*さいはての西*

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『あるいは裏切りという名の犬』(2004)

パリ警視庁BRI(探索出動班)主任警視のヴリンクスは、BRB(強盗鎮圧班)主任警視のクランとともに次期パリ警視庁長官と目されていたが、その性格はまったく異なっていた。 BRIチームは仲間の送別会の色紙代わりにパリ警視庁の看板を剥がしてくるような荒くれ者の集まりだが、ヴリンクスのもと厚い信頼で結ばれていた。一方のBRBはクランの強い統制下にあり、両者は水面下で激しく対立していた。 おりしも重火器を用いて現金輸送車を襲撃する連続強盗事件が発生。被害総額200万ユーロ、死者9名にのぼる凶悪事件に、マンシーニ長官はBRI、BRB両者に檄を飛ばす。マンシーニはヴリンクスを別室に呼び、近々自分が昇進する予定であること、犯人グループを検挙した者を後任として推すつもりであること、できればヴリンクスを後任としたいと考えていることを告げる。あせったクランは長官に自分の指揮で犯人グループを検挙したいと訴えるが、ヴリンクスの援護に回されてしまう。 犯人グループの次期目標をしったBRIチームは現行犯で捕らえようとするが、功をあせったクランが暴走。犯人グループと銃撃戦になる…(Wikipediaより)


ひとことで総括すると「情けは人のためならず」ということでしょうか。
最後のどんでんがえしが利いています。

この映画は『こまねこ』を見に行ったときに映画館にチラシが置いてあり、おもしろそうだなーと思っているうちに見はぐったといういつものパターンでした…。

フランス語の口の中に籠もったような発音と、ほぼ全面モノトーンや中間色で通される画面、(おや、と思ったのは警察葬のときのフランスの国旗くらいでした)ハリウッド映画のように”言葉”で語らず、視線や、ちょっとしたしぐさでやりとりされるコミュニケーションなど、ぐっとおさえた中にも張りつめた緊張感が最後まで続く佳作でした。

久しぶりにジェラール・ドパルデューの憎まれ役(ドニ・クラン警視)を見たような気がしますが、対するダニエル・オートゥイユ演ずるレオ・ヴリンクス警視の方も、警察という組織の中で有能なのに野心を持たない危険さを自覚しないという意味で、同じくらい危ない人間であります。
ヴリンクスは、大義のためには小事は不問に付すという清濁併せのむ度量の大きさや、おかしいことはおかしいという正義感の強さ、弱い者への慈悲、清廉さ、友人への誠実さなどが一部の部下にはモテモテですが、こういう人間が組織の中ではある意味とても危ない存在であるということも容易に想像できます。

クランはヴリンクスとはかつて親友で、同じ女性を愛したもののみごとにふられたらしく、2人の共通の上司はヴリンクスに目をかけ、仕事でも昇進で負けそうになります。しかも、ヴリンクスに与えられようとしている、自分がのどから手が出るほど欲しい地位も権力も、当のヴリンクスはぜんぜん興味ありません。
そして、汚い手を使ってヴリンクスを追い落としにかかるのですが、おかげで自分の妻にすらケーベツされてしまいました。(とはいえ「自分の妻に尊敬された英雄は世界にほとんどいない」という名言がございますが…)

このあと、表向きの華やかさとは裏腹に淡々とみじめさが漂うクランなのですが、その過去の2人の因縁についてはほとんど何も語られないため、クランがなぜここまでヴリンクスとこじれ、愛情の歪んだ裏返しとしか思えないような執着が始まるのかが、いまひとつわかりませんでした。
おそらく、ある種の男性にとって、異性関係がらみの嫉妬は何とか乗り越えられても、仕事で負けるという嫉妬だけは耐え難いのではないかと想像いたしますので、もう少しこの過去の因縁を描いてくれたら、クランの「あいつには女でも負けたし仕事でも負けるのか俺は、キー!!」という黄色いんだかどす黒いんだかわからないジェラシーが伝わってきて良かったのではないかと思いました。

おそらくクランとヴリンクスは非常に似ていて、同じ手の表と裏なのかもしれません。
どちらがどちらの人生を歩んでいても不思議でなかった。
それでも最後の最後でヴリンクスを救ったのは、やはり愛し愛される人がいた、この差だったように思われます。(クランの奥さん、どー見てももう冷めてますし。)

ハリウッドでのリメイクも決まっているそうですが、一気に話が単純になりそうで心配です。

原題は”36 Quai des Orfèvres”「オルフェーヴル河岸36番地」。
メグレ警視ものでも頻出のパリ警視庁の所在地ですが、メグレ警視ものを読んでいると、「オルフェーブル河岸」と言うだけでパリ警視庁を指すこともあるようです。
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by n_umigame | 2008-10-19 20:15 | 映画・海外ドラマ | Trackback | Comments(0)
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