*さいはての西*

fwest.exblog.jp
ブログトップ

『グレートウォール』(2016):さらっと感想編

d0075857_23402703.jpg


■映画『グレートウォール』公式サイト 2017年4月14日(金)公開

約1700年かけて作られた人類史上最大の建造物と言われる万里の長城。その建造の真の目的が明かされる、チャン・イーモウ監督によるファンタジックなアドベンチャー。世界中を旅し、辿り着いた万里の長城で、中国中から集められた戦士と共に人類を守るための戦いに挑む男ウイリアムをマット・デイモンが演じる。
(Movie Walkerより)


■予告編



なんですかこのたのしいえいが!(※感想がひらがななところでいろいろ察してやってください)
もう、この映画、大好きです。

1回目を見たあとにパンフレットはもちろん買って、読んで、すぐサントラ買ってノベライズ買ってアートブック買って一週間後に2回目見に行ってノベライズの原書買って来月(2017年5月)に出るUS盤のBlu-ray予約して、イマココ。
我ながらこれは『インターステラー』のとき以来の剛速球ハマりっぷり。『インターステラー』のときはちょうど諸事情あって映画館に見に行けなかったので、今回は後悔しないようにあともう一回くらい劇場で見たいなと思っています。
だってすぐ終わりそうなので!(泣)
なので!

なので、もし気になっている方でこのブログにたどりついてしまった方はぜひお早く!

…ということで、春休み後でゴールデンウィーク前のハコ穴埋め的な扱いを見ていても、映画館によく行かれる方ならお察しのタイプの映画ではありますが、わたしはこれ大好きです。

客観的な評価なら★取り5点満点中3個でもおまけかなあというところですが、主観的にはあとで述べる理由からもほぼ★5点作品です。



以下、ネタバレしています。
未見の方で、自分はこの映画好きそうなにおいがすると感じておられる方は、ぜひ前情報なしで観に行ってくださいませ。








予告を見たときはジャッキー・チェンの『ドラゴン・ブレイド』みたいな感じの映画なのかなと思っていたのですが、どうやら中国の神話上の怪物・饕餮(とうてつ)が出るらしいと聞いて、いそいそ見に行きましたら、大当たり。

歴史アドベンチャーではなく、中華ファンタジーでした。

正直、ツッコミどころは本当に満載で、1回目は「まって?」「ちょ、いやまって??」と思いつつ見ていたのですが、だんだんそんな野暮なことをしている自分の時間がもったいなくなり、というか気がついたらツッコミが仕事しなくなり、最後は勇壮で爽快なテーマ曲を聞きながら笑顔でエンディングクレジットを見ていました。
音楽は『パシフィック・リム』『パーソン・オブ・インタレスト』などのラミン・ジャワディさん。太鼓どんどこジャワディ節が本当に燃えます。

監督がチャン・イーモウ(張芸謀)なので、それも自分としては期待値を上げていました。

チャン・イーモウ監督というと、『紅いコーリャン』や『菊豆(チュイトウ)』、『あの子を探して』といった作品や、『HERO』あたりが有名なので、日本だとアート系の小劇場で上映されるような作品か、いちおうシリアスな史劇だった、からそのつもりで見に行ったら目が点になったという向きもあろうかと思われます。
ですが、わたしのチャン・イーモウ監督との出会いは『テラコッタ・ウォリア~秦俑~』という作品でした。こちらは監督作ではなく、主演です。チャン・イーモウ監督は、キャリアを俳優として始めた方なんですね。(文化大革命のときに下放されたため、遅咲きになったようです。)
当時日本でも劇場公開されていたらしいのですが、わたしは公開から何年かしてから知人がダビングしてくれたVHSで見ました。(VHSです。)これがもう今で言うすばらしきB級映画で、大好きだったのですよ。中国では今世紀になってからDVD化されて、テレビドラマでリメイクされるほどの人気っぷりなのですが(最近知りました)、日本ではすっかり知る人ぞ知る一品になってしまっているようなので、日本でもDVD化されてほしいです。

この『テラコッタ・ウォリア』を見ていたせいか、チャン・イーモウ監督はお金さえあったら「こういう」映画を思うさま作りたかったんだろうなあと心から思ったのが『グレートウォール』でした。


この映画を見て素直に気持ちが良かったのは、昨今のハリウッド映画によくある復讐の話や、アダルト・チルドレンが八つ当たりしている映画ではなかったからというのも大きいです。
それぞれ人間らしい弱点や短所はあるけれど、邪悪な人が一人も出てこないのも爽快です。

敵方のモンスターである饕餮も、怖いし人間としては困るけど、何か悪しき目的があって人間を目の敵にしているわけではなくて、生存をかけて食って繁殖しているだけなので、そういう意味ではただの生き物です。知恵がありますが、生態は女王を頂点に社会を営む蜂やハダカデバネズミのような真社会性動物で、めずらしくありません。群れをなして襲ってくるけど、『パシフィック・リム』の怪獣やゴジラみたいに生き物のサイズとして反則というわけでもなく、ウィリアムも作中で言っているように、鯨の方がよほど大きい。
農耕民族である漢民族にとっては、飛蝗のメタファとしても見ることができるのかなと思いました。飛蝗も何年、何十年に一度というサイクルで大発生して農作物をすべて食い荒らしてしまい、人間を飢え死にさせてきました。(パール・バックの『大地』、中国大陸での飛蝗の恐ろしさがわかる描写がおすすめ。)

チャン・イーモウ監督は黒澤明監督の『七人の侍』をリメイクしただかしたいだかという話ですが、それを知って納得しました。「そういうの」がずっとやりたかったのか、と。
『グレートウォール』って、技術的には最新なのかもしれないのですけれど、なんだか懐かしいというか、ちょっと古い感じがするのですよね(笑)。
『テラコッタ・ウォリア』もそうだったのですが、主人公は自分の損得を考えないで義のために身を捧げるといった種類のキャラクターです。
日本で言われる、いわゆる滅私奉公というのとも少し違う。
日本の滅私奉公は、非常に同調圧力が強い中で周囲の雰囲気にのまれてやらざるをえないというものが多いように思うのですが、『七人の侍』がそうであったように、『グレートウォール』も、誰かに強制されたからでもないのに、行きがかり上、人助けをするはめになって、自分には何の得にもならないどころか死んでしまうかもしれないのに、それを貫く人のお話です。
報酬は、それをしたということだけ。
そしてそれを、「ただ、自分がそうしたいからそうする」という清々しさが、本当に気持ちいい。
セリフでは「自分の人生はこれまでだめだったから」とか「放っておけない」とか、「美人の新将軍に気に入られたいのか」とかいろいろ言っていましたが、見ていても説得力がありません。そういうのは全部後付けの理由だからです。
自分がそうしたいからそうする。人生これが一番です。

この、自身の経験だけが誰にも奪えない宝である、というのも、ファンタジーの話形として王道です。

物語としては、だからとても端正で教科書的なくらい。
ファンタジーの典型の、巻き込まれ型の主人公の「行きて帰りし物語」だし、「異人」(ある社会集団の外部の人間)が流れ着いた先でトラブルを解決してまた去って行く「流離譚」でもあります。
西部劇にはくわしくないのですが『シェーン』なんかもそうなので、洋の東西を問わず物語の類型があるお話なのだろうと思います。
ですので、話が薄いという感想をちらほらと見かけましたが、この映画は近代的な意味での「物語」ではなくて、「おとぎ話」に近いと思います。神話上の生き物が出てくる時点で、それはそういう「お話」だということですし。
ドラマが薄いのは否めません。
「おとぎ話」に登場するキャラクターは、これも近代的な意味での"キャラクター"ではなく、役割を担う駒に近いからです。これを惜しいと見るか、おとぎ話だからこれ以上人物造形に踏み込むのはストーリーテリングのテンポを損なうと考えるかで、ずいぶん見方が変わってくるかと思います。(103分しかないのですよね。この短さも魅力。最近の映画はどれも長いので。ピーター・ジャクソン監督なら迷わず3時間か、うっかり3部作になっていたと思います。)
映画の冒頭である前振りも、「むかしむかし(Long long time ago)…」という昔話の発端句と同じ役目ですね。

Twitterで感想を見ていると(FF外からRTやファボしまくってすみません…)、「体が楽になった」「すっきりした」という方がいらして、自分も最初は、この映画は好きだけどそこまでまさか~とか思いつつ、2回目を観に行く日の朝珍しく背中がこって痛かったのが、見終わったらこりがほぐれていました(笑)。
おとぎ話は典型を誰にでもわかりやすく語る話法なので、肩の力がいい感じに抜けるんだろうと思います。
(絵本なんかも読み終わるとそんな感じになりますが、あんな感じの気持ちの良さですかね、自分にとっては。)

それをカネの力にものを言わせて物量作戦で大風呂敷広げたらこうなりました! という痛快な作品でした。
万里の長城はCGでなくて煉瓦でセットを組んで、ハリウッド勢の度肝を抜いたそうで、おとぎ話に何億円かけとるんじゃとは思います(笑)。
でも楽しかったから、もういいです。

あと、バディムービーとしても最高の最高なので、そこもぜひおすすめしたいと思います。
あんまりベタベタしないのがちょうツボでした。
これについては詳しくは話が長くなるので、改めます。うふふふ。
マット・デイモンって好きでも嫌いでもない俳優さんだったのですが、この映画を見て「もしかしてけっこう色っぽい?」と思って見直しました。ペロ・トバール役の俳優さんもいいです。いいです。(2回)


そんなわけで、興味のある方はぜひお楽しみください。

さらに詳しいことを知りたい物好きな同士の方は、こちらへどうぞ。
→★『グレートウォール』(2016):ここが好きだよツッコミ編(未完。完成しだいアップします)



[PR]
by n_umigame | 2017-04-23 23:37 | 映画・海外ドラマ | Trackback(1) | Comments(0)
トラックバックURL : http://fwest.exblog.jp/tb/24115420
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Tracked from ここなつ映画レビュー at 2017-05-06 09:05
タイトル : 「グレート・ウォール」
ほぼ10ヶ月ぶりに次男と映画鑑賞。最後に劇場で席を同じくしたのは「64/後編」であった。色々あってここしばらく一緒に映画に行くことが叶わなかったけれど、久々に。久々に、満を持して選んだのがこの「グレート・ウォール」だ。何故この作品を選んだのか?それは次男が観たいと言ったから。次男がTV CMを観て「これは観たい!」と言ったので、チャン・イーモウ作品だから公開されたら観るべきリストに入れていた私には願ってもないオファーだったのだ。えっ…?なんかくどくど言い訳がましい…?…そうですね、確かに。自分でも言...... more