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『ハンニバル・ライジング』(上/下) トマス・ハリス・著/高見浩・訳(新潮文庫) 新潮社

出張先で読むものが切れてしまいまして。
で、地方の小さなさびれた本屋さんにもこれだけはありました。
というので、まあこれでも読むか…と手に取ったのですが、とりあえず一言。

上下巻である必要ありません。1冊もので650円くらいなら適正価格かも。

物語は非常に単純です。

物語の舞台は1941年から始まります。
貴族のお坊ちゃんだったにもかかわらず、両親も妹も殺されたかわいそうな孤児となった少年が無節操で残虐非道な連中にひどい目に遭わされて、大きくなったら自分をひどい目に遭わせた連中に3倍返しでお礼参りをして戦後の混乱期に乗じ警察をまいてまんまと国外へ逃げおおせる話。

…身も蓋もありませんが。

前作『ハンニバル』で、作者の「ハンニバル萌え」とでも言うべきオチに、「もうええわ。」と思ったのを、読み終わってから思い出しました。
今回は、ハンニバル・レクターお兄ちゃんの妹萌えのお話でした。うう…。

以下ネタバレ↓



”カニバル・ハニバル”がいかにして”怪物”になったかというお話…を描こうという意図はあったのだろうとは思いますが、これで同情してやってくれと言われても困ります。

すでに、ハンニバルは「人食い」でした。
そしてまだほんの少年の頃からその残虐な資質を見せ始めていました。
ですから、妹を食われたこととハンニバルのその後に因果関係はない、という描かれかたなので、結局、何が言いたかったの?という虚脱感が残りました。

また、ハンニバルのカタキ役のキャラクターが、どー考えても第一次欲求だけで生きているようなどーしよーもねー感あふれるキャラクターばかりで、ハンニバルのハンディキャップと言えば若さだけ、こいつらが勝てるわけないじゃん? という。
また、パスカル・ポピール警視もジャック・クロフォードの10分の1も魅力がありません。

そして、出た、日本文化!
いやいや、かなりがんばってはいる方だとは思いますが、それでもやっぱり変ですよ?
海外古典ミステリを読んでいると、「変な東洋人」はイギリスでは中国人、アメリカでは日本人という構図があるようなのですが、やっぱりアメリカは日本。これなんでしょうか。
映画ではコン・リーが演じているらしい「紫夫人」、日本人が見ると全然日本人じゃないよというそのハズし方、おみごとです。

というわけで、特にオススメもいたしません。ですが、わたくし的には、まあ、Yonda?くんシールが集まるからいいや…という慰めがあったのでまあいいです。

(しかし、自分の創造したキャラクターに萌えてしまうピグマリオン作家さんというのはまれにおられるようですが、それを思えば『帰還』でゲドをあんなふうに描いたル=グウィンさんとか『九尾の猫』でエラリイをあんなふうに描いたクイーンはやっぱり す ご い よ…)
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by n_umigame | 2007-05-02 20:47 | ミステリ | Trackback | Comments(0)
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