*さいはての西*

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『僧正の積木唄』 山田正紀・著(文春文庫)

S.S.ヴァン・ダインの創造した探偵ファイロ・ヴァンスとわれらが金田一耕助が出会っていたら…という設定の作品があると聞き、単行本が出たときに読みましたが、後述する訳がありまして、文庫の古本があったので再度購入しました。

読む前は、こう、
「東西防御率の低い探偵(注1)アズ・ナンバー・ワン・夢の共演!! 犠牲者山盛り、犯人は二択!? 今回もキメぜりふは『僕にはこうなることがわかっていた…』」
というようなものを勝手に期待していたのですが、蓋を開けてみると、第二次大戦戦前、日系アメリカ人がいかにアメリカで苦労したかという非常にナイーヴな怒りあふるる作品となっており、日本のミステリには本当に、いつまでたっても良い意味での「遊び」の精神が育たないなあ…と、そっと売りました。(すまん)

そんなわけで、読んだはずなのですがさっぱり覚えておらず、最近「クイーン警視らしきキャラクターも出ていた」と聞き、「ええー!!」とそれだけを確認するために再購入の運びとなったんでございます。
そして、そのつもりで再読すると……もしかして、コレ?
「警視正」になっていたので見落としたんだなあ。きっと。
(inspectorの訳語は、NYPDの場合、警視か警視正が該当するようなのですが、わざわざ人口に膾炙した「警視」を捨てるとは山田さんもお人が悪い。なのですが他に「警視正」という訳語を当てた翻訳者のかたがいらっしゃらないわけではなく、『ギリシア棺の謎』のジュブナイル版『事件は火曜日にはじまった…』の清水奈緒子さんも「警視正」と訳しておられました。)
そして、クイーン警視は確かに、エラリイにだまされてを信用したばかりにいろいろと汚い仕事もやらされるはめに陥っていますが、今回の汚い仕事は何の大義名分もなく、エラリイへの信頼と愛情からでもなく、単に日系人嫌悪の片棒かつぎとしか思えないという……。クイーン警視ファンとして、ひとこと言ってもいいですか。怒るぞ。

しかし、こんなことで怒っていては、もしかしたらいるかもしれない(そりゃいるよ)ファイロ・ヴァンスファンの皆さまのお怒りとご不快は、こんなものではないこととお察し申し上げます。
ほかにもダシール・ハメット(ご本人)と思われる人とか、海外古典ミステリ・ファンには憎い(ある意味文字通りの)演出がつまっています。

*注1:文庫本の法月綸太郎さんの解説にもありますように、本の雑誌編集部が編集した『活字探偵団』で、ファイロ・ヴァンスと金田一さんは「殺人防御率の低い探偵」に選ばれました。おめでとう。
ちなみに、Wikipediaの金田一耕助の項にアップされているのは以下の通りです。

エラリー・クイーン: 0.7
モース警部: 0.7
ファイロ・ヴァンス: 1.2
神津恭介: 2.0
十津川警部: 3.3
金田一耕助: 4.2

算出方法は、「主要10作品を選定し、探偵が事件に関与してから、解決するまでに起きた殺人件数を作品で割る」。
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by n_umigame | 2006-12-23 22:32 | ミステリ | Trackback | Comments(0)
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