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『初秋』 ロバート・B・パーカー・著/菊池光・訳(ハヤカワ・ミステリ文庫)早川書房

初めて読みました、スペンサー・シリーズです。

「ハードボイルド」というと、御三家(ハメット、チャンドラー、ロス・マクドナルド)はいちおう読んだのですが、ロスマク>チャンドラー>>>>>>>>ハメット、というわけで、やっぱり卵は固ゆでより半熟の方がおいしいだろ、坊や? という結果がわたくしの中では出ました。
しかも立て続けに読んでいると、ハードボイルドの魅力である会話の妙も、「それで食ってけるんだから幸せだよ、あんた…」とつぶやいてしまうなんてトシは取りたくないもので、しばらく、もうおなかいっぱい。状態で読んでいませんでした。

逆に、ハードボイルドのカウンター・バランスとして、「ネオ・ハードボイルド」と言うのだそうですが、いわゆるマッチョでなくてもいいじゃん、へなちょこでもいいじゃん、というハードボイルドが一世を風靡した頃もあったのだそうなのですが、これはこれで逆におもりが傾きすぎ、「変わった悩み品評会」というか「全米不幸な俺自慢大会」のような様相を呈し始めて自家中毒を起こし、ジャンルとして廃れていったそうです。

それがある程度淘汰されて、パーネル・ホールの、時給10ドルの探偵スタンリー・ヘイスティングズとか、リューインの、ショックで歯も磨かずに寝てしまうこともあるアルバート・サムスンとか、筋肉自慢ではないけれども、誠実で心やさしい(かつ貞淑な(笑))私立探偵たちが出て、こちらの方がむしろ共感でき、あっという間に全部読んでしまいました。

この『初秋』もおもしろいらしいとは聞いていたのですが、文庫あとがきを読んで、いわゆる「元祖ハードボイルド」らしき解説で、あんまり汗くさいのもなあ…と敬遠していたのですが、しまった、あとがきなんてうっかり先に読むもんじゃ。
たいへんおもしろかったです。

この作品は、男が男を育てるお話、であります。
もっと言うと、一人前の男が、少年を、一人前の男に育てるお話、ですね。
ある意味サトクリフみたい、とちょっと思ったのですが、本来は父親、あるいは母親がすべきことなのだけれども、両親ともその能力を欠いている場合、それでも人間は一人前にならなければならない、というテーマです。
両親がハズレだったからっていつまでも拗ねてればおまえは子どものままだ、というスペンサーのセリフは正しいのですが、スペンサーも恋人に「愛している実の子ですら育てるのはむずかしい」と言われつつも、そこはそれ、ハードボイルドなので、うまく行きます。
続編があるらしいので、また。

*追記:ちなみに、ワタクシ、「父と子」というシチュエーションに非常に弱いであります。
エラリイ・クイーンにハマったのも、やはり、主人公が父子チームであるということと、アメリカ文学ではよく言われることですが、ユダヤ系作家特有の、「父と子」という主題が繰り返し語られるから、だったからだと思います。エンタメとしてたいへんおもしろく、読者を楽しませようというエンタテインメント魂にあふれているからということももちろんはずせませんが。
これは擬似父子である「師弟」でもいけますね。『ゲド戦記』にハマったときも、オジオンとゲドの関係が何とも言えず良いから、というのも最大の要因でした。
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by n_umigame | 2006-12-04 23:34 | ミステリ | Trackback | Comments(0)
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