*さいはての西*

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『ブラジル』 ジョン・アップダイク著/寺門泰彦訳(新潮社)

裕福で無垢な白人娘イザベルとスラム育ちの黒人青年トリスタンは、おたがいを一目見た瞬間、恋に落ちた。だがイザベルの父親が二人の関係を認めるわけがない。追跡と恋の逃避行が始まる…。大都会と原始の姿が混在するブラジルを舞台に「トリスタンとイズー伝説」を現代に強烈に甦らせたピュアでエロティックな恋愛小説。


『ガートルードとクローディアス』がなかなかおもしろかったので、もう1冊アップダイクを何か読んでみよう、と物色していたら、「トリスタンとイズー」をモティーフにした作品があると知り、これにしてみました。
「トリスタンとイズー」ものは出ているとせっせと読むのですが、この作品は・・・・・・・えー・・・これだと「ロミジュリ」ですよ!!
それで、リアリズム小説なのかと思っていたら、『ガートルードとクローディアス』同様、ファンタジーなんですね? 意外と。

欧米では(というひとくくりもどうかとは思いますが)「家族」というチームの核は「夫婦」であって「親子」ではなく、したがって「夫婦」の愛情が薄れたら契約を続行する意味が薄れるので解約する、という非常にわかりやすい上にそれでいーのかとつっこみたくなるような構図になっているようなのですが、この『ブラジル』も、母親になったイザベルの我が子への執着のなさっぷりがこわいですよ…。

トリスタンの方もなのですが、「2人の愛を守ること」だけが2人の本能の至上命令なのであって、2人とも、自分が裏切りでないと思えば誰とでも深い関係になり、ほかの男の子どもを産んでは捨て(好きで捨てたわけではないのですが、結果的に)、「トリスタンとイズー」ものに描かれる身を切るようなストイックな愛とは全然異質なものでした。
恋愛小説というほど恋愛の部分も描かれているとは思えず…あまりにも即物的で直截なラブシーンが多くて、読んでいるとだんだんげんなりしてきてしまいました。

悲劇的な結末もあまりカタルシスもなく淡々と終わりますが、だんだんとこれは「お子さまの発作的幼稚な恋愛小説」を装って、別のものを表現しようとしているのではないかと思うようになってまいりました。
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by n_umigame | 2007-12-23 19:09 | | Trackback | Comments(0)
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