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*さいはての西*

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VIVA! 悪党。

『銀と金』を読み直しています。
(何せ未完なものですから、想像の余地入りまくりで、このあとのお話、勝手に読者が考えていいのよ? という誘惑に勝てません。)

そしてファンサイトをぐるぐる回っていたら、銀さんと森田の関係について「手品師と盲目信者だ」という安田さんのツッコミが入るというマンガを発見し、1分くらい大笑いしていました…。
…まったくです。(笑)。

以前、悪党の魅力について河合隼雄さんが何かで書かれていたのですが、どれだっかた本を探せず。
そこで語られていたのが、確かシェークスピアの『リチャード三世』と、宮沢賢治の『毒もみのすきな署長さん』。
リチャード三世を評して、河合隼雄さんが、「人間は悪事を働くとき、ふつう良心が邪魔をしてここまでできないものなんですが」というようなことをおっしゃっていて、そうだよなあ…と思ったものでしたが、翻って、『毒もみのすきな署長さん』の最後の一言、「ああ、面白かった。」というのがいい、とも。

さて署長さんは縛(しば)られて、裁判にかかり死刑(しけい)ということにきまりました。
 いよいよ巨(おお)きな曲った刀で、首を落されるとき、署長さんは笑って云いました。
「ああ、面白かった。おれはもう、毒もみのことときたら、全く夢中(むちゅう)なんだ。いよいよこんどは、地獄(じごく)で毒もみをやるかな。」
 みんなはすっかり感服しました。
『青空文庫』より。

…悪党はこうでなくっちゃ。
「ああ、面白かった。」
人生はこう言って死ねたもの勝ちですよね。きっと。
「みんなはすっかり感服しました。」
…深いなー宮沢賢治は。
何と言いますか、「馬を! 代わりにこの国をくれてやるぞ! 馬を!」と言いながら死んでいったリチャード三世の往生際の悪さも「悪党はこうでなくっちゃね」と思うのですが、やはり銀さんと森田には宮沢賢治の方で。

しかし、しつこいですが、この作品が未完とは惜しすぎます。
現実の政治や経済と絡めて進む物語だったせいか、そこが限界だったのかもしれませんが、だったらこの男惚れコンビだけでも何とかして下さい。
何だか、両思いなのに別れる恋人同士みたいで燃えるシチュエーションだということはわかるのですが、火の後始末をしていって下さいよ。
by n_umigame | 2007-02-12 01:07 | コミックス