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『Xの悲劇』 エラリー・クイーン著/越前敏弥訳(角川文庫) 角川書店

満員電車の中で発生した殺人事件。被害者のポケットからは、ニコチンの塗られた針が無数に刺さったコルク球が発見された。群衆ひしめく巨大なニューヨークで続く第2、第3の大胆な殺人事件にも、目撃者はいない。この難事件に、聴力を失った元シェイクスピア俳優ドルリー・レーンが挑み、論理的で緻密な謎解きを繰り広げる。20年ぶりの決定版新訳でよみがえる、本格ミステリの不朽の名作!(解説・有栖川有栖) (カバー裏表紙)


というわけで、新訳で登場しました。
クイーン親子の方ではなく、ドルリー・レーンの方のシリーズです。

こちらの方のシリーズでは日本では2作目の『Yの悲劇』が圧倒的に人気があったそうですが(今も?)、「最後の一撃」ものの傑作としても名高いこの作品、個人的にこちらの方が端正さといい読後の印象といい好きです。

数年ぶりに読み直したのですが、サム警視ってこんなに「いかにも警官」なヤなキャラでしたっけ…?
事情聴取にしたって容疑者でもないのに応対が失礼すぎるし、検事のブルーノに対しても横柄すぎやしませんかねー。
ワタクシ、某P嬢がいたたまれないほど痛く、そのP嬢にモーレツ☆アタックの青年が輪をかけて痛く、だらだら泣きながら『Z』を読んだクチなので(そこまでして読んでくれなくていいよ!というツッコミはこの際なしにして)、このサムなら親が親なら子も子という気がゲフンゲフン。

それを思えばクイーン警視はなんてステキなキャラなんだろうと改めて惚れ直しましたよ(やっぱりそこかアンタ)。
『ローマ帽子~』が出たときに「こんなステキ警官がニューヨークにいるわけないだろ、このぼけなす!(@サム警視)」とか言われたんですかねー。(誰も言ってないから)

このあとざーっと『Y』も読み直したのですが(鮎川訳です)、クイーンさん、ほんとに、若いキャラ男女とも苦手ですね? そして逆に、なんでそんなにオヤジ萌えなんですか?
え? それ、自分がオヤジ萌えだからって?
いやいや、虚心坦懐に見たとしてもですよ。
このドルリー・レーンの描かれようといったら。クイーン警視もでしたが、なぜ、そんなに、脱がすのか。そして見つめる視線がなぜそんなに暑いのか。(←not 誤変換)まあいいけれども。(いいのか)

もう一点、改めて読むとやはり気になったのが、「舞台俳優がそんなに儲かるのか」という身も蓋もない疑問と、百歩譲って儲かったとして、だからって、衣装・メイクさんが役者と主従関係ってのも100年前はめずらしくなかったの? と、疑問に思いました。

そんな細かいところはいろいろと気にはなるのですが、ほんの小さなことまで見逃さないレーンの目と、水も漏らさぬ緻密で華麗な推理は最後まで一気に読ませます。
海外古典ミステリを読みつけない方には、事情聴取のシーンなどがだるいかもしれませんが、読み切ったあとの爽快感は保証いたします。

ところで、角川文庫はいま作家が交代で編集長としてオススメ作品をピックアップして、古典に光を当てるなど、企画で出版されているようです。
この『Xの悲劇』はあさのあつこさんの担当(?)で、ほかには『マクベス』『月と六ペンス』『羅生門』など、もう絶対オススメの古典から、辺見庸、中上健次などずっしり重厚な作品がラインアップされています。(中上健次は恥ずかしながら未読なのですが、辺見庸さんは『もの食う人々』もオススメです)
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by n_umigame | 2009-02-09 21:00 | *ellery queen* | Trackback | Comments(0)
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