*さいはての西*

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エラリイのお母さん

Wikipedia(英語版)をだらだらと検索していて、そう言えば、エラリイ・クイーンで検索したことがないなあと思い、ちょっと見に行きましたら、やっぱり行かないとだめですね、おもしろいことが書いてありました。
Ellery the character was himself a detective story writer, a snobbish, almost priggish Harvard-educated intellectual of
independent wealth who wore a pince-nez and investigated and solved crimes solely because he found them
stimulating. He derived these characteristics from his
mother, the daughter of a rich aristocratic New York family who had married Inspector Queen, a bluff, man-in-the-
street New York Irishman, and died before the stories
began. His mannerisms in the first nine or ten novels were
apparently based on those of the then-extremely popular
Philo Vance character of the same era. As time went on,
however, these mannerisms were toned down or disappeared entirely, to the point where he became a near-faceless,
near-characterless persona whose role in the books was
purely to solve the mystery.

日本語版にはこの”Ellery Queen, Detective”の項がないのですが、いやー……。
ちょっと文字通りマニアックとも思えるようなファンが多い(というか目立つからそんなような気がするだけかもしれませんが)日本でこのような書き方だと、特にエラリイ・ファンの婦女子の皆さまからは「きいぃいぃ!なんですって!」という黄色い声の罵声が飛びそうで恐ろしいです…(^^;)。
個人的には、客観的に見て、非常にクールではありますがなかなか的確な説明なのではないかとは思います。ただし、これを読んだ人が探偵エラリイに魅力を感じてくれて新規ファンを作れるかと問われたら、「……いやー…」としか申せませんが。

ところで、わたくしが「おもしろい」と思ったのはそこではございませんで、エラリイのお母さんについて、しかも、かなり断定的に言及されている点です。
エラリイのお母さんは、原作ではエラリイが幼い頃に亡くなったことくらいしか明らかにされておらず、名前すらつけてもらえなかったかわいそう人なのですが、上の記事によると、はっきりと「ニューヨークのお金持ちの上流階級の娘」と書いてあります。
これはある意味自然な推理で、調べれば調べるほど、まだ若かったであろうクイーンパパの経済力ではいろいろ無理があることが明らかになるからです。エラリイが生まれたときから住んでいる西87丁目は、アッパー・ウエスト・サイドにあり、当時はアッパー・ミドル・クラスの家庭が多く住んでいたエリアらしく、ブラウン・ストーンのアパートメントも、当時ではかなり贅沢な方だったそうです。そしてこの時代に、アイヴィ・リーグの大学教育が受けられる人はほんの一握りの恵まれた家庭の出でなければむずかしかったはずです。特にエラリイの母校ハーヴァードは学費が高いことで有名です。

偏見であることを承知で申し上げますが、19世紀末から20世紀初頭のニューヨークで、アイリッシュで警察官、しかも巡査からのたたきあげ、というクイーンパパの経歴は、一般的に考えると紳士階級の出では不自然です。
日本に住んでいて乏しい資料を調べただけのわたしですらそう思うのですから、Irishであることがもっとリアルな問題として肌身に感じられる母国の人には、「おかしいよ、だったら逆玉だろ?」となっても不思議ではないです。わたしもその可能性は捨て切れません。

ただねー……。
以下はクイーン警視ファンのひとりごとですから、なんだったらここでアデュー。(^^)
あの、自尊心の強いクイーンパパが、逆玉に甘んじますかねえ。
それに現代でさえ、妻の方が稼ぎ頭でもかまわないと考えている男性は半分以下らしいですから。そんな結婚をしたら一生奥さんの家に頭上がらないことないですか?「いやーカネさえあれば、そんなことおれ気にしないし!」という方もそりゃあいらっしゃるでしょうが。

好意的に考えてこんなのはどうだろう。
ぶっきらぼうで不器用なアイリッシュの庶民の若者と、WASPのお金持ちのお嬢さんが大恋愛、「アイリッシュだって? カトリックだって? 警官だって? そんな男、財産目当てに決まっとる! 許さーん!!」という両親の大反対を押し切って、お嬢さんは「彼はそんな人じゃありませんわ。お父様とお母様がなんとおっしゃろうと、わたしぜったいに彼と結婚します!」とかなんとか言って花嫁姿のまま家を飛び出し結婚、なけなしの自分の信託財産か何かで西87丁目の新居を見つけ、数年は幸せに暮らしたものの、慣れない貧乏生活でもとからあまり丈夫でなかったお嬢さんは健康を害し、エラリイを産んだあとの産後の肥立ちがすぐれずにそのまま他界。
それを知った、お嬢さんと昔から仲の良かった兄弟が同情し、「すまなかった、リチャードくん」とかなんとか言いながら、おかげで奥さんのお家とはちょっと和解。愛する姉(だか妹)の息子エラリイをかわいがってくれていたその叔父(だか伯父)さんもエラリイが成人するのを待たず他界、遺言で愛する姉(だか妹)の忘れ形見のエラリイに財産を残していった。
しかし、両家を橋渡ししてくれていたその叔父(だか伯父)さんが亡くなると、アイリッシュでカトリックの親戚がいることを認めたがらない一族は、クイーン家とは絶縁。
文字通り捨て身で自分を愛してくれて、さんざん苦労をかけた末にエラリイを残していってくれた妻のことを、クイーンパパは30年以上経っても忘れることができず、亡くなった妻の結婚指輪を大切に、ずっとはめていた。(『シャム双子』参照。そのくせ『クイーン警視自身の事件』では「顔、忘れた。」とか言ってますが。この正直さん。)そして、愛する妻の忘れ形見であるエラリイをついつい甘やかしてしまい、皆さまご存じのとおりの絵に描いたような親バカになりました。
というべたべたなドラマが容易に想像できます。
……描いていい?
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by n_umigame | 2006-12-24 00:36 | *ellery queen* | Trackback | Comments(0)
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