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『第三の時効』 横山秀夫・著(集英社文庫)

お久しぶりの横山秀夫さんの本です。

『動機』『陰の季節』『深追い』『半落ち』と読んで、『クライマーズ・ハイ』を単行本で読んで以来なので、3年ぶりです。
3年前に立て続けに読んでいた頃は、確かに上手いし、良いし、ぐっとくるのだけれども、もう少し筆を抑えてもらえればツボなんだけれどもなあ…と思いつつ何となく遠ざかっていました。

『第三の時効』に収められた短篇集は、その「もう少し抑え」てほしかった部分がだいぶわたくしのツボに近づいていて、あっという間に読んでしまいました。
朽木、楠見、村瀬、その他のキャラも非常に立っており、個人的に「絶対笑わない」ことを己に課している朽木と、「絶対に笑顔の仮面を外さない」ことを己に課している矢代の対象が、おもしろかったです。(しかもふたりとも一班なんですね。)この一事を取っても、なんか横山さんてベタじゃない? と思われるかもしれませんが、ベタです。(おい)。ベタなんですけれども、上手いから読んじゃうのですね。

横山秀夫さんの文章は、エンタテインメントであるにも関わらず、あとでふりかえってもう一度読み返し、かみしめたくなるような文章が、はっとするような場面で出てきます。
作家になる人もいろいろなキャリアがあるかと思いますが、やはり、大学を出てろくに社会人経験もつまないまま作家になった人には書けないような、良くも悪くも、いろいろな臭いのしみついた文章だと思います。
これは技術的に上手い下手の問題ではなくて(達者なんだけれども薄っぺらな文、ってありますよね)、書き手がどれくらい社会でもまれたかによるのでしょう。サラリーマンに受けるのもわかる気がします。

とはいうものの、『第三の時効』は本格ミステリ魂がにじみ出る作品群になっています。いつもの横山さんの、生きるにおいのあたたかさ(@上々颱風)のにじみ出る作品群でもありますので、「横山秀夫って読んだことないんだけど…どうかな?」という方にもオススメかもです。
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by n_umigame | 2006-10-15 22:28 | ミステリ | Trackback | Comments(0)
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