『ゼロ時間の謎』(2007)
解説: アガサ・クリスティの傑作ミステリー「ゼロ時間へ」を映画化した謎解きドラマ。海辺の別荘を舞台に、資産家の老女殺害事件をめぐる過去からの因縁や、欲望にまみれた人間関係を丁寧につづる。育ちのいい青年を演じるのは『ぼくを葬る(おくる)』のメルヴィル・プポー。その別れた妻を『マルチェロ・マストロヤンニ 甘い追憶』のキアラ・マストロヤンニが演じている。二転三転する犯人像や、緻密(ちみつ)練られた伏線に翻弄(ほんろう)される。(シネマトゥデイ)
あらすじ: テニスプレイヤーのギヨーム(メルヴィル・プポー)は、再婚した若く美しい妻(ローラ・スメット)とともにバカンスで叔母カミーラ(ダニエル・ダリュー)の別荘を訪れる。そこには彼の前妻(キアラ・マストロヤンニ)もやって来ることになっていた。この3人の微妙な関係に、カミーラも常々頭を悩ませていたのだが……。(シネマトゥデイ)

「フランス人の撮ったイギリス人、って感じ」という趣旨の感想を漏れ聞いていたため、「そうですか、やっぱり因縁の対決って感じですか、よっしゃあ、そいつを見せていただきましょう!」…と見に行きました。
え? いやいや、全然、おとなしかったです。
むしろ、まじめすぎ!
原作をそこまで忠実に生真面目になぞる必要があったのか。
クリスティ・ファンとしてはそりゃ気持ちはうれしいけれども、映画を撮る人は自分にとっては映画という表現媒体でなければ表現しがたい情熱や衝動があって、だからこそ、他の媒体で表現された(往々にして傑作の名高い)作品を、わざわざ映画で見せなおしているわけですよね。
あるいは、他の媒体で表現された作品を、映画にせずにはいられない原作への愛情や敬意や情熱があって、、わざわざ映画を撮るわけですよね。(もちろん「ネームバリューのある原作を映画化するとカネになるから」という身も蓋もない欲求でやってらっしゃる人も中にはいるとは思いますが。)
なので、もう少し、「映画でなければ」「この監督さんでなければ」出せない味のようなものを生かした作品に仕上がっていれば良かったのになあと思いました。現代という設定も生きていなかったように思いますし。
そういう意味では、たいへん優等生的な、きれいな映画ですので(衣装もゴージャスだし)、そんなにがっかりさせられることはありませんが、だからといって見終わったあと「ああーいい映画見たなあ」という余韻を味わえるような作品でもありませんで、可もなく不可もなくという映画でございました。
あと、言語が変わるとキャラクターの人格も変わりますよね・・・。
一番変わったのはやはり探偵役のバタイユ警視(=バトル警視)でしょうか。
作中、バタイユ警視が「ホームズ、メグレ、ミス・マープル、ポワロ、コロンボ・・・・」と口ずさむのですが、(パンフレットにも書かれていましたが)明らかにコロンボだけ異質です。なんでコロンボなんだよう、とわたくしも観ていて思いました。
パンフレットの解説を書いた黒田邦雄さんによれば監督がコロンボが好きなのではないか、証拠に犯人の追いつめ方がコロンボにそっくりだ、とあるのですが、この犯人の追いつめ方は原作のとおりですので、もし本当にコロンボとそっくりなら、時系列で言えばそれはコロンボ「が」似てるんじゃねーのか言い直せー!! と思ったクリスティファンでございました。(わたくしコロンボはほとんど見たことがないので、片手落ちでものを言っているのはお互い様ですが。)
ちなみに「バタイユ」と聞くとやはり「ジョルジュ」の方を思い出してしまいます。フランスではよくある名前なのでしょうか。 バタイユ警視役の役者さんはジャン・レノ系列の顔で悪くはなかったのですが、原作の「どっしり」「がっしり」「直感型」というイメージからはちょっと遠いですか。
甥のピエール・ルカ刑事(=ジェームズ・リーチ警部)の「おじさんといっしょに仕事してみたくて」はその言い方とバタイユ警視のリアクションが可愛かったです(笑)。
執事(あんな”執事”があるかー!!)やメイドの使い方などはフランスっぽいなあと思いましたが、笑うところだと思うんだけど笑えませんでした……。
「イギリスのユーモア」を期待して行ったわけではないけれども、「フランスのエスプリ」はどしたー!!
御年90才という女優ダニエル・ダリュー(カミーラ・トレシリアン役)の声の張りは聞いていて心地よかったです。

オード(=オードリー・ネヴィル)を演じた、キアラ・マストロヤンニ。カトリーヌ・ドヌーヴとマルチェロ・マストロヤンニのお嬢さんなんですね。言われてみれば、ころんと大きな目がお父さんにそっくり・・・!と思っていましたが、お母さんの写真を見ると(特にこの写真は)雰囲気はお母さん似ですね。お母さんにもお父さんにもそっくり、ってなんだかほほえましくて良いですが、役者としてはいろいろとたいへんなこともあるのでしょうね・・・。誰が見ても同業の両親を思い出すわけなので。
あと、もう一点、この映画とは直接関係はないのですが、パンフレットの若竹七海さんの解説によると、デヴィッド・スーシェのポワロシリーズは『オリエント急行の殺人』で終了の予定なのだそうです・・・・・・・・・・。えぐえぐえぐ・・・・。
制作予定だった作品が何点か入れ替わり、『オリエント急行』が入った時点で、「もしかして」とは思ってはおりましたが・・・・。
『カーテン』までやるって言ってたのはどの口だ・・・・・・・・・。えぐえぐえぐ・・・・。
あ、ちなみに今回の映画館のお客さんは紳士淑女ばかりでございました。(本当に)(満席だったのに)
映画がお客を選ぶので当たり前かもしれませんが・・・。しかし平均年齢高すぎ(推定60才)だ!!
ゼロ時間の謎 | ウーマンエキサイトシネマ
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