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『人間の手がまだ触れない』 ロバート・シェクリイ・著/稲葉明雄ほか訳(ハヤカワ文庫SF) 早川書房

比較的最近、何かの短篇集で「ひる」を読んだときも「あっはっは! 筒井康隆だよこりゃ。こういうの大好きv」と思いつつ本を閉じた記憶があるのですが、あっはっは!! 筒井康隆ですよこりゃ。こういうの大大大好き!
…と解説を読みましたらば、「売り出し中の筒井康隆が”和製ロバート・シェクリイ”として名をはせた」とありまして、そうだったのか、と納得しました。うっかり「ロード・オブ・ザ・リング」を見てドラクエのパクリと言い放った恥ずかしい人の仲間入りをするところでございました。

短篇集です。それも極上の粒ぞろいです。

不条理SFと紹介されることが多かったそうなのですが、わたくしは心からの敬愛を込めて、バカSFの名を進呈したいと思います。すばらしい。
「不条理」ナントカ、と言う場合、どこまで不条理だったら不条理と言うのかがなかなかむずかしいと思うのですが、起承転結があり、なぜ? という部分に関する謎解きはどの作品も提示されており、そういった意味では、ベケットの『ゴドーを待ちながら』の方がよほど不条理です。
きちんと謎解きが提示されているからではつまらないかと申しますとそんなことはなく、「そう来たか!」という部分がブラックな笑いになっていて、よくそんなこと思いつくな、というSFになっています。

『儀式』や表題の『人間の手がまだ触れない』などは、由緒正しきブラック・ユーモアという印象の作品ですが、『七番目の犠牲』はハードボイルド、『幸福の代償』は現代の消費社会への風刺、『時間に挟まれた男』は端正な(しかし笑える)SF、『祭壇』や『あたたかい』は考えようによってはホラーです。『体型』と『専門家』は同じ手のひらの表と裏をなすような作品。
『怪物』に代表されるように非常にユニークな「視点の転換」を活かした作品に、この作家さんの本領がいかんなく発揮されるようです。
最後の作品、『静かなる水のほとり』は、何とも言えない寂寥感と不思議な感動を残す一品です。弱いなあこういうお話…。でも読み終わったら悲しくなっちゃいますよ。ううう。

気負いこんで読むような本ではありませんが、SFってこんなのもあるんだーという方にはオススメです。

ですがやはりこういう短篇はアイデア命で、晩年はなかなか書けなくなってしまったようです。残念です。
とりあえず、未読の『無限がいっぱい』を読むぜ!と思ったら、アマゾン品切れ!? うわーん。
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by n_umigame | 2007-02-26 22:49 | | Trackback | Comments(0)

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