。
 気軽に文句をいいあえる間柄を、本当の仲良しというのです。
(p.68)

 まじめに見える子も問題を起こす。それは事実です。しかし、ふまじめな子はもっとたくさん問題を起こしてるのですよ。
(p.69)

ここを読んで、作家のマージョリー・キナン・ローリングスが言ったという、
「一生のうち、一度か二度は悪い男に恋したほうがいい。まじめな男のありがたみがわかるから。」
という言葉を思い出しました。(引用は『人生を振り返るとき、もっと大胆に生きていたらどんなに素敵だっただろう、なんて思いたくないでしょ?』(アルファポリス 2013年)より)


最後の方は死刑についてです。ここは笑えませんが、たいへんおもしろいです(おもしろいと言うと語弊がありますが)。
死刑についての考え方は基本的にマッツァリーノさんに賛同いたします。
マッツァリーノさんは薄っぺらなヒューマニズムでこういう立場を貫いていらっしゃるわけではないことがよくわかりますので。

ほかにも、自然現象を擬人化することには反対である、とか、「泣いた赤鬼」は自己犠牲ネタの中でも不愉快な話だとか、共感できるところがたくさんありました。
「泣いた赤鬼」の話はおかしいと言ったかたはほかにもあって、漫画家の坂田靖子さんです。何というか、透徹した目と感性を持った人は同じように分析されているのだなと思いました。


ところで、パオロ・マッツァリーノさんは、とうとう正体をカミングアウトされたのでしょうか。ネット上でちらほらお名前を見るようになってきましたが、まだ正式には公表されていないようでもありますし。
マッツァリーノさんの芸風(芸風言うな)が好きなので、今後もこんな感じで執筆を続けてくださればと思います。





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by n_umigame | 2017-01-03 23:16 | | Trackback | Comments(0)

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