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『たいした問題じゃないが : イギリス・コラム傑作選』行方昭夫編訳(岩波文庫)岩波書店

20世紀初頭のイギリスにガードナー,ルーカス,リンド,ミルンの4人を代表とするエッセイ文学が一斉に開花した.イギリス流のユーモアと皮肉を最大の特色として,身近な話題や世間を賑わせている事件などを取り上げ,世界政治を語っても大上段には構えず,人間性の面白さを論じてゆく.4人のエッセイ全32篇を収録.(岩波書店HPより)


ウィットとユーモア、そしてイギリスらしいアイロニーの利いた、読んでいてたいへん気分のいい、すばらしいコラム集でした。
4人ともそれぞれに個性があり、その個性については巻末に付された解説が秀逸ですので、ここでわたくしが駄文を弄するのは控えさせていただきます。

個人的な好みで言うと、リンド>ミルン>ガードナー>ルーカスでしょうか。
でもどの人のコラムも(エッセイというよりコラムですね、短いから、とのこと)1編1編のクオリティが高く、読み終わるのが惜しいほどでした。

リンドはわたくしがイメージする「イギリスらしさ」大爆発な作風で、皮肉が効いていて、坂田靖子さんの『バジル氏の優雅な生活』に出てくる、議員のホイットマンが主人公のお話「ホイットマン白書」を思い出してしまいました。一番のお気に入りです。最初の「時間厳守は悪風だ」「冬に書かれた朝寝論」など思わず「ぷっ」と吹き出してしまうような皮肉のきいたものもあれば、「忘れる技術」のように、ユーモアに包みつつも、読者が本当にそうできるなら世界はどれほど平和に共存できるだろう、と思わされるものも。

ミルンは日本では『くまのプーさん』シリーズで著名ですが、忘れてはならないのがミルンの唯一のミステリ小説『赤い館の秘密』。
親子萌えのわたくしなどは、ミルンが推理小説が好きだったというお父さんに捧げた献辞「…お父さんへの深い敬愛の念をこめていまようやく書きあげました…」だけでおなか一杯になり、「いいな、ミルン!」とにこにこほほえみながら献辞を読んだだけで積んであるのですが(積むな)、とある墓地に葬られた男女3人の墓銘碑から、彼らがどんな人生を送ったか推理を展開する「17世紀の物語」や、新聞の私事広告欄に掲載された短い文章から男女二人になにがあったのかを推理する「小説の断章」などは、もっとミステリを書いてくれたらよかったのに…と思うほど鮮やかでした。
リンドとミルンは個人のエッセイ集が出たらぜひ欲しいと思いました。

ガードナーは解説にもあるように、少しお説教臭さを感じる部分もあるのですが、全体的に人間を見る目が非常にあたたかく、読んでいるとこちらまであたたかくなったように感じます。

ルーカスは最初の「N一字の差」、これがやはり最高でした。書簡だけで綴られるコラムですが、マザーグースの唄に出てくる「釘が不足で蹄鉄打てず…」を思い出しました。(ささいなことが原因でそれが連鎖してたいへんな結末を迎える…「わらしべ長者」が”天国へゴーバージョン”だとしたら、「釘が不足で~」は”地獄へゴーバージョン”です。)

ぜひ、第2弾、第3弾を出していただきたいです!
タイトルはミルンのエッセイ集"Not that It Matters"からだそうです。
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by n_umigame | 2009-04-27 23:16 | | Trackback | Comments(0)

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