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『ミステリの経済倫理学』 竹内靖雄・著(講談社)

著者は大学の先生で、専攻は経済思想史、経済倫理学、日本型ソシオグラマー(社会行動文法)、本格ミステリの読書家としても知られる。
とあります。

が。

一読して思ったことは、「……この人、ミステリ、嫌いなの?」

ということでした。
読む前は、「犯罪なんか割にあいまへん、ほれ、ご破算で願いましてはこれこれなんぼのこと赤字、な? 大損ですわ、やめときなはれ、そんなあほらしもん。」という感じで、ミステリに出てくる犯罪を経済学者の立ち場から客観的なデータを交えて、割に合わないことを立証する、という、言うなれば、『空想科学読本』シリーズのようなものを期待していたのですが、違いました。

本格ミステリの読書家という看板のわりには、「古典的な名探偵の活躍するような、あんなんもんはおとぎ話」と切って捨て、探偵の「インテリらしい苦悩や心理的トラブルにつきあわされるのが鬱陶しい」と、冒険活劇系の方がなんぼかまし、とおっしゃる。
好きずきだから、それはそれでいいんだけど、これだけたくさんの作品を引いてきているにも関わらず、どれに対しても必ず一言は文句をつけ、「何だかんだ言っても、好きなんだな」という、愛情のようなものが、どの作品に対しても感じられません。
あまつさえ、引いてきた作品はほとんど全部に重大なネタバレがあるのですが、それについては一言のことわりもありません。
未読の作品のネタバレをして欲しくないミステリ読者の皆さんから見れば、もう、ほとんど天敵ですよ(笑)。(わたしは犯人がわかっているミステリでも見せ方次第では楽しく読めるので、あまり気にしませんが、それでもねえ…なにごとも限度とか節度というものが。)

「なぜ女性の結婚詐欺師はいないか」という項では、「詐欺なんかより専業主婦になった方が、だんなの稼ぎで一生食べていけるんだから、そんな割に合わないことはしない」のだという…。一生懸命生きてる専業主婦の皆さんに今すぐあやまれ思いましたね。(著者は奥様にご不満があるのかもしれないですが、そんなことは二人の問題なんだから、二人で解決して下さい。)

「とにかく犯罪は割に合わない」と、各章ごと項ごとに書いてあるのですが、わかってるんだよそんなことは言われなくたって。(少なくとも常識を備えたほとんどの人には。)どう割に合わないのか、立証してくださいよ。

ミステリを純粋に愛する皆さまには、この本はあまりオススメいたしません。
なおかつ、未読のミステリのネタばらしをする人間には殺意を覚える、というラディカルなあなたには、重ねて申し上げますが、犯罪は割に合いません。こんな本のために人生棒に振ることありません。

『空想刑事読本』の方がまだ笑えますから。こちらの方がある意味経済学的だったかもしれません。ゴルゴ13の報酬が意外と良心的な値段である、とか。
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by n_umigame | 2007-01-03 20:18 | ミステリ | Trackback | Comments(0)
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