*さいはての西*

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『ダンナ様はFBI』 田中ミエ著 (幻冬舎)

「ここから出ていけ!」仕事が恋人の私の前に、突然立ちはだかった変なガイジンは、VIP護衛で来日中のFBI捜査官だった。最悪な出会いの後、毎月1通、エアメールが届きはじめる。FBI仕込みの用意周到なプロポーズ作戦にまんまとハマり、私は彼と結婚した。ところが新婚生活が始まるや否や、彼は言い出した。「日本一腕のいい錠前師を探そう」「麻薬の匂いがするから、ロックのレコードは処分」「スカートをはいて自転車に乗ってはダメ」「盛装して一流のブランドショップに行ってごらん」。ダーリンのトンデモ指令に奔走する、私のジェットコースター人生が始まった…。元FBI捜査官のシャイで一途なダーリンが繰り出す過剰な愛のトンデモ・ミッション!爆笑ときどきホロリの国際結婚エッセイ。


某シリーズのヒットもあって国際結婚エッセイは雨後の竹の子のようにわらわらと出ておりますが、これはただの「爆笑国際結婚ものエッセイ」ではないです。

とはいえ久しぶりに電車の中で悶絶しました。これは「電車禁」本です。

明らかに受けを狙った部分よりも、淡々とツッこまれたところがものすごくツボにはまりました。

「FBIなんか日本ではつぶしがきかない」

まったくです。
電車の中で「ぷっ…げほっくしょい」という咳なんだかくしゃみなんだかわからないものに紛らわせつつ、おそらくFBIというとアメリカではエリートだったはずのダンナ様をあっさり「つぶしがきかない」で斬るクールさがたまんねえーとうっとりしながら読んでいました。

正確には「元・FBI」のダンナ様もはんぱでなくふつうの人ではないので、たいへんそれがおかしいのですが、ギャグかと思うほどのリスク・ヘッジの能力の高さ。
はっきり年代は書かれていませんが、おそらく20年前の「シュレッダー? そんなのどこで売ってるの?」という時代の日本で、すでに「CDを破砕できるシュレッダーを買ってこい」というダンナ様。
そしてアメリカから、当時すでに1台持っているだけでもすごいと思いますが、WindowsとMacを1台づつ持ってくるという。これは窓さんだけをアタックする深刻なウィルスが出ても、リンゴさんを持っていればとりあえずだいじょうぶという、リスク・ヘッジですね。

やがて日本もアメリカみたいになるという不幸な予言が当たり、ここで出されるダンナ様の「指令」は現在では(悲しいことに)当たり前のことばかりになってしまっていますが、職権を濫用しまくって地球の果てまで(文字通り)追いかけてくるダンナ様がたのもしいんだか怖いんだか。

ここまではある意味「ふつうの国際結婚爆笑エッセイ」だったのですが、折々に混ぜられるダンナ様の指令は、「働く社会人」すべてに有効なすばらしいアドバイスになっています。

実際にこれを実行させられる奥様である著者はほんっとーうにたいへんだったろうなあと笑いながらも同情してしまいますが、例えば「初対面の人と会うとき先手必勝で笑え、だめ押しでもう一回笑え」なんかは明日から使えます。
特に外回りのサラリーマンの皆さまにとって「笑顔・挨拶、先取必勝」は身に染みついた鉄則となっているかと思われますが、「だめ押しでもう一度笑いかける」というのは目からウロコでした。

しかしまあ、「男なら女の成長を妨げるような愛し方はするな。」(@宗方コーチ『エースをねらえ!』(未読))を地でいってのろけられたようなエッセイでもあって、「ハイハイハイごちそうさまでした」という気がしないでもないです(笑)。


それからミステリ好きとしてびっくりしたのが、ダンナ様の元教官があのロバート・K・レスラー氏だったということ。
元教官に久しぶりに再会し、ふだんの「FBI立ち」ではなく借りてきた猫みたいになっちゃったダンナ様。「警察ってところは厳しいタテ社会で辞めてからでも元上司の前だと緊張しちゃって」と言い訳するところがかわいいですよね。ハイハイかわいいかわいい(笑)。(このダンナ様がたいへんまじめなお人柄だということもあるかと思いますが)

でも「イクラは死体の皮下脂肪そっくりで食えない」とか言うな。大好物なんですから。
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by n_umigame | 2009-01-18 21:56 | | Trackback | Comments(0)
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