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『トゥモロー・ワールド』 P.D.ジェイムズ・著/青木久惠・訳(ハヤカワ・ミステリ文庫)早川書房

『人類の子供たち』の改題。

平積みになっていたものを買ってそのままブックカバーをしてもらったので気づかなかったのですが、ハヤカワ・ミステリに入っていますが、SFです。
そもそも、買うときも、「あ、映画が来るんだっけ。これ見たいと思ってたんだー原作あったんだ。」と思って買っただけで、読み始めるとき、「P.D.ジェイムズ…。ダルグリッシュ警視と『女には向かない職業』の作家さんと同じ名前だ。ははは」と思ったら、同じ人でした。「ははは」はおまえだ。

あらすじは、ディストピアものの近未来もの、舞台はイギリスです。
199X年、人類に子供が産まれなくなります。
地球上の生物はヒトだけが突然生殖能力を失い、その原因もわからぬままとうとう25年が過ぎた年から物語は始まります。199X年に生まれた最後の世代は「Ω(オメガ)」と呼ばれ、甘やかされて育った無軌道で無気力な人間ばかりとなります。「生命の解放」と呼ばれる老人遺棄が合法化され(薬物を投与して船に乗せて海に捨てる)、人々は為すすべもなく、もう時間の問題で滅びる運命の人類を傍観するだけの日々を過ごします。

物語は2部構成になっており、第1部は「Ω」、第2部は「α(アルファ)」と名付けられています。
その部タイトルの通り、前半は、物語の語り手セオ(50歳)の、生まれてから誰一人に対してさえ愛情を抱くことができなかった己の人生へのむなしさ、鬱屈、だってしょうがないじゃんという現状に対するあきらめが、著者の、あまりにも鋭く辛辣な人間観察眼によって描きだされる「人間」の群像を伴って、果てしなく「もう人類は終わりだ、人間は終わりだ、この美しい世界はやはり人間に残されたものではなかったのだー!」という方向へ進行し、読んでいて、どんよりとした気分に、もれなく、なっていただけます。
(そして、ああ、P.D.ジェイムズ、改めてこの人も女だ、やっぱりかー!!…と思いましたです。男性はこうは書かないです。)

しかし、お察しの通り、後半はがらりと変わります。

セオは愛と希望を見つけます。
詳しく書くとネタバレになってしまうので、これ以上書けませんが、前半のいやーな感じに耐えられれば後半は一気に読めます。

ただ…ただですね。
これはSFとしては、SF好きの方には食い足りないかと思われます。だって、(ネタバレ反転→)なぜ人類が生殖能力を突然失ったかの説明がいっさいなされないからです。SFだったら、よほど不条理を狙ったものでない限りは、このあたりのエクスキューズは必ずなされるのではないかと思います。
あと、映画の原作と歌われていますが、あとがきによると、映画の監督、「原作、読んでませんから」としれっと言ってるそうですよ。
だったら、「原作」て言うな。
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by n_umigame | 2006-11-11 01:23 | | Trackback | Comments(0)
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