『演劇は道具だ』 宮沢章夫・著/理論社(よりみちパン!セ)

小学校中学年~中学生くらいを読者対象としたシリーズのようです。
100%オレンジさん(新潮文庫のYonda?くん(2代目)のイラスト担当の方)のイラストがいい感じです。

この本で書こうとしているのは、すでに書いたように、「演劇知」によって人のことをより深く考えることです。

とのことですが、まさに、そんな内容でした。
読み始めてすぐくらいは、さすがの宮沢章夫さんも中学生以下の子どもが相手だと思うとこういう書き方になるのかなあという感じでしたが、あれよというまに、いつもの宮沢節に。
「アゴが、左右に、微妙ですが」
「ただ歩く人を見つづける」
などの項タイトルにもそれは表れていますので、宮沢章夫ファンの方、ご安心下さい。
ですが、いつもの大人向けの本よりは、宮沢章夫さんの「伝えたい」という意志がより強く出ているのを感じます。
宮沢さんにとっては、「大人と呼ばれる以上はそんなことは知っていて当然」「いいトシこいた大人に、わざわざそんなこと言わなくてもな」と思ってらっしゃるのかも知れませんが、これはむしろ、「大人」と呼ばれる人たちにも伝えてほしい。

「あとまわしにします」は、べつの言葉で言うなら、いわば、「ヒント」です。なにもかも答えがわかったらそんな本はおもしろくないじゃないですか。

大賛成です。

わたしの経験から言えば、他人がやっている稽古をよく見ている若い俳優は、演技も格段に上達します。

演劇だけでなく、これは仕事でも家事でも趣味でも、日々の人間の営み、すべてに言えることだと思います。
ほかに、「「美」は人の内側にある」という項で、ある美術家が、生まれつき盲目の人たちに、「あなたにとって美とはなんですか?」と問い、その回答をもとに制作されたすばらしい作品のお話なども心にしみました。
そして、「ていねいに見ること」が「演劇ばかりか、ものごとへのごく基本的な接し方です。」と書いてらっしゃるのですが、わたしはここで、ある番組を思い出しました。
NHKスペシャル『地球大進化』です。
人類は、最近の研究では、だいたい7種、いたそうです。
ではなぜ、われわれホモ・サピエンス1種だけが生き延びたのか、という回で、その理由をさまざまな研究成果から紹介するのですが、それは、コミュニケーション能力がほかの6種のヒトより、ずばぬけて高かったからだそうです。
言語を自由にあやつれる喉頭の構造などももちろんコミュニケーション能力を高めたのですが、実はもっと大きな特長として、「類人猿の中でなぜ、ヒトにだけ白目があるのか」ということがあり、それは、白目があることで、どこを見ているかがはっきりわかるから。
「わたしはあなたを見ていますよ。」と、表情で伝えられる。ほほえむことで「あなたに好意を持っていますよ。」と伝えられる。伝えることによって、誤解による敵意を減らし、無用な争いをしなくてすむ…はずだったから。
だそうです。
「ていねいに見ること」が「演劇ばかりか、ものごとへのごく基本的な接し方です。」
本当に、そうです。
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by n_umigame | 2006-08-10 15:41 | | Trackback | Comments(0)

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