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『腰ぬけ連盟』 レックス・スタウト・著/佐倉潤吾・訳(ハヤカワ・ミステリ文庫)早川書房

猥雑裁判で話題の作家チャピンは、私立探偵ネロ・ウルフが調査を依頼された贖罪連盟のメンバーが次々と怪死した事件の鍵を握る人物だった。メンバーに送られてくる脅迫状はチャピンが書いたものらしい。彼の過去には脅迫を裏づける重大な理由があった。やがて連盟の中に新たな犠牲者が……美食家探偵の本格推理


再読。うーん。

ネロ・ウルフは「本格ミステリ」の中にカテゴライズされることが多いようで、そのように紹介されているものが事実多く、そのつもりで読んでしまったせいもあるかもしれませんが、これ、いわゆる「本格ミステリ」ではないですね。「いわゆる事前のこととしての存在”名探偵”」は登場しますが。

そしていちおう最後に”名探偵”が登場人物を全員集めて行う「さて、皆さん」はあります。
そこで事件の全容が明らかにされるのですが、アガサ・クリスティやエラリイ・クイーンのようなスキッと感がないまま終わってしまいました。(クリスティとクイーンは平均点が高すぎるので、比べるのは酷かもしれませんが…)

また、本格ミステリとして読めば、最初から犯人扱いされているポール・チャピンはきっと犯人ではないと思って読むので、このやたらめったら出てくるハーヴァードOBたちがクサイ、と考えると思いますが、クリスティのように登場人物たちが全員事件と関係のないことでまぎらわしいことをしでかす「いらんことしい」というわけでもなく、クイーンのように探偵がころころと推理を変えて「おお、その可能性も理屈としてはなりたつな」と読者に思わせてひっかきまわすということもなく、最後にウルフがさもとーぜんのように理屈をつけて終わりというのがどうも気に入りません(笑)。『ネロ・ウルフ最後の事件』でも思い、この作品の登場人物も言っていますが、詭弁だと言われてもしょうがないようなことをウルフはしています。

合わせて、読んでいて何か読みにくいなーと思いながらほかの本も平行して読みつつ1週間もかかってしまいましたが、どうも翻訳が合わないようです。
「これで改行も多かったら西村京太郎だ」と思うくらい句読点が不自然に多いです(笑)。
一度気になりだすともうずっと気になってしまって「句読点め、句読点めー!!」と思いながら読んでしまい…。これはおそらく、原文のセンテンスが切れているのだと思います。通例日本語では意味が取れるのであれば、英語では切れているセンテンスも続けて表現すると思うのですが、きっと翻訳者の方がまじめな方と言いますか文学表現向きではないと言いますか、言い換えると直訳です。
日本語として体裁をなしていない…というほどひどくもないのですが、こう、原文の持つしゃれた感じを出そうとしてそれが逆効果になってしまっていると申しますか。
それと関連する、つまりは「日本語の自然さを無視してまでも原文に忠実であろうとする」という姿勢が影響していると思われますが、訳注だけで補わないで、地の文に翻訳として盛り込んでしまわないと日本の読者にはわかりにくいと思われるような部分も、加工なしでそのままです。
直訳が悪いわけでは決してないのですが、とりあえずこの作品の場合においては、成功していると言い難いです。

人によっては、ウルフとアーチーのやりとりが面白く掛け合い漫才みたいだとか、超出不精のウルフがアーチーのピンチに助けにやってくるところがいいとか、そういう楽しみ方もあるようです。
(が、これもわたしにはクイーン父子の掛け合い漫才ほど笑えなかったし、息子に何かあると飛んでくるクイーンパパほど萌えませんでした(笑)。ごめんなさい…)
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by n_umigame | 2007-06-23 19:32 | ミステリ | Trackback | Comments(2)
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Commented by Yuseum at 2007-07-01 12:52 x
ごぶさたでぇ〜す。
『腰抜け連盟』、僕も印象悪いです。
『料理長が多すぎる』もそうだったけど、なんか内容があまり頭の中に入ってこないまま、読み終えてしまった記憶があります。
(訳のせい?)
光文社文庫の『シーザーの埋葬』は、読み物としてまだそれなりに楽しめましたけど、クイーンのような綿密な論理性は感じられなかったし、でも、その期待もしてなかったので、これでいいです^_^;
Commented by n_umigame at 2007-07-01 14:31
どうもでーす♪
Yuseumさんに印象悪いと言っていただけると何だか安心…自分がバカだからわかんないだけなんじゃないかと思っていたので(^^;)
正直、ドラマを見ていてもストーリーが頭に入らないわたしがここに。雰囲気が好きだし、役者さんたちの演技が良いから見ていて楽しいのですけれどもね。
本格ミステリだと思って読まない、というのが正解なんですね。