『サイコ』 ロバート・ブロック著/夏来健次訳(創元推理文庫)東京創元社

夏のホラー特集続行中です。
これも実は映画はきちんと見たことがない(怖いから………)のですが、原作もじゅーーーーぶん怖かったです。

有名なお話なので全面的にネタバレでまいります。

これはまっさらな状態で読んだ人はどれだけ恐怖を満喫できたのだろうか羨ましい、というシーンが、保安官が「ノーマン・ベイツの母親はもう20年も前に死んでいるよ。自分が棺をかついだんだ、間違いない」と言うシーンでしょう。
この一言で、それまで読んでいた「単なる狂った人殺し」の世界が急転直下、ぞぞーっと背中を冷たいものがはい上がって来、「……え、じゃあ私立探偵が2階の窓辺で見た「お母さん」て……単なるノーマンの一人芝居じゃなかった……の? てことは……イヤーー!!」と、地獄の一丁目へ読者を突き落としてくれます。
映画の方はどうだか存じませんが、これは小説というメディアでしか使えないワザでしょう。

また、これだけ有名な作品であるにもかかわらず非常に本が薄いのですが、日本語訳でもこれだけ薄い(しかも活字は小さくない)ということは原作はもっと薄かったはずです。
ということは、文字で語られなかった部分が非常に多いということなのですが、その語られない部分に秘められた「見えない恐怖」というのが、この作品をホラーとして傑作たらしめている一番の要因であるように思われます。

ノーマン・ベイツは実在したシリアル・キラー、エド・ゲインがモデルなのだそうですが、心理学者が何と言おうと、オカルトじみた表現になりますが、「母親という呪い」をかけられた男の末路と考えると、物語中ライラも言っていますが、哀れな気もします。
いえ、ほんとうは誰しも「親という呪い」に大なり小なり縛られているのかもしれません。
ノーマン・ベイツは極端な例としても、「呪い」が解けずに苦しんでいる人間がひきおこす不幸の破壊力は恐ろしいものだと、日々のニュースなどからも伺えます。たいていの人は思春期でそれを乗り越えるのですが、それを乗り越えそこなった思春期まっただ中の人とか、乗り越えそこなったままトシだけ食ったノーマン・ベイツみたいな人とか。
そんなようなことをふと考えました。

しかし絶対こんな人には出会いたくないですけどね!
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by n_umigame | 2007-07-22 22:40 | | Trackback | Comments(0)

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