『ひとりでは生きられないのも芸のうち』 内田樹著(文藝春秋)

ブログで読んでいたものが多かったのですが、さらに読みやすく編集されていて、さっぱりと読み終えました。
内田さんの本はワンテーマだと掘り下げが深すぎて重いものが多いので、こういう形式のものが読みやすくていいかもしれないと、改めて思いました。

ブログで読んだときも大爆笑したのですが、何度読んでも大笑いだったのが、冒頭の「男はいかにして籠絡されるか」であります。

男を狙うポイントは「才能」のひとことである。

へー、そうなんですか。
さよう。(控えめに言って)世の八〇%の男たちは自分に才能があり、かつそれが世間には正当に評価されていないことにフラストレーションを抱えている。だからこそ、こにひとことであっけなく籠絡される。(問題はそのように「自己評価」と「外部評価」の間にストレスフルな「ずれ」がある場合、高い確率で外部評価の方が適切だということである)。
「才能」の甘言をもってしても陥落しない二〇%の男というのは、「自分には才能がないはずなので、この女は嘘をついている」と考える人間か、「自分にはあまりに才能がありすぎるからこそ世人の評価になじまないのであって、こんな女ごときに私の才能がわかるはずがない」と考えている人間のいずれかであるが、前者は猜疑心が強すぎ、後者はバカなのでいずれも配偶者とするには足りないので無視してよろしい。

なるほど。
ただし「才能」路線で攻めることができるのは、(中略)実際には、ある程度社会的経験を積んで、適度に「練れてきた」男の中には「自分のバカさ」についてかなり適切な自己評価を下しているものがおり、その場合は(中略)はかばかしい反応を示さないことがある。
だが、そのような「練れた」男こそ配偶者にふさわしいわけであるから、手を緩めることなくさらなる二次攻撃が展開されなければならない。

ふむふむ。
続きは本でどうぞ(笑)。
しかし、内田センセイ、昨今、「練れた男」を探すのは至難のワザなんでございますよ…。
で、思うんですけれども、既製品がない場合は作っちゃえということで、自分で「練れた男」に鍛え上げるという「逆・マイ・フェア・レディ(レディじゃないけど)作戦」もありではないかと思いますが、いかがなもんでございましょう。
一度、いい男の条件として「何でもおいしそうに食べる」「どこででもくーすか寝る」「人にプレゼントをあげるのが好き」を挙げておられましたが、こちらの方がまだハードルが(多少)低いようです。

さて、笑い話はこの辺にして(笑い話だったんすか!?)、ほかにも視点のアクロバティックな転換でざくざくと論理で問題を分解するところは、下手な謎解きミステリーよりよほどおもしろいです。
「愛する」とは十全な理解と共感に基づくものではない。そうではなくて、なんだか「よくわからないもの」を冷静に観察し、その「ふるまい方」のパターンをよくわきまえた上で、涼しい顔をして受け入れることである。

たぶん、ほとんどの人は逆に考えていると思うけれど、「その人がいなくては生きていけない人間」の数の多さこそが「成熟」の指標なのである。

これは最近、トシを取れば取るほど、わかるような気がしてきました。
「あなたがいなければ生きてゆけない」という言葉は「私」の無能や欠乏についての事実認知的言明ではない。そうではなくて、「だからこそ、あなたにはこれからもずっと元気で生きていて欲しい」という、「あなた」の健康と幸福を願う予祝の言葉なのである。
自分のまわりにその健康と幸福を願わずにはいられない多くの人々を有している人は、そうでない人よりも健康と幸福に恵まれる可能性が高い。それは、(キャッチボールの例から知られるように)祝福とは本質的に相互的なものだからである。

そうですね。
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by n_umigame | 2008-02-12 20:42 | | Trackback | Comments(0)

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