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偉大なるミステリー作家たち アガサ・クリスティー

偉大なミステリー作家の素顔と真実に迫るシリーズ。今回は、名探偵エルキュール・ポワロやマープルの生みの親、ミステリーの女王アガサ・クリスティーの世界にご案内する

ミステリーの女王アガサ・クリスティー。作品は世界50か国以上で翻訳され、部数は10億部を超える。だが、単にたくさん売れたから、ベストセラーが多いから、女王と呼ばれているわけではない。そこには、もっと深い“理由”がある。番組では5人の読書好きが「アガサの謎を解く名探偵」として登場。鍵となる3つの作品を中心に、互いに議論を深め、「女王の真価」を探求する。ミステリーの奥深さをたんのうして頂く90分。NHK BShi 4月21日(火) 20:00~21:30


クリスティの膨大な作品群の中から『オリエント急行の殺人』『そして誰もいなくなった』『春にして君を離れ』の3作をピックアップし、それぞれをゲスト陣が探偵となって掘り下げてゆく、という趣向の番組でした。

エラリイ・クイーンのときのゲーム性を意識した、明るい、アメリカ的ハッピーエンディングな雰囲気の作りとは全く違う、暗い底恐ろしさが漂う1時間半でございました。

上記3作を選ばれたことからも、どういう趣向の番組にしたかったのかが伺えるかとは思いますが、それにしても怖かったですよ。特に、アガサが幼いときにお姉さんとよく遊んだという「上のお姉さん」遊び。こわー!!! なんでこんな怖い遊びを…!! でも子どもってなぜだかこういう怖い遊びが大好きですよね。最近は犯罪に巻き込まれたりすることがあるためやらないと思われますが、わたしも小学生までは毎年夏に同級生や近所のお姉さんお兄さんたちと肝試しをやっていました。(もちろん大人がついていました)だいたい神社か墓場なのですが、田舎の墓場なので古ーい卒塔婆がうっそうとした竹林の細い道沿いにわさわさ刺さっているようなところでした。道々に悪のりした大人たちが隠れていて「わーっ!!」とかって飛び出してくるし…。大人になったらあれをやるんだチクショウ覚えてやがれと思っていたのに大人になったら肝試しができない社会になっていましたチクショウ。
…あれ、何の話でしたか。

閑話休題。

『オリエント急行の殺人』も『そして誰もいなくなった』もこんな風に読んだことはなかったので、新鮮でした。
『アクロイド殺し』のフェアかアンフェアか論争で、ヴァン・ダインの評の返しにセイヤーズの評で返す趣向でしたが、痛快でした(笑)。(ヴァン・ダインファンの皆さま、すみません)

『春にして君を離れ』は男性にはあまり人気がないようでしたが、逆にこれが身にしみて痛い、クリスティのナンバーワンとして推す、という男性もある意味怖いかもしれません(笑)。
この作品はミステリではなく、元々アガサ・クリスティ名義で書かれたのではない作品なのですが、非常に怖い作品です。
夫や子どもたちに愛されないどころか、夫の心はとっくに別の女性に移っている。ふつうだったら浮気者のはずなのですが、夫に同情的に描かれています。おそらくほとんどの読者はこの心移りを、夫の不実とは思わないでしょう。その夫からは憐れまれ、子どもたちからは「この家は牢獄だ」と憎まれ出て行かれ、それでも、自分では良妻賢母で非常に魅力のある女のつもりだった主人公の独善ぶりが読んでいて痛くて痛くて、最後の方で一瞬、あ、生まれ変わるのかな…?と思って希望の光が見えたかに見せつつ、やはり…というオチ。アガサ・クリスティ…女です。(笑)男性はこうは書かないですよね…。

この主人公の独善が問題なのは、外に出ない。あるいは外から見たら、この作品の主人公のように「一見良妻賢母」であるがために、その家族の息苦しさは家族にしかわからない、という点にあるかと思われます。こんな母親だったら、妻だったら、わたしでもいっしょに住むのは我慢できません。それで本人は「こんなに愛して尽くしたのに何が気に入らないの?」と思っているし、日々態度にそれが出ていたでしょうね、こういう人ですから。その無神経っぷりが家族の神経を逆なでし、生きる活力をヒルのように吸い取っているということがちっともわかっていない。
やはりこの作品については、桜庭一樹さん、山本容子さん女性陣の評が的確であったと思いました。

クリスティの作品には、トミーとタペンスシリーズや、ポワロの短篇など、軽く読めて楽しい作品群もたくさんあり、それがクリスティの幅広さであるので、またこういった明るい面のクリスティ特集もしていただけるといいなあと思います。
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by n_umigame | 2009-04-23 21:28 | ミステリ | Trackback | Comments(2)
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Commented by Yuseum at 2009-04-24 21:13 x
「上のお姉さん」遊びは、トラウマになっちゃいますよね〜
(((n;‘Д‘))η
でも、これがクリスティのイマジネーションを大いに高めたのかな?

『春にして君を離れ』は実は未読のYuseumですがf^_^;、今回の番組を見ていて、「面白そうだなぁ。」と思いました。
ま、さすがにナンバーワンにはならないとは思いますがw、機会があったら読んでみよう。
Commented by n_umigame at 2009-04-25 18:06
こわかったですよねー! アガサのお姉さんが考え出したということで、お姉さんもただ者ではなかったと思いました(笑)。

『春にして君を離れ』はミステリでもないし、あまり後味がスッキリというわけでもないので、わりと元気なときにお読みになった方がいいかもしれません…。(^^;)