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『ユリイカ』8月臨時増刊号・総特集アーシュラ・K・ル=グウィン『闇の左手』から『ゲド戦記』まで

(前半)

便乗本の中で一番読み応えがありそうだったので、これだけ購入してみました。(『ユリイカ』は特集内容に対して素養や興味がないと読んでもついていけないということもありますが、いつも読み応えがあります。)
ル=グウィンの最新の詩と短篇の翻訳はおいておきまして、論文の感想をだらだらと述べさせていただきます。

・インタビュー/ジャンルを越えて、頂に立つ
 →ル=グウィンへのインタビューなのですが、2000年のものです。なんでまたそんな古い証文を。せめて、アフター”2004年のハリウッド製ドラマ”であってほしかった。

・「ファンタジーと言葉」 河合隼雄
 →やんわりとですが、「『ゲド戦記』の映像化? HA!むりむり。」とおっしゃっています。
河合隼雄さんが倒れられたその日に、知らずにご本の感想をこのブログに書いていました。カンタンにシンクロニシティなどと言ってしまうのも安易だし胡散臭い気がしますが、偶然とは言えびっくりしました。その後の情報が入ってこないところを見ると、今は落ち着いていらっしゃるのでしょうか。翌日知ったのですが、ここでお見舞いの言葉を申し上げるのも差し出がましいしその立場でもないと思い、何も書きませんでしたが、一日も早いご回復をお祈り申し上げます。
河合隼雄さんと宮崎駿さんの鬼気迫る(笑)対談が忘れられません。(@『河合隼雄全対話(7)物語と子どもの心』・第三文明社)

・『ゲド戦記』とカウンターカルチャー 越智道雄
 →最近エラリイ・クイーンのジュブナイル版の『Xの悲劇』の翻訳を出してらして驚いたのですが(買ってから気づいた)、アメリカ文化がご専攻。『ブッシュ家とケネディ家』など、視点と切り口がとても鋭くユニークな本を書いておられます。2004年のハリウッド版ドラマについて、
「私見だと、ゲドを白人男性、テナーを有色人種女性として描いたのだと思われる。強者を白人男性、弱者を女性有色人種に描くのは、ピンカートンとマダム・バタフライ以来、不変の傾向だ。」
と指摘しておられます。あのテナー役の女優さんはアジア系に見えると、ル=グウィンさんもおっしゃっていましたが、やはり見える人には見えるのですね。日本人の中で埋没して暮らしている身としては、全然わかりませんでした。
たしかに、あのドラマは、制作者の女嫌いがにじみ出ていて(笑)、見ていてちょっとや~な感じがしたものです。ロークの学院を男女共学にしたくらいでは隠しきれていないです。お風呂に入っていないのをコロンでごまかそうとしているラッシュアワーの電車の中のオヤジみたいと申しましょうか。(おいおい)

・インタビュー『ゲド戦記』の影との戦い 宮崎吾朗 聞き手=佐藤嗣麻子
 →このインタビューアーさん、鋭い! 読んでいて気持ちのいいかしこさがにじみ出ています。吾朗監督たじたじです。

・名誉男性の魔法 小谷真理
 →『ゲド戦記』自体のまことの名はなにか。魅惑的な命題です。

・物語性と思想性の均衡!? 金原瑞人
 →『ユリイカ』は寄稿者の方はだいたい学術論文形式の文体で貫かれるのですが、金原瑞人さんだけ、どこのブログの独り言? みたいな文体でした。
『ゲド戦記』を『指輪物語』と『ナルニア国ものがたり』と並べて世界三大ファンタジーだなんて笑わせる、発行部数を比べただけでも一目瞭然だろ。というようなことを書いておられるのですが、発行部数だけで決められる問題であると言うならば、世界最大のファンタジーは新旧ある世界三大宗教のあの本ではないでしょうか。 発行部数が切実な問題であるお暮らしなのかもしれません。
ジブリの映画はあまりにプロットも脚本も破綻しているので、原作を読ませる効果だけはありますよ、という結論なのでしょうかこれは。

・元型とミセス・ブラウン 井辻朱美
 →井辻朱美さんの、耽美(それも井辻さんが思う「美」)至上主義のようなところが、わたくし、どうも苦手でしてごめんなさい。ル=グウィンさんもまあ、ファンタジーの主人公たちは男性は金髪碧眼のマッチョの白人男性、女性はどうしていつも「すみれ色の瞳」でブロンドで胸が大きくて肌とバカが丸出しで男の添えもんなの? と書いておられましたから、そういう定型がお好きな方の美的感覚や主義と合うはずもありません。定型を踏んでいてもおもしろい作品はいくらでもあるのですが、それは作品自身が本物かどうかの勝負なのであって、まず定型ありき。と言われましてもちょっとどうも…。
 ですが、4巻でゲドのただの男としての情けなさを小説的にえぐり出し、我が子に失望するテナーや傷ついたテルーたちを見て、やっと彼女たちを愛するとっかかりをようやく得られた、というところは共感いたします。『ゲド戦記』中、あんなに「愛おしい」と呼べる巻もないです、本当に。

**前半終了
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by n_umigame | 2006-09-02 16:35 | *le guin/earthsea* | Trackback | Comments(0)
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