『グローバル恐慌 : 金融暴走時代の果てに』 浜矩子著(岩波新書) 岩波書店

アメリカのサブプライム危機は、金融市場を麻痺させ、全世界を震撼させている。現在の経済収縮は、金融危機の段階を超え、世界規模の「恐慌」へと歩みを進めているのではないか。危機拡大の要因を解説しながら、事態の意味、世界同時不況のゆくえについて考察。金融の暴走をもたらしたグローバル経済を変革する必要性を強く訴える。(Amazon.jpより)


リーマン・ショックから始まった今回の金融恐慌が、
(1)なぜ、どういうメカニズムで起きたのか
(2)1929年の世界大恐慌の反省がなぜ生きなかったのか
(3)一人一人が今、またはこれからできることは何か

この3点について専門家の方の意見が聞きたい、と思い読みました。
わたくしはNHKスペシャルの申し子と申し上げても大過なく(笑)、世界で起きていることのほとんどはNHKスペシャルやニュースなどで得た知識です。淡々と事実(できる限り)を報じるNHKとは言え、さすがに一局だけの番組だとものの見方・考え方が偏りますので、別の角度を求めて本を読むわけなのですが、正直なところ(1)についてはNHKスペシャルですでに得ていた知識以上に新しいものは得られませんでした。
これは、かいつまんで言うと、身の丈に合わない買い物をさせるために、返済能力のない人に言葉巧みにお金を貸し付けたサブプライム・ローンという制度自体に問題があったことに間違いはない。だが、一国の金貸し制度に問題があったからといって、なぜこんなことになったかと言えば、サブプライム・ローンという金融商品を証券化し、それを世界にばらまいたことが問題であった、ということです。
投資信託などをしておられる方には釈迦に説法ですが、投資家は株だけに投資する人もいなくはないですが、株だけではやはり為替の変動をまともに食らう分リスクが高いので、通常、株券や債券や外貨貯蓄などさまざまな金融商品を組み合わせて資金を運用しているわけです。(ということもつい最近必要があって勉強するまで知りませんでした。株と債券の違いさえわからなかったという経済音痴です。いけませんね。)

この株券や債券を何割かずつ合算して(比率はさまざま。株券が多い方がハイリスクになりますが株が値上がりしたときに売り抜ければハイリターンになります。紙屑同然になればすってんてんです。1円下がっても1億株保有していれば1億円の損失になります。)サブプライム・ローンも組み込んで証券化したわけですが、それがとてつもなく細分化されてしまったため、この危険なサブプライム・ローンがいったいどこに紛れ込んでいるのかわからなくなってしまった。誰も危ないかもしれないカードを引きたくありませんから、疑わしい商品は焦げ付いて不良債権になります。

著者はさらに遡って、そもそもの発端を米ドル金本位制から変動為替相場制に移行したニクソン・ショックにあるとされています。

(2)については結論から言うと反省が生きなかった。というより反省していたかどうかもあやしい。これに関しては、著者は、1980年代のバブル経済が崩壊したときの経験から世界に発することのできる警告が、日本にはあったはずだと反省しておられます。また、日本の超低金利政策が世界にカネ余りを生み、それが今回の恐慌の小さからぬ遠因になっているのではないか、とも。

(3)。これから10年くらいは最低がんばりましょう、ということのようです。これは過去の金融恐慌のあと、だいたいどこも10年はたいへんだったから、という経験則からのようですが、現在のようにグローバル化した世界では過去とは比べ物にならないくらい世界が緊密化して、互いに癒着した面が引きはがせなくなっているため、さらにたいへんだろうという結論でした。


本書を総括すると、素人にもわかりやすく書こうとされているその努力は伝わってくるし、その姿勢は評価すべきだとは思うのですが、いかんせん、残念ながらそのためと思われる比喩の多用が成功しているとは言い難く、シャープさを損なっているように思われます。
申し訳ないと思いつつ、最初の「地獄の扉が開いた日」という比喩で一気に読む気が萎え、しばらく放置してありました。必要以上にエモーショナルな煽るような比喩は、どこか他人事のような、民放の昼間のワイドショー番組のような無責任さを醸し出してしまうので、読んでいてあまり気持ちのいい感じはしなくなってしまいます。読者の感受性の問題もあるかと思いますが、岩波新書だったからこそ、ちょっとその点は点数辛めです。(これが岩波・中公以外の新書ならあきらめもつきます。最初からクールさを期待してやしませんので)

現場に火がついたとき、火消し担当者は誰よりもクールでなければいけません。そして自分が当事者だという責任感がなければ(そういう意味では”クールに熱く”でなければ)、事態は収拾できません。


とはいえ、大げさな比喩を度外視できれば、非常にコンパクトに問題点がまとまっていてわかりやすいと思います。
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by n_umigame | 2009-04-05 14:38 | | Trackback | Comments(0)

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