*さいはての西*

fwest.exblog.jp
ブログトップ

『魔法ファンタジーの世界』 脇明子・著/岩波書店(岩波新書)

「良質のファンタジーとは何か。」
非常に難しい問いだと思います。わたしは、ご存じの方はご存じのように、『ゲド戦記』の大ファンです。(あまりにも好きすぎて、最近、これはいったん距離を置いた方がいいと思って早速に実行にうつしたくらいです。)『指輪物語』だって、サトクリフだって、大好きです。
この本で重点的にプッシュされているのは、こういったいわゆる「古典」の「名作・傑作」たちで、そういった意味では、脇明子さんの好みとわたしの好みは似ています。だからおっしゃることも理解できるのですが、「古典的傑作」だけが、人間の血となり肉となり、悲しいとき苦しいときを乗り越える糧になるかと問われると、「そんなことないでしょ」と。

『ゲド戦記』の翻訳者、清水真砂子さんの言葉で好きな言葉があります。
児童文学とは何か、というとき、それは「それでも、人生は生きるに値する」ということを描く文学である、という言葉です。
この「それでも」というところがミソでして、上記の、ゲドも、サトクリフの主人公たちも、それはそれはもう、人生で踏んだり蹴ったりの目に遭います。
子ども向けのお話だからとて、イージー・ゴー・ハッピーエンディングにはなりません。
「それでも」人生は生きるに値する。

それが伝わる作品が、きっと、あなたの求めていた「良質のファンタジー」の本です。
そうオススメできれば、一番いいですね。
子どもの時にこんな作品を読んでしまうと、繊細な子は、つらくてもうやだ、となってしまう可能性もあるのではないかと思うのですが、逆に、人生には思いもよらないことが起きることがある、もうダメだ、死んだほうがましだと思うようなこともあるかもしれない、それでもきっと、それは乗り越えてゆけるのだ、という、糧になることがあるかもしれない。
乗り越えるためには、いつもいつも戦わなくてもいい。ときには、力が付くまでは、とにかく生き延びるために逃げてもいいのだ。
(『ゲド戦記』もサトクリフもそういう作品です。)
脇明子さんがおっしゃりたいのも、つきつめればそういうことなのかもしれません。
[PR]
by n_umigame | 2006-08-10 20:54 | | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://fwest.exblog.jp/tb/3549594
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。