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『10月はたそがれの国』 レイ・ブラッドベリ著/宇野利泰訳(創元SF文庫) 東京創元社

ポオの衣鉢をつぐ幻想文学の第一人者、SFの抒情詩人ブラッドベリの名声を確立した処女短編集「闇のカーニバル」全編に、新たに五つの新作を加えた珠玉の作品集。後期のSFファンタジーを中心とした短編とは異なり、ここには怪異と幻想と夢魔の世界がなまなましく息づいている。ジョー・マグナイニの挿絵十二枚を付す決定版。(Amazon.jpより)


平敦子さん@うさぎの昼寝様の『塵よりよみがえり』の記事を拝見して、「そう言えばブラッドベリ…昔の作品が読みたいなあ…」と思い、再読。と言っても初読は10代前半だったかと思うのであれから……えええ、そんなに経つのか! おそろしい…。

"The October Country"を「10月はたそがれの国」と訳した宇野さんの詩人っぷりにもほれぼれします。
エラリイ・クイーンを訳しているより、ブラッドベリを訳されている方がステキなように思います。
東京創元社ではSF文庫に入っているのですが、早川書房ではNVに入っていました。どちらかというと早川さんの、SFに入れなかったという判断の方が個人的にしっくりときます。

おそろしい時間を経て最初から再読したわけですが、やはり心に残っている作品は同じでした。
内容を忘れている作品も、「これはラストがすごくすごーく怖かったような…」とドキドキしながら読んでみたら、ひいい、やっぱり怖かった! というオチで安心しました。(自分の記憶力に。)

『塵よりよみがえり』は未読なのですが、この短篇集に収録されている『集会』の続編かと思っていたらそうではなく、この作品の世界をシリーズ化(?)したものを集めた作品集らしいです。
たとえ何年経っても忘れない、わたくしをブラッドベリにめろめろにさせてくれたセリフがこの『集会』にあります。

「腹を立てるんじゃないよ、甥のティモシー! みんなそれぞれ、生き方がある。おまえだって、とりえはりっぱにある。ずいぶんと豊富にあるんだ。この世はわれわれにとって死んでいる。その証拠はたくさん見てきた。うそじゃないんだぜ。いちばん少ない生き方をする者が、いちばん豊富に生きることになる。価値が少ないなんて考えるんじゃないよ、ティモシー。」


年に一度ハロウィーンに集まる魔族の「一族」の中のはみだしっ子であるティモシーに向かって、エナー叔父さんが言うセリフです。(萩尾望都さんがマンガ化していて、そのエナー叔父さんがやさしそうでかっこよくてうれしかった記憶もあります(笑)。) 多分に自意識過剰で毎日が生きづらかった頃にこのセリフが突き刺さったことで、いまだに抜けなくなったのですね。

ほかに『みずうみ』のような詩情あふれる悲しいお話、『びっくり箱』のような実際にあってもおかしくないような、親が愛情と自称するエゴから脱出する少年のお話、『群集』『小さな殺人者』『骨』(←スタージョンも真っ青ですよ怖いよ怖いよ!)『二階の下宿人』、ブラッドベリの面目躍如『こびと』『壜』などなど、珠玉の作品集です。

ブラッドベリは現在も活躍してらっしゃる作家さんですが、やはり鬼気迫る印象というか、読むと突き刺さって抜けなくなるような作品は昔の作品群に多いように思います。

ところで、わたくしにとって『集会』のエナー叔父さんはエナー叔父さん、シシーはシシーなのですが、『塵よりよみがえり』は別の名前になってしまっているようです。名前のカナ表記をどうするか…難しい問題です。日本語にとっては永遠の課題ですね。
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Tracked from うさぎの昼寝 at 2009-03-29 22:43
タイトル : 『塵よりよみがえり』レイ・ブラッドベリ
 アメリカにある魔物や幽霊が棲みつく館に暮らす少年・ティモシー。彼は赤ん坊の頃館の前に捨てられていたのだ。そこには四千年前のミイラである「ひいが千回つくおばあちゃん」、夢を見ながらあらゆるものに心ぎ..... more
by n_umigame | 2009-03-29 20:56 | | Trackback(1) | Comments(0)

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