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『とっぴんぱらりのぷぅ』 田中芳樹著 (光文社)

常に読み手をワクワクさせる物語を発表しつづけている作家・田中芳樹が、少年時代に夢中になった本について語りつくす。本への愛がたっぷりつまった愉快なブックガイド。


すべて対談形式で進められるブックガイド…ということになっていますが、かなり田中さんの個人的趣味全開の「お気に入り本」の紹介という感じでした。
紹介される本は、ですから、田中さんの著書を読んだ方ならそのルーツとして容易に想像できるような歴史スペクタクルや、恋と友情と大冒険が満載の、定番中の定番物語がほとんどです。

『十五少年漂流記』、『宝島』、『バスカヴィル家の犬』、『奇巌城』、『地底旅行』、『海底二万里』、『三銃士』、『西遊記』、『三国志』『水滸伝』、『紅はこべ』、『吸血鬼ドラキュラ』、『嵐が丘』………。

わたくしは高校生になるまでデュマの『三銃士』を読んだことがなく、クラスで岩波文庫の赤版が(どういうわけだか)流行ったとき立て続けにフランス文学を読んで、『赤と黒』や『狭き門』などの続きで(あろうことか)手を出し、「うわ、何コレ全然違う!」という驚きとともに、こんな違う意味でおもしろいお話が岩波文庫に入っているなんて! と大ヒットだったのを覚えております。おかげさまで大学では第2言語はフランス語を選択しました。『三銃士』を読んでいたら、文学青年がそのまま文学老人になったような今は亡き母方の祖父に「そんな大衆小説ばっかり読むな」と言われたものですが、今でも生島遼一さん訳の『三銃士』はわたくしの中で不動の位置にあります。昔っからどちらかというとポップカルチャーが好きだったのでしょうね。それは今も変わりません。(ごめんねおじいちゃん、不肖の孫で(笑)。)

『嵐が丘』も好きでしたねー…。恋愛小説ってまったくといっていいほど読まないのですが(それでこんな女になっちゃったんだな…)、これだけは大好きでした。技巧的にいろいろと欠点が取りざたされる作品ですが、いいと思います。

『吸血鬼ドラキュラ』も、周辺メディアで造りあげられたイメージがあまりにも大きくなりすぎ、原作を読んだことがある方が意外に少ない小説ではないかと思いますが、これも原作がおもしろくてびっくりした覚えがあります。 平井呈一訳が古典落語の怪談みたいでいいんですよ。(ドラキュラが「今夜は豪儀と早いな」とかって言うんですよ! 最高だ。)ドラキュラがイギリスに来るまでのところが本当に怖くて、秀逸です。ヴァン・ヘルシングが出てからはあんまりおもしろくないです(笑)。合わせて『フランケンシュタイン』も原作はお薦めです。こんなに人間の業をいうことを思わせるような深いお話とは思っていませんでした。

最後に柳広司さん、久美沙織さん、藤田和日郎さんとの対談があるのですが、久美さんが「日本は財産をいっぱいもってるんですよ。翻訳ものをこれだけ読めるのも、漢字にルビを振るとか、そういう超絶技巧が日本語はできるから。そして日本人の心性というのが、どこの神様だろうがいきなり差別はしないし。拒んだりしないし。食だってワールドカップくれば食べられないモノがないくらい。それでみんながどこの国の話でも読めるっていうのはすごいと思います。」とおっしゃっています。

そのとおりだと思います。

だからこそ、翻訳者は、日本での外国の作家の評価を決めてしまうと言っても過言ではないので、責任重大だと思います。
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by n_umigame | 2009-03-24 19:05 | | Trackback | Comments(0)

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