*さいはての西*

fwest.exblog.jp
ブログトップ

『フロスト気質』(上・下) R.D.ウィングフィールド著/芹澤恵訳(創元推理文庫) 東京創元社

今回の物語は、ハロウィーンの夜に幕を開けます。7歳の少年が行方不明になったとの報を受けて巡回中の新米巡査が、ゴミの中から少年の死体を発見したのを手始めに、立て続けに事件が発生。幼児ばかりを傷つけてまわる連続幼児刺傷犯が新たな罪を重ねれば、誘拐された15歳の少女が全裸の状態で保護され、さらには身元不明の腐乱死体が出てくるなど、ほかにも大小さまざま取り混ぜて、事件がデントンの町をにぎわせます。
 毎度毎回、人手不足に悩まされているデントン署は、今回もとある事情から捜査の指揮を執るべき幹部連が払底してしまい、休暇を満喫していたはずのフロスト警部の出馬をこいねがう羽目になってしまうのでした。はたしてフロスト警部は、これらてんこ盛りの事件を無事に解決まで導くことができるのでしょうか?
出版社HPより

フロスト警部は健在でした!

もう、いったい、短篇集なんじゃないのか(@いしいひさいち『コミカル・ミステリー・アワー』)と思うほど、いくつもの事件が同時に落下傘降下してきては、それぞれの援護機からばらばらと爆弾が降ってくるというモジュラー型も健在です。

ついに上下巻になりました。

正直なところ上巻は多少たるかったのですが、下巻に入って一気読みでした。
それぞれのキャラクター、いつものマレット警視や、ジム・キャシディ警部代行などの性格を印象づけようとするせいか、何度も何度もこれでもかと同じような描写が出てきて、そこが少し読んでいて「んー、もういいかな、それは」と思ったのですが、おわりよければすべてよしということで。

フロストの思いつき出たトコ捜査も相変わらずなのですが、いかにも今思いついたでしょそれ、というフロストの一言が実は真相だということが、展開として読めてしまうところがあり、そのあとの「結果が外れるための捜査」の描写がくどく感じたという部分もありました。

あと、毎回強調されるフロストの下品さなのですが、フロストは人間としては全然品性下劣ではなくて、むしろその反対なのですよね。
なのですが、地の文、つまり著者が書いた客観的事実として、いかにもフロストがいいかげんで頼りなくて…という描写がこれでもかと続くので、なんで著者がそこまでフロストを悪く言うのかがわからないという気もします。

とは言え、人の手柄を平気で横取りするばかりか、それを恥じもしないジム・キャシディや、フロストのような部下の真価が見抜けない俗物上司のマレットの影で、つまり、地の文で語られないところで、スポットライトが当たらないところで、フロストはすごくカッコイイことをやっていて、それもきちんと読者に伝わるように描かれているので、著者は「いかにも俺ってカッコイイでしょ」という主人公は描きたくなかったのかもしれないなーこの照れ屋さんめ☆という気もしますけれども。
自分は平気でセクハラするくせに、部外者にバカにされたリズをさりげなくフォローする一言を忘れなかったりですね。そんなリズも含めて、なんだかんだで仕事仲間からは慕われているところもきちんと描かれています。

あと、久しぶりに原作を読んで思ったのですが、フロストの下品さって小学生男子並なんですよね…。何というか、わたくしが小学生の頃に流行ったスカートめくりのレベルなんですよ(笑)。
ダメなんだけれども、「もーバカ!!」ってみんなで笑って、おしまい。(昨今はいじめとか刑事責任とかモンスターペアレントとか、シャレにならない事態になっているようですので、わたくしが小学生の頃って幸せだったんだなあと思います…)(なつかしいなあスカートめくり…(笑))(やってたんですか)(ええ女子の間でも流行りました)(修学旅行の枕投げも必ず参戦しました)昨今、映画やエンタメの英語って本当に汚いと思いますが、もっと人間としてどうかと思うようなキャラクターが登場する作品はたくさんあります。

ドラマの方は、最後の犯人が確か誘拐だけでなくてペドフィリアで、字義どおりなめられて逆上したフロストが犯人を殴って停職処分になる、というところでワンシーズン終了だったかと思います。
ドラマの方はマレット警視はここまでやな感じではないですね。役者さんも良いのでしょうけれども。
ドラマを見ていても感じたのですが、イギリスって本当に階級社会で、その中でもどちらかというと低所得層に対する同情やフロストの気遣いなどがしみる作品だと思います。

ところで、荻原浩さんが解説を書いていらっしゃるのですが、フロストと『神様からひと言』に登場する篠崎、なんとなく似ていませんか(笑)。
[PR]
by n_umigame | 2008-08-13 23:03 | ミステリ | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://fwest.exblog.jp/tb/8443165
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。