『経済成長という病 : 退化に生きる、我ら』 平川克美著 (講談社現代新書)講談社

私たちは経済成長が人間の社会の反映と進歩につながると信じて、競争を続けてきた。
しかし、その努力を続ける中で私たちの社会は少しでも進歩したといえるのだろうか。むしろ退化したものを直視することを避けるために、ラットレースのような競争を続けてきたのではなかったのか

嘆いたり驚いたりしている私たちもまた、
この時代の傍観者であったわけではない-。(帯より)


著者の平川克美さんは内田樹さんのお友達のようです。
そのせいか、お二人とも論理の組立方や語彙の使い方がが非常に似ていると感じます。
したり顔で結論を押しつけないところも共通するように思います。


さて、冒頭から語弊を招くことを承知で申し上げると、カリスマ経営者/経済学者に心酔する人と、新興宗教に傾倒する人は、どこか似通った心性があるのではないかと思うことがあります。(双方、「あんなものに入れあげる人が信じられない!」と思っているに違いないでしょうが、そういう、第三者から見れば「五十歩百歩のお互い様」なところも含めて。)

わかりやすい話にはどこかうさんくささを感じてしまうわたくしが単なるひねくれ者だと言われればそれまでなのですが、「これを実践すれば幸せになれますよ」「これさえやっておけばお金持ちになれますよ」といった語り口や、カリスマの思想に批判的な人を蔑視/排除しようとする排他的なところが、非常に似ているように見えるのです。


もちろん、それで自分が幸せだと思う人は、どんどん幸せになっていただいたらけっこうなことと思います。
幸福な人が多い世の中の方が、不幸な人が多い世の中より、どれほど他人のためにもなるかしれません。
何度かこのブログでも書きましたが、わたしは「本当に幸せな人は周囲の人も幸せにする」と思っています。
裏を返せば、他人を不幸のどん底に突き落とす人は、世のニュースなどを見ていても、聞いている限りでは気の毒な人ばっかりです。
本当に満ち足りている人はもっと静かなはずなのに、「わたしはこれだけ幸せ/お金持ちだ、だからあなたも幸せに/お金持ちにしてあげたい!」という人たちは非常にかしましい/自己顕示欲が強いことが多いように思います。
「満ち足りている人は静かに暮らしている」のであるならば、「かしましい人は本当は幸せではない」のではないか。宗教や自己啓発などで押しつけがましい人を見ていると、そう思うことがあります。

ただ、宗教と経済/経営の両者を比べてさらにたちが悪いと思うのは経営/経済に関しての方です。
宗教に関しては批判が働くメディアですら、経営/経済に関してはメディアの批判性が機能しないどころか、メディア自体が踊らされているのではないかと思うときがあるからです。

もうひとつ問題なのは、この著書である意味一番重要な指摘だと思ったのですが、傍観者のつもりだった私たち自身もまた、間違いなくこのような事態の加担者であったという自覚を持てるか、という部分だと思います。

戦後の焼け野原から日本を何とか復興させなければならない、同じ過ちを繰り返してはならない、と思い、一生懸命働いて来てくれた先人には、素直に頭が下がります。
物理的に飢えを知らないということがどれだけ恵まれたことであり、物が豊かにありさえすれば幸せになれると思って、その「理想」に向かって邁進してき人々が悪いと一方的に批判することは、やはり、いくらなんでも公平ではない。

ある時期までは、それが人々の「幸せになるためのモチベーション」であり、システムであり、わかりやすい目標であった(売り上げとか人口とか数字だから)のだと思います。
しかし、この「経済成長」という目標は、もうそろそろ賞味期限切れなのではないでしょうか、ということですね。

「いつまでも右肩上がりに経済的に成長し、いつまでも右肩上がりに人口が増え続け」たらどうなるか。
インドや中国など桁違いに人口が多い国が、あるとき「経済成長」を果たした「先進国」となり、日本のような資源の使い方をしたらどうなるか。
巨大なポンプでお風呂の水を汲み上げるようなものです。
遠からず、構造自体を見直さなければならない時が来る。
それは早いに越したことはなく、それは「今」なのではないのか、という問題提起の著書でもありました。

では、どうすればいいのか。

それをさも安直に解決できるかのように持論を展開したのでは、凡百の「経済評論家」と変わるところがなくなってしまいます。

たいせつなのは自分の頭で考えること。
そして自分にできることは何なのかを模索すること。
そういうことなのだろうと思います。
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by n_umigame | 2009-06-03 22:10 | | Trackback | Comments(0)

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