*さいはての西*

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『ミスト』(2007)

ガラス窓を破るほどの嵐の翌日、スーパーへ買い出しに出掛けたデヴィッド(トーマス・ジェーン)。軍人やパトカーが慌ただしく街を往来し、あっという間に店の外は濃い霧に覆われた。設備点検のために外に出た店員のジム(ウィリアム・サドラー)が不気味な物体に襲われると、店内の人々は次第に理性を失いはじめ……。(シネマトゥデイ)


原作はスティーブン・キングです。
白状させていただきますとわたくし、キングの文章と波長が合わないらしく、読んでいて小説を読む醍醐味を満喫したことがありません。
訳が合わないのかなあとも思いつつ、翻訳者泣かせの文章だとも聞きましたのでキングの文がそもそもそうなのかもしれません。
なので「おまえ、キングのことわかってねえなあ」と思われた方、もうそのとおりでございますので、耳でもほじくりながらテキトーにスルーでお願いいたします。

以下、ネタバレですので、未見の方はご注意ください。↓







超絶バッドエンドだと聞いていたのですが、超絶バッドエンドでしたね!

そして、これまでのハリウッドのパニック映画に対する、超絶アンチテーゼになっているのですね!

例えば、主人公と仲の悪い隣人ノートン。
彼は典型的な「映画の早い段階で犠牲になるキャラ」の典型ですよね。
異常時に「正常な」あるいは「常識的な」ことしか考えられず、平素だったらそれでいいけど、今はそんなこと言ってる場合じゃないだろう、という判断ができない。その「こだわり」も自分は知識人だというこの際間違ったプライドだったり、つまらない理由であることが多い。

この手の「ふつうの人」は観客に「だから言ったじゃん」という制作者側のだめ押し確認のために登場させられ消えていく典型的なキャラクターのはずなのですが、この映画では、その後の消息が語られません。
(その前にスーパーの店員が犠牲になるシーンは、「とりあえず襲われたらこうなります」というサンプルになるためのキャラクターで、これも定石で、ここまではふつうのモンスター映画でした。)

そして、これまでの「間違ったリーダーについていった人は死に、正しいリーダーを選んだ人は生き残る」という図式を、ものすごい皮肉とともに裏切ったこの映画は、ブッシュとテロの時代を生きぬかざるを得なかったアメリカを、たいへんわかりやすく描いた作品と感じました。

スーパーに閉じこめられた人々が、「巨大な田舎」と揶揄されるアメリカの縮図であることは、どなたもご異存がないかと思います。

ところが、これまでは「正しいリーダー」について行きさえすれば、どんな絶望的な状況からも脱出できる、というアメリカ的ハリウッド的楽観主義が、この映画では、みごとに逆転しています。
むしろ、「これでもか」と観客に向かって「正しさ」を強調される主人公についていった人は全員ただ「死ぬ」どころか、信じてついていったリーダーに「殺され」、どう考えたって「イタタ」なリーダーについて残った人はどうやら助かったらしい、という描写で作品は終わります。

また、原作と変更されているところで、わざわざ「軍隊のせい」にしたところがさらに興味深いと思いました。
しかも「俺たちのせいだ」と謝罪する軍人が出てきます。
そしてせっかくがんばって生き残ろうとした主人公たちの前に、最悪のタイミングで現れます。


「間違ったリーダー」についていった人も、そのあと日常が戻れば悪夢から醒めるのだろうとは思います。
ただ、一時的にせよ「狂信者」に引きつけられた自分をよくよく見つめ直してくれると良いのですが、どうもこの描かれ方を見ていると、そうは思えません。
似たようなことが起きればまた似たような行動を取る人々(マジョリティ)なのでしょう。

わたくしは映画にサッパリ詳しくないので、もしかしたら誤った認識かもしれませんが、アメリカでもこういう作品がハリウッドで製作され、しかも外国に輸出されるようになった、ということに、希望を感じます。

ブッシュが登場してから特に阿呆ばかりが住んでいる国のように言われていますが、彼ら彼女らは本当に変わりたいと思い、変わろうとしているのかもしれません。
ただ、それはゆっくりと、だと思いますが。
この世界は誰かたった一人の英雄が現れて、一夜にして変わる、という世界ではもうありません。
お正月にNHKの番組でダライラマ14世が「ジーザスやブッダが今現れたとしても世界が一晩で変わることはありません。ゆっくりと、少しづつ努力して一人一人が変えて行くしかないのです」と言っていたのが印象的でした。(Like a flower、という表現がすてきで、よっしゃこれを今年の座右の銘にしようと思いましたよ)(笑)。


ただし映画としては最悪な後味ですので、ご家族揃ってとかデートで見るとかはおやめになることをオススメいたします。
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by n_umigame | 2009-01-08 18:49 | 映画・海外ドラマ | Trackback | Comments(0)
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