*さいはての西*

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『死せる案山子の冒険―聴取者への挑戦 II』エラリー・クイーン著/飯城勇三訳

(論創海外ミステリ84 シナリオコレクション5) 論創社

密室、ダイイングメッセージ、オカルト。
本格ミステリ・ファン必読のラジオドラマ版「エラリー・クイーンの冒険」シナリオ集第2弾。
「国名シリーズ」と「ライツヴィルもの」両者の要素を備えた表第作を含む7編に加え、法月綸太郎による解説を収録。「シナリオ・コレクション」第5弾。


『ナポレオンの剃刀の冒険』に続く第2弾。やっと出ましたよ! と言うより、出て良かったおめでとうございます自分ならびにクイーンファンの皆さま! と言うべきでしょうか。何はともあれ、読めて良かった!
前回もそうでしたが、発売日当日3月25日からどのネット書店も在庫なしの状態でびっくりしました。それであせって2冊買ってしまった前回の反省をふまえ、今回はじっとがまんの子で待ちましたとも。

既刊の短篇集に収められていて既読のものもあったのですが、きれいさっぱり忘れていて(笑)、2度楽しめました。

以下、犯人に結びつくヒントのネタバレなどがあります。未読の方はご注意ください。↓




「<生き残り(ラストマン)クラブ>の冒険」
いきなりやられました…! 完敗です。
これはアガサ・クリスティのあの作品のトリックですね。クリスティに先を越されたためクイーンが取り下げた作品があるとは知っていましたが、解説によると、どうもこれのことのようです。
ポストの色は日本はイギリスの郵政を真似たので赤いのだそうですが、アイルランドみたいに「イギリス憎し!」で緑だという国もあれば。アメリカのポストは緑と言うより青だと思うのですが、かつて公務員にアイリッシュが多かったニューヨークでは緑だった時代があったのでしょうか。テキストにもはっきりgreenと書いてありますね。ただ、エスニックジョークでよく出る、日本の信号機の色が英語圏の人に何色に見えるかという笑い話があるので、(日本人はあの色を「青」と言っていますよね?)そういう違いなのかもしれませんが…しかしこれはblueだろ?(笑)
参考に…↓現在のニューヨークのmailbox。
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「死を招くマーチの冒険」
クイーン大好き、ダイイング・メッセージもの。「半分の手がかり」でも使われた、ファーストネームの途中まで綴りも発音も同じきょうだい(双子)が出てくることがトリックでしょうか。「んなアホな」と思いつつもダイイング・メッセージが出てくるとわくわくしちゃいますね。(笑)
この回ではクイーン警視が電話でエラリイと話しているさいちゅうに、ハードボイルドの探偵みたいに後ろから頭を殴られてエラリイが「親父が死んじゃった!」と大慌て、という楽しいシーンがあります。エラリイとヴェリーがとても心配しているのに、クイーンパパは「だいじょうぶだっつってんだろ、おれを赤ちゃん扱いするな!」といういつものパターンも微笑ましい(笑)。二人は心配してくれてるだけですからクイーンパパ。心身ともに鋼のようにタフなクイーンパパ、頭も石頭(物理的に)ということが証明されました。
「警察本部でいびきをかく鯨(ヴェリー)となんにも言わないし話も聞かないやつ(エラリイ)にはさまれて、おれはなんで警官なんかになったんだろう」とぶつくさ嘆くクイーンパパにも笑いました。ヴェリーはお笑い担当とは言え、ほんとにラジオドラマではえらい言われようです(笑)。ラスト、ニッキイが帰ってくると知って大はしゃぎのエラリイもかわいい。

「ダイヤを二倍にする男の冒険」
これも1度読んだはずだったのにきれいさっぱり忘れていまして、2度目の敗北でした。それが不可能であるなら、事実はひとつ、という原則通りのはずだったのですが、何回でも愉快にだまされちゃいますね(笑)。

「黒衣の女の冒険」
これは犯人がわかりました。だってリボルバーを渡したのは…。それと解説にもありましたが「最初は間違えた」というのは映像のことでしょうか。でもはっきり「テーブルをよけて通った」と言っているのだから、これもひっかかった人は少ないのでは?

「忘れられた男たちの冒険」
映画『シンデレラマン』にも1929年の世界大恐慌のあとセントラルパークにできたフーヴァーヴィル(フーバー村/失業したホームレスの人たちの小屋が並ぶ村)の様子を描いたシーンがありましたが、1940年に放送されたというこの作品も、その後点在したというフーヴァーヴィルの一つを描いています。義憤にかられるニッキイや、温情をかけて逮捕しないヴェリーやクイーン警視たちのあたたかい視線がいいですね。(しかし、クイーン警視はほんとに如才ない人ですねえ。年の功ですかねえ(笑)。あこがれるなあ。)
この作品ではあらあらエラリイったらまるでナウシカね?と思ったら、クイーンの作品でそんなわけは(笑)。

「死せる案山子の冒険」
謎解きがどうとか言う以前に、これは怖かったです…。法月綸太郎さんの解説にもありますが、アメリカ中西部の「無知と因習にとらわれたアメリカの田舎」の怖さですね…。そして悲しいお話でした。

「姿を消した少女の冒険」
極めつけに暗かったお話。
これは『九尾の猫』『クイーン警視自身の事件』と同じモチーフですね。
そして(訳者の方の解説にもありましたが)、現代人にとってこの犯人は盲点にはなりえず、すぐに犯人がわかってしまいました。


今回の第2弾では解説にもあるように、中期のクイーン作品を彷彿とさせるような作品で占められています。
ですので、1のように大笑いしたりくすくす笑ったりしながらパズルを楽しむという雰囲気ではなく、落ち込んでいるときにうっかり読んだらしばらく浮上できませんという作品も収められています。クイーンが暗いということはファンの皆さまは重々ご承知おきかと思いますが(ちょっと?)、2分冊にしてしまったことでそれをことさらかみしめることになってしまっています。原書は1冊で、原書はそのあたりのことを考えてか、最後に後味の悪い作品がこないように配列されているのですが…。英語を日本語に翻訳するとどうしても日本語訳の方が長くなるので、致し方がないことではあったとは思うのですが。

とは言え、クイーン警視とヴェリーのギャングごっことか、ニッキイがエラリイを称して頭の中がイッツー(車線が一つしかない)だと言ったところとか、おれのブランデーを飲んでもいいけど風呂に入れとクイーン警視に言われるヴェリーなどなどは大爆笑でした。(クイーンパパはきれい好き。)何だかんだ言って親子仲が良いクイーン親子もいいですしねv

訳者の方の解説を読んでいると、やけにニッキイにからむというか、ニッキイに妬いているような発言が多いのはなぜなんでしょうか(笑)。わたしは全然気にならなかったけどなあ…。(そらアンタがエラリイに興味ないからでしょ?)(ははは、失礼な。エラリイはクイーンパパの最愛の息子さんですものそんなことは。)(ふつうの人はクイーン警視エラリイ父親だって考えるの!)(ええっ、そうなの!?)

明日(4月7日(火))、NHK BShiで「忘れられた男たちの冒険」がラジオドラマ化だそうです。要チェック! (テレビでラジオて…?? 見たらわかるか。)
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by n_umigame | 2009-04-06 20:42 | *ellery queen* | Trackback | Comments(2)
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Commented by Yuseum at 2009-04-07 21:41 x
nisemiさん、こちらではごぶさたでーすヽ(*^。^*)ノ
ラジオドラマ集、ネタはまだまだあるのだから、どんどん出版されるといいなぁ〜。
今日のBShiも、楽しかったです。
そもそもクイーンを特集したマニアwなTV番組ってのは、なかなかお目にかかれないですから、新鮮でした♪
Commented by n_umigame at 2009-04-08 22:55
Yuseumさん、こんばんは! こちらの方こそ本当にごぶさたしております(*^_^*)。
BShiの番組、楽しかったですね!
そしてラジオドラマはEllery Queen's Mystery Magazineなどにちょこちょこと掲載されていることもあるようで、まだまだあるならけちけちしないで全部本にして出していただきたいですよねー!