*さいはての西*

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『たったひとつの冴えたやりかた』 ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア著/浅倉久志訳(早川書房)

生まれも、育ちも、種族さえちがっても、ともだちになれると思った。

16歳の少女と未知のエイリアン、宇宙の溝<リフト>を舞台に描かれる2人の友情と勇気の物語。
時代を超えて語り継がれる名作 改訳版


原タイトルは"The Only Neat Thing To Do"。
名訳ですよね。酔いますね。
直訳すると、なすべき、ただひとつのすてきなこと。このタイトルに含まれる意味が非常に重い作品です。

海外SFと海外ミステリの邦題は本当になんてセンスが良いものが多いのかと思います。

さて、改訳版です。
店頭で見て「うっわー、なっつかしー!!」半ば踊りながら書棚に駆け寄りましたよ。
わたしが読んだのは確か、川原由美子さんのイラストの。(こちらもまだありますね)
かつて泣かされたような覚えがあったのですが、きれいさっぱり、忘れていて、再読したお得感満載で読みました。

このラストシーンは、今のわたしにはちょっと言いたいことがいろいろとあります(笑)。
コーティーとシルがあまりにも純粋でちょっとおしりもむずむずします。

しかし、一生に一回はこれは読め!!(上から!)
SFとしてもサスペンス要素を盛り込んで、なかなかしっかりしています。

ちょっとネタバレになるのでもぐりますが、↓





これは今回知ったのですが、この作品を書いたとき作者は70歳になっていて、心臓病を患っていたとか。
そして翌年、弁護士に電話をしたあと86歳で寝たきりになっていた夫を撃ち殺し、ついで自分の頭も撃ち抜いて自殺。
つまりは無理心中を図ったということでございます。

しかし、どんなに愛していても、心中する権利なんて誰にもないとわたくしは思っています。

それでこのラストシーンはひっかかったのかもしれません。

ああ、ご存じない方のために念のため。
著者は女性です。
ル=グウィンさんも苦労なさったようですが、女性がSFやミステリを書くと売れない時代があったそうです。それで男性名のペンネームを付けられたそうです。
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by n_umigame | 2008-09-14 00:00 | | Trackback | Comments(6)
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Commented by TP at 2008-09-14 01:48 x
初めまして。
ティプトリーとご主人の死に関しては、以前からの取り決めに基づいて行われたことなのだそうです。けっして「無理」心中ではありません。
ティプトリーとご主人の立場が逆でも、同じことが起こったはずです。
つい、気になってしまい書き込んでしまいました。
すみませんでした。
Commented by n_umigame at 2008-09-14 12:27
TPさま、はじめまして。
コメントありがとうございました。

んー、きっとTPさんとわたくしの「無理」心中の、「無理」の範囲が違うんでしょうね…。
わたくしの「無理」はけっこう範囲が広くて、相手が口で言っていることを(特に病気だったりつらい悩みを抱えている状態で言っていることを)鵜呑みにしない、というところまで含まれます。
人間はそんな単純なものではない、と思うからです。

わたしもあとがきを読んでびっくりしまして(すみません、今まで知らなかったんです…)調べたんですよ。で、「重病」としか書かれていないものが多かったのですが、おそらくご主人は認知症かアルツハイマーのような、健康な人と同じような判断はできない状態だったようなのですね。そういう人を以前から約束してたからって殺すことに(途中で気が変わることだっていくらでもあるし)、わたくしは、やはり、とまどいを禁じ得ません。なので、これはわたくしにとってはやはり無理心中なのです。

Commented by n_umigame at 2008-09-14 12:27
(つづき)
でもこれってすごく難しい問題ですよね…。
尊厳死の問題ですから。
同じ立場に立たされたとき、自分がどういう判断をするのか、実際に立たされてみないと何とも言えませんね。他人の悲劇はロマンティックですから(@PEANUTS)いくらでもロマンティックなことを言えますが、自分の悲劇は笑えませんものね。

目の前で苦しんでいる人が「殺してくれ」と言われて手を下した医師が有罪になるのは、現在の日本の司法では、これは「ノー」だということ、どういう理由があっても人を殺せば「人殺し」なんだ、ということだと思います。
常に司法が正しいとは言いませんが、ことこの問題に関しては、現在の司法の判断は穏当な判断ではないかと思われます。
心中の場合でなければ「死人に口なし」で、悪用する人間が出てこないとも限らないわけですから。

何はともあれ、こんなおちゃらけブログをとても真剣に読んでくださっている方がけっこういらっしゃるんだなあ…と最近ちょっと反省しました。
こちらの方こそすみません。
でもあまりきりきりと真に受けないで、そんなこと考える人もいるんだなあ…程度に流してやってくださいませね。(つづく)

Commented by n_umigame at 2008-09-14 12:27
(つづき)
あ、ティプトリーJrはわたくしの青春時代の想い出とともに、やはり思い入れのある作家さんです。ほかの作品も読み返したくなりました。
(おしまい)
Commented by TP at 2008-09-15 01:42 x
丁寧なレスありがとうございます。
そうですね。
とり方の問題も含めて、さくっと書き込んでしまった僕も不用意だったのかもしれません。「死」に関わることですしね。
>そういう人を以前から約束してたからって殺すことに(途中で気が変わることだっていくらでもあるし)、わたくしは、やはり、とまどいを禁じ得ません。なので、これはわたくしにとってはやはり無理心中なのです。

もしかするとティプトリーにも、そういう思いがあったのかもしれません。
「たったひとつの冴えたやりかた」のラストはほとんど祈りのような意味があったのかなと、レスを頂いて思ったりしました。
シロベーンとコーティーは同意の下に「やりかた」を実行するわけですからね。
すみません。キリキリした気持ちだったわけではないのですが、不快な思いを与えていたら申し訳ありません。
僕もティプトリーは大好きな作家です。
Commented by n_umigame at 2008-09-15 21:19
生き死にを問わないことなら、「ま、オトナの男と女のこった、おまえさんら2人の問題さね、気がすむまでやんな。な?」と長屋の親父さん目線で放置なのですが(笑)。

またよろしければお寄りくださいね。