*さいはての西*

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『王と鳥』(1980)

砂漠の真ん中に聳え立つ孤城に、ひとりの王が住んでいた。その名も、国王シャルル5+3+8=16世。わがままで疑心暗鬼の王は、手元のスイッチ一つで、気に障る臣下を次々に「処分」していった。望みさえすれば何ものでも手に入れることの出来るはずの王シャルルは、しかし、ひとりの羊飼い娘に片思いをしている。城の最上階に隠された、秘密の部屋の壁に掛かった一枚の絵の中に、その美しい娘はおり、隣合わせた額縁の中の、煙突掃除の少年と深く愛し合っていた。嫉妬に狂う王を後に、ふたりは絵の中から抜け出し、一羽の鳥の助けを借りて城からの脱出を試みる。(Wikipediaより)


ジブリが自ら「原点」と呼ぶというフランスのアニメーション。
1953年の作品『やぶにらみの暴君』のリメイクだそうです。

科学なんだか魔法なんだかよくわからないファンタジックな世界、レトロな、けれども、見ようによってはグロテスクなメカなど、確かにジブリの作品で見たよこれ、というシーンやデザインがてんこもりの作品でした。
ジブリ--ひいては宮崎駿のメカが偏執狂的なまでの書き込みによってそのグロテスクさをかもしだしているとしたら、この作品のメカは、そのあまりにもシンプルなデザインがかもしだすグロテスクさが怖いと言えるかもしれません。
王の警察が乗っている水上バイク(?)のデザインなんか、それ、鯉なの? キモカワなんだかなんなんだかわからないデザインです。けっこう好きです。(告白)
最終兵器(?)として登場する巨大ロボも、どー見ても、顔は踊る埴輪。絶対このデザインを考えたフランスの人は日本の埴輪をどっかで見てますね。ヨーロッパでジャポニズムがさかんになった頃あたりに埴輪も展示されたことがあったのでしょうか。 巨大ロボの機関室が楽器というのもスゴイ。

ただ、ジブリの作品が全体的に明るく突き抜けた、エンタテインメントに富んだ世界で完結していることが多い(最近の作品は一概にそうとは言い切れませんが…)のに比して、画面から受ける印象がどことなく陰惨な印象を受けてしまいます。
色合いがシックで、流れる音楽がもの悲しいということもありますが、やはりこの世界から発せられるメッセージが重いということもあるかと思われます。

最初に『やぶにらみの暴君』が作品が発表された1953年というと、まだヨーロッパの各地にも第二次大戦の爪痕が生々しく残っていたと思います。
母国の国土が空爆やその他の侵略の対象になったかならなかったかの差、というのは、おそらくものすごく大きいのだということを、アメリカの姿を見ていると、思うことがあります。(そして、20世紀になるまで異民族との戦争も国土の侵略も経験したことのなかった戦前の日本を思っても。)
その国にある建物や木々や個人の家々、町並みが破壊されるということは、単に物理的にものが壊れたということだけではないのだということを、非常に考えさせられます。

この作品の「王」、こっけいなまでに独裁的で孤独な王が、きっとヒトラーや絶対王政のメタファなのだろうということは安易に想像できます。
ですが、では、独裁者からの抑圧から立ち上がったはずの、自由の象徴の「鳥」が、独裁者から奪った「最終兵器」を扱いかねて、国土そのものまで灰燼に帰してしまい、「鳥」が助けたかったはずの「下層に住む生き物(人もライオンも)」からも見捨てられてしまう、というのは、何が伝えたかったのでしょうか。
フランス革命のあとの恐怖政治などからも、フランスの人々は、独裁も良くないけれども、そこから極端に反対に振り子が振れるおそろしさも十分に知っているはずで、それを表現したかったのでしょうか。
ラストシーンで、廃墟の中にそびえたつ「最終兵器」ロボの影の下から、悲しげにロボを見上げながら荒涼とした砂漠へと逃れるライオンや人々の表情、ロダンの「考える人」のポーズで動かなくなるロボ。
いろいろと象徴的です。
(ロダンの「考える人」は、元々ダンテの『神曲』に登場する「地獄の門」の一部として作られた作品なのだそうです。そしてダンテの「地獄の門」と言えば、「汝等、この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ」でございます。深すぎて怖いですよこのアニメ…!)

そんなふうにいろいろと考えさせられてしまうアニメなのですが、単純にアニメとして見てもそれなりに動きがきれいで楽しい作品でした。
スッキリとはしませんが。
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by n_umigame | 2008-10-30 18:30 | 映画・海外ドラマ | Trackback | Comments(0)
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