*さいはての西*

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2010年 05月 08日 ( 2 )

『アメリカから<自由>が消える』 堤未果著(扶桑社新書)扶桑社

飛行機に乗れない!突然逮捕される!言いたいことが言えない…これが「自由の国」で頻繁に起きている!『ルポ・貧困大国アメリカ』の著者が明かすアメリカ社会驚愕の実態。 (Amazon.jp)


春の(はからずも)ホラー祭り・第2弾。
というのは冗談ですが、なまじなホラーよりおそろしいです、これ。

なんだか、悪い冗談みたいな国になってきてしまっている印象をますます受けます。

アメリカという国は、つまりは、極端なんですね。
一国の大統領までが狂信的なまでに宗教に傾いたりするし、「非キリスト教的」なもの(ポルノだとか暴力的なものだとか)を極端なまでに圧力をかけて封印しているから、その反動で関連した犯罪や問題が増大する。
かつてあった「禁酒法」も犯罪組織を潤す温床になったし、関連して警察の不敗も招いた。

そして今回の著書でレポートされているように、「テロとの戦い」の大義名分のもとに、国を挙げての監視社会になってしまっている。
フロイトなら「抑圧」されているから「症状」として回帰するのだと言ったでしょう。(きっと)

良くも悪くも国が若い、というのは、きっとこういうことなんだろうなあと。

「その通りだよ。ゲイだから、黒人だから、女性だから、貧困層の人間だから、あるいは特定の宗教を持っているからとか、理由はいくらでもある。
でも彼らから自由に生きる選択肢を奪うのは、いつでも同じ、たったひとつの力なんだ」
「それはなんですか?」
(中略)
「<恐怖>だよ。ジョージ・オーウェルの『1984年』のディストピアは現実だ。
人は<恐怖>にのまれ、声をあげなくなり、選択肢を失うんだ。
為政者たちはいつだってそのことを知っている。自由を奪い最も効果的なツールが、<恐怖>であることをね」


よその国だけの問題ではなく、日本でも「それは違うんじゃ?」と思うような条例案が出たりしています。
最初はきっとほんの小さなきっかけで、しかも「自分はそれは関係ない」と思っているうちにがんじがらめにされていて、でもそれに気づいたときはもう手遅れだった、ということにならないように、一人一人が平素からアンテナを張っておかなければならないのだろうと思います。

端的にそれを示す詩を引用して著書は終わります。
ナチス政権下である牧師が書いた詩だそうです。

ナチスが共産主義者を弾圧した時、
私は不安に駆られたが、
自分は共産主義者ではなかったので、
何の行動も起こさなかった。
その次、ナチスは社会主義者を弾圧した。
私はさらに不安を感じたが、
自分は社会主義者ではないので、
何の抗議もしなかった。
それからナチスは学生、新聞、ユダヤ人と順次弾圧の輪を広げていき、
そのたびに私の不安は増大した。
が、それでも私は行動に出なかった。
ある日、ついにナチスは教会を弾圧してきた。
そして、私は牧師だったので、行動に立ち上がった。
しかし、その時はすべてが遅すぎた。


扶桑社新書だからなーと手を出しあぐねていましたが、読んでよかったです。
かの国がくしゃみをすると日本は風邪をひくのですよ…。
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by n_umigame | 2010-05-08 18:46 | | Trackback | Comments(0)

『孤高の警部 ジョージ・ジェントリー』#3:「偶然が犯した罪」

ノーサンバーランドの港でドイツ人実業家の溺死体が見つかる。ジェントリーは、すぐに他殺と見抜き、バッカスと捜査を開始。殺されたドイツ人実業家グンターは、息子夫妻と船旅の途中で、20年前に戦争捕虜として過ごした地に立ち寄ったところだった。(AXNミステリー)


原エピソードタイトルは"Bomber's Moon"。
このbomberは「爆撃手」の意味なんですね。

1960年代を舞台設定にした理由を毎回考えさせられるドラマですが、今回は「戦争が人の心に残した傷跡」でした。
前回もイギリスとアイルランドの関係について、イギリスの側からのリベラルの代表意見のようなものをジェントリーの口を通して語られるシーンがありましたが、今回もジェントリーの口からちゃんとドレスデンのことを語るシーンがありました。
それに対してバッカスは「先にこんな狂った戦争を仕掛けてきたのはドイツ人だ」と言い返し、ジェントリーは(水掛け論になるとわかっているので)それ以上言い返しませんが、戦争は、始まってしまうと先に殴った方が悪いというような単純な話ではなくなってしまうということがよくわかる、やりきれないエピソードでした。
(ドレスデン爆撃についての主観的な代表意見を知りたい方には、カート・ヴォネガットJrの『スローターハウス5』をオススメいたします。体裁はSFですけれども。)

エピソードのサブプロットとして、バッカスが車を売りに出そうとしていることを知ったジェントリーが「借金があると迷いが出る」と、バッカスをたしなめるのですが、ジェントリーの心配したとおりのことが。
エンドクレジットとかぶるように言った、バッカスの"Thank you, sir."がよかったですね。どんな顔して言ったのか、見たかったなあ、ニヤニヤ(笑)。

その他の今回のおもしろ&びっくりシーンは、

・女性が席を立つとき同時に腰を浮かせるジェントリーとバッカスがジェントルマンでした。
もっと時代設定が古いドラマだとしょっちゅう(アメリカのドラマでさえも)見かけましたが、1964年でもこれがふつうだったのか、二人が礼儀正しいのか、相手がレディだからか、どれだろう。

・元レスラー相手に左ボディーをくらわして土つけたジェントリー。瞬殺。強えええー(((゜д゜;)))。ボクシングやってるの? と思ったら、やっていました……(参照:後続エピソードのギャラリー@AXNミステリー。バッカスと対戦!?)

・↑の元レスラーの本名(Fairy)のダブル・ミーニングで初めて下品なこと言ったジェントリーさん。言葉でも瞬殺された元レスラーさん。大勢人がいるから耳元で言ったのがかっこいいー。
ちなみに、queer, queen 以外にfairyにもそういう意味があるということを、わたくし今回初めて知りました。お勉強になるなあ。でも絶対使えない(笑)。

・また聞き込みに行った先で逆ナンされるジェントリーさん。モテモテ。

でした。
次回はバッカスとのかけあいで笑えるネタがまたあるといいな。

あ、あと「仕事は人を反映する」は名ぜりふでしたね。どこかで使おう。(どこで)
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by n_umigame | 2010-05-08 18:29 | 映画・海外ドラマ | Trackback | Comments(2)