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『無限がいっぱい』 ロバート・シェクリイ著/宇野利泰訳(異色作家短篇集9) 早川書房

『人間の手がまだ触れない』を読んだあと、この作家さんは読むぜ! と思っていたところなかなか手に入らず、ネット書店でも手に入らないときはここだ。と決めている『慧眼のオヤジ書店2号店』で手に入れました。(この書店はどういうわけだかアマゾンなどで品切れの場合や、すでに品切れ、あるいは絶版として出版社でアナウンスされている本がふつうに置いてあって、重宝しております。しかも書店員さん(あるいは店長さん?)のシュミとしか思えないような、いわゆるジャンル小説などのけっこうコアな本が…。 …え? どこの本屋さんかって? おーしーえーなーいv)

さて、この作品集も『監視鳥』や『倍額保険』など、元祖筒井康隆(?)節大爆発なブラックでシュールな作品ももちろん健在でしたが、『先住民問題』や『暁の侵略者』など批判とアイロニーに満ちた作品もおもしろかったです。

こういうところはアメリカの人のいいところだなあと思うのですが、例えば日本で今の「日本という国」の原型ができる過程を皮肉ったような作品を笑いを込めてこんなふうに描けるかというと、むずかしいのだろうなと思います。
それを書く作家はいろいろとタブーを破らねばならない上、冗談抜きで命を狙われる可能性も覚悟せねばならないでしょうから。
それがいまだタブーであるところがおかしいようにも思うのですが、民主主義国家である以上、本来言論と表現の自由とはこういうところで発揮されるべきだろうと言いますか、本物の勇気を伴わない言論と表現の自由にあぐらをかいていると言いますか、あまりにも「言論と表現の自由」をはき違えている人が多い(あるいは悪目立ちする)ように思います。
ハリウッド映画を見ていると、よくもまあこんな作品を恥ずかしげもなく外国に輸出するなと思うような、「時の政府に乗せられてますよ寄らば大樹のかげっすよHAHAHAHA!」という映画が興行的に大ヒットしたりしていますが、その半面、きちんとカウンターバランスのような作品、「ごめん、うち、今ちょっとおかしいと思うよね?」という作品も制作されています。(日本にあんまり来ないみたいだけど。)

『乗船拒否』とかなかなか現代でもホットな作品ではないかと思いました。
エラリイ・クイーンの『ローマ帽子の謎』を読んだときも「うっへー、なんちゅうとほほな感覚じゃあ」と思いましたが、「白人以外の血が1滴でも混じっていたらnot白人」という感覚は、人類の歴史をさかのぼって冷静に考えたらおかしいってすぐわかると思うんですけれどもね。

いろいろとドキドキさせられるかの国の人の感性や概念を、ブラック無糖で笑い飛ばす珠玉の短篇集でございました。
個人的に『人間の手がまだ触れない』の方が読みやすかったような気がしますが、よろしければこの作品集の中の「ひる」「先住民問題」「乗船拒否」だけでも読んでみてくださいませ。
「ニヤリ」とさせられること請け合いです。

しかし、日本にもこのような他国の人に「ニヤリ」とされているようなこと、いっぱいあると思うのですが、いかんせん作品がねえ。ないというのはどうなんでしょうねえ。
「外国から見た日本人像」のようなものばかり気にしてないで、自分の国(の歴史)をこんなふうに自分たちで笑い飛ばせる作品をエンタメでさくっと書いてみせてくれる作家さんが出ない時点で(いらっしゃったらすみません)、なんだかいろいろと遅れをとっているように思います。
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by n_umigame | 2008-01-27 18:03 | | Trackback | Comments(0)

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