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*さいはての西*

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『ユージュアル・サスペクツ』(1995)

何を書いてもネタバレになりそうなので、多くは語れませんが、非常によくできた映画です。

まず何より、ミステリ好きとしては、制作者の、パズル・ミステリ魂に敬礼!であります。
(パズル・ミステリのことをなぜ日本では「本格」と言うのでしょうね。まるでそれ以外は本物じゃないみたいで言いがかりくさいというか、独りよがりっぽくて、あまり好きな呼び方ではないですよ。)

閑話休題。

最近、あまり、こういう、一見地味だけれど制作者がきちんと頭を使って丁寧に作りこんだ映画というものにめったにお目にかかれない気がします。別の言い方をすれば、あえて売れるとわかっている方法は使わず(例えば、旬の美男美女俳優を使うとか)、自分がおもしろいと思っているものを丁寧にお客さんに伝えようという誠意を感じる作品が少ないと言いますか。
と言ってもこの映画も、わたくし、リアルタイムで見たわけでなく、ビデオになって何年も経ってから見ており、最近廉価版DVDが出たので今回見直したわけですが、改めてディティールの作りこみ、脚本のきめの細かさに感心いたしました。

パズル・ミステリが1行もとばし読みができないように、最初から、どんなに小さなしぐさ、どんなにさりげないセリフの一つ一つにも意味があるかもしれない、と思って見て覚えておかないと、おもしろさは半減します。丁寧に作られたものだから、見る方も丁寧に見ることを要求されますね。それがしんどい、めんどくさい、という向きにはオススメしません。わたしも、休みの日に、ヨシ、これ見直すぞ!と思って見直しましたので。

しかしこれは、自分はすべてを見渡せたと思った瞬間、つまり自分が神の視座にたったと思った瞬間に人間は操られる、という、あれ(注1) ですな。(どれだ)(いや詳しく言えないし)
しかも、あれ(注2)なんで、見る方も心してご覧下さい。

しかしコバヤシの事務所のガラスに書いてある「力」「財力」「成功」って……俗物丸出しでこれも何かのアイロニーですか?

(注1)(注2)↓ネタバレです。



注1:エラリイ・クイーンの『十日間の不思議』
注2:アガサ・クリスティの『アクロイド殺人事件』

名探偵が自分を神と勘違いしたら、犯人に操られました。という作品と、叙述トリックの代表作。
by n_umigame | 2006-09-30 15:18 | 映画・海外ドラマ