カテゴリ:Krabat/クラバート( 11 )

『語りべのドイツ児童文学 : O・プロイスラーを読む』吉田孝夫著(奈良女子大学文学部まほろば叢書)

出版者:かもがわ出版

~目次~
1 ホッツェンプロッツをドイツ語で
2 妖怪の故郷を語る
3 ハリー・ポッターと核戦争のあいだで
4 「ぼくはクラバート」―民話と名のり
5 辺境・賤民・ソルブの伝説―『クラバート』の背景
6 ゲームとしての人生
7 語りべとして―おわりに



※O・プロイスラー著『クラバート』の結末に触れています。


帯によると「『大どろぼうホッツェンプロッツ』『クラバート』で知られるプロイスラー「民話の語りべ」名手としての魅力を、作品から探る。」となっています。

プロイスラーの研究書というのがめずらしいということもあって期待して読み始めたのですが、第1章を読み終わらないまに「こりゃあ、本の選び方を間違えたかな」と思いまして、その印象は最後まで読んでも変わりませんでした。

叢書名からわかれよ、ということだったのかもしれませんが、まず「大学の先生の講義」でした。
学生を主な仮想読者としているためか、視線が「教壇の上から」なんですよ。それもギャグが寒かったりして(ドイツ語って楽しい!の下りとか…)「こんな先生、自分の母校にもいたわ(苦笑)」という感じの。まずそれにもやもや。

次にもやもやしたのが、期待したものとの乖離です。
わたくしのプロイスラー作品との出会いは、著者の方とは逆に、子どもの頃家にあった『小さい魔女』『大どろぼうホッツェンプロッツ』ですが、いちばん好きな作品は大人になってから読んだ『クラバート』です。
この作品ははスラブ系少数民族ソルブ人の間に伝わる「クラバート伝説」が元にされており、本作中も言及されるように、クラバートを救いに来るのが母親から恋人の少女に変わっていたりするのですが、残念ながらドイツ語やスラブ系の言語の素養がないわたくしは「クラバート伝説」の一次資料に当たることができません。(カレル・チャペックのファンでもあるので始めてみたチェコ語は1ヶ月で挫折しました(笑)。愛が足りませんね。)
ですので、「クラバート伝説」の一次資料に当たり、紹介しながら、それがいかにプロイスラーの作品として昇華されていったのか、というものが読めるのかと思っていたのですが、そうではなかったのでした。

それから、第5章の「辺境・賤民・ソルブの伝説―『クラバート』の背景」…ここが本来自分が期待した内容でもあるのですが…のような部分が、あまりにもさらっと流されてしまうことに対する違和感です。
「賤民」というような言葉を使って述べるのであれば、もう少し腰を据えて語られるべきではなかったかと思います。
語弊のないように申し添えると、この言葉が差別的だから問題であるというような<言葉狩り>的な意味で申し上げているのではありません。中世ヨーロッパの伝承が背景にありますし、ドイツと周辺のスラブ系の民族、国々との歴史背景というものがあります。
それらを事実として押さえつつ、『クラバート』という文学作品を検証する上で重要なファクターだ、というご判断なくして、この章は書かれなかったと思います。
その割りには踏み込まれていない、逃げられたような気持ちになるというのが率直な感想です。

これはこの第5章だけでなく、第3章「ハリー・ポッターと核戦争のあいだで」や第6章「ゲームとしての人生」など、章タイトルはキャッチーでやや扇情的な印象すら受けるのですが、残念ながらどの章も章タイトルだけが浮いている感じです。

第4章の「「ぼくはクラバート」―民話と名のり」の部分も、そういう意味では、非常に意地悪な言い方をしてしまうと、ミステリー小説のアナグラム(綴り変え)のようで、言葉遊び以上の説得力がないように思いました。実はこの章がいちばん「逃げ」がないと申しますか(笑)、著者の自説が出ていると思うのですが、「なるほどな」と腹に落ちない。
おそらくその理由は、やはり著者の方が本気で向き合ってくださっているような気合いというか気迫を、ほかの章から感じないからでしょう。
多少飛躍や無茶があっても、本当にこの物語が好きで好きでたまらないから、結果こうなっちゃったんだな~ということが伝わってくると、読んでいる方も意地悪を言いにくいものなのです(笑)。

もう一つの決定的な(?)「もやもや」感は、これは解釈の問題なのですが、プロイスラー自身による『クラバート』の結末についての解釈を、何度も否定されているところです。
プロイスラーは少女(カントルカ)の愛がクラバートを救ったと解説しているが、それがおかしいんじゃないかと。
著者の方は、男女間の愛などという卑小なものではない、とおっしゃりたいのでしょうが、逆にわたくしは、なぜそれを一義的に「男女間の愛」の意味しかないと決めつけてプロイスラーが間違っていると言えるのかが不思議でした。

「愛」という言葉は非常に意味の広い言葉です。形而下的なものから形而上的なものまで、多様な価値観をも含む言葉だと思います。とてつもなく安っぽく響くこともあれば、崇高な側面を持つこともあるということです。
また、プロイスラーさんはドイツ語で「愛」とおっしゃったのでしょうから、訳せば「愛」という単語でも、言語が変われば包括されるニュアンスや概念が変わってくるはずです。(例えば手元の英和辞典を引くとloveの第一義はいわゆる恋愛という意味の「愛」ではありません。)
なので自分は「これは愛が主人公の少年を救う物語だ」とプロイスラーさんがおっしゃっていても(「それだけじゃないでしょう、プロイスラーさんたら☆」とは思いつつ(笑))違和感はありませんでした。
クラバートを守り、支えてきた「愛」は、カントルカの愛も含め、いわゆる恋愛感情の愛だけではないと思うからです。
百歩譲ってそれが男女間の愛だったとしても、異性に対する「愛」が恋愛感情の愛しかない、と決めつけること自体が、卑小な解釈だと思うのですが、いかがでしょうか。

大学の研究叢書ではあるものの非常に軽めで、本文は156pしかありません。最初から語れる内容は限られていると思うのですが、であるなら、もう少しアプローチの仕方、テーマの切り取り方を変えてみた方が、1冊の著書として座りが良く、読んでいる方もこんなもやもやした気持ちにならなくてもすんだかもしれないと思いました。

もとより特殊な叢書の中の一冊ということで、想定外の読者からそんなこと言われてもな…と思われる向きもあろうかと思いますが、日本にも『クラバート』やプロイスラーのファンは大勢います。
一ファンとしてフラストレーションを感じた人間もいる、という程度にご理解いただければと思います。
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by n_umigame | 2013-02-22 21:33 | Krabat/クラバート | Trackback | Comments(0)

『クラバート:闇の魔法学校』 DVD感想

DVDが届きました!

早速見てみましたが、映像特典は何一つなし。せめて名画面集みたいな静止画像集でもあればと思うのですが、それすらナシです。
やる気ねえぇぇぇ…。(  ̄- ̄;)
DVDが出ただけでも感謝せねばならないところなのですが、「出ただけでもうれしい」というところが、悲しいです…。

かろうじて、日本語吹替がついています。
が、これも声優さんの名前がどこにも書いておらず、主演の声優さんすらノークレジットってこれってOKなんでしょうか。
再生したらクレジットがどこかで出るのかな? と思い見ていたのですが、とうとう最後まで出ず…。「ここに出てるよ~」という方、ありましたら教えてください。

原作をていねいになぞった作品だったおかげで、字幕ナシ・吹き替えナシで見たときの感想とあまり違いはありませんが、ちょっとした感想などをまとめてみました。
内容についての詳細な感想は、こちら(そのいち)こちら(そのに)をご覧下さい。

ネタバレにつき、もぐります。↓

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by n_umigame | 2010-07-03 16:35 | Krabat/クラバート | Trackback | Comments(0)

『クラバート』 映画DVD、『クラバート: 闇の魔法学校』日本でもついに発売!

★あの宮崎駿監督も敬愛する世界的ベストセラー・ファンタジー小説、待望の映画化!
★ヨーロッパ映画界が威信をかけて贈る超大作!本国ドイツでは動員110万人を超えるメガヒット!
★『愛を読むひと』のデヴィッド・クロス、『イングロリアス・バスターズ』のダニエル・ブリュールら、豪華イケメン・キャストたちが、謎の魔法学校に暮らす12人の少年を熱演!

≪STORY≫
三十年戦争によって、壊滅状態に陥った中央ヨーロッパ。14歳の少年クラバートも、この悲劇により、みなしごとなってしまった。ある日、どこからともなく囁きかける不思議な声に導かれ、はるか彼方の峡谷へと辿り着いたクラバート。月明かりに浮かぶ、薄暗い水車小屋の扉を開けると、そこには不気味で屈強な、“親方”と呼ばれる大男が待っていた。次の朝、この小屋に住み込みで働くことになったクラバートが目を覚ますと、周りには11人の少年たちがいた。彼らは皆、ここで働いている仲間だった。彼らに混じって、見習いとして働きはじめるクラバートだったが、やがて彼は、その水車小屋に隠された恐ろしい秘密に気付く。そこは黒魔術を習得するための魔法学校で、“親方”は密かに邪悪なる力と繋がっていたのだ・・・。 (Amazon.jp)



「うさぎの昼寝」の平敦子さまから教えていただき、初めて知りました!
平さん、ありがとうございます! おかげさまで昨日は午後から仕事が手につきませんでしたよ~(*⌒∇⌒*)テヘ♪(←それいつも)(だめじゃん)
平さんの記事はこちらからどうぞv

2008年の秋、ドイツ映画祭の際に『クラバート:謎の黒魔術』というタイトルで、東京で2日だけ公開された(しかも字幕も、もちろん吹き替えもなかった)、幻の作品のDVD化です。
見に行きたかったけど東京かよ!2日だけかよ!と断腸の思いであきらめたファンの皆さま、そして、わたくしのように見ることはできたけれども言葉のハンデで細かいところがさっぱりわかんねえよ!と号泣した皆さま、
カンパァーイ!( ^_^)/q□☆□p\(^_^ ) プロージッ!

あ、でも、見てから「なんじゃこりゃあああ!」って怒らないでネ?

発売予定日は2010年7月2日。

7月2日……。

ええっと、またまた修羅場を狙い撃ちで出すって出すってそれ、なんのいやがらせ!?。+゚(*ノ∀`*)。+゚. (うれし泣き) 

最近映像関係でうれしいことが立て続けに起きておりまして、お願い、幸せはちょこっと盛りでいいのよ!大盛りで出されるとあたし怖いのよ! という気持ちです。

肝心のブツのジャケットですが……うーん。なにそのいかにも「ひところ流行ったよねこういうファンタジー?っていうの?」的ジャケット。
親方が正面にいるからまあいいけどな!(えええ)
だけど、主人公のクラバート(正面真ん中の金髪の子です)、なんでこんなモアイみたいな顔(おーい!)で撮れちゃった写真をジャケットに使うんだろう。
しかもその右下にもさらにモアイ度の高いモアイさんが…(おーい!) これはユーローですね? ユーローファンに喧嘩売っとるんですかね。(それはあんたです)
ゲルマン系の方々ってどうしても骨格がごつごつしている人が多いので、うっかり照明さんが間違えると皆さん素でモアイさんになっちゃうので、気をつけてほしいなあ。

それと、宣伝文句になんでも「宮崎駿監督」を入れとけば? みたいな軽薄な売り方って、そろそろ見直してほしいです。

ものがものだけに(しかもドイツ映画なので)、日本でDVDが出ても5000円超えるかも、と思っていたので、今なら3000円以下で購入できるという点はありがたいです。

いずれにせよ、5月を乗り切ったら次は7月、それを乗り切ったら8月まで楽しみができたのは幸せなことであります!
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by n_umigame | 2010-05-05 16:12 | Krabat/クラバート | Trackback(1) | Comments(2)

(私信)PDF開けました

私信>平さま

PDFパンフレット、ありがとうござます。
無事開けました!
ここから遡ってHPに飛べるかやってみたのですが、それはできませんでした…(悲)。

でも、おかげさまでいい資料が手に入りました(笑)。
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by n_umigame | 2008-11-10 23:09 | Krabat/クラバート | Trackback | Comments(0)

『クラバート : 謎の黒魔術』(2008) 感想そのに。ダークサイド編

*引き続きネタバレです*

 ↓

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by n_umigame | 2008-11-10 23:06 | Krabat/クラバート | Trackback | Comments(2)

『クラバート : 謎の黒魔術』(2008) 感想そのいち。

O・プロイスラーによる世界的ベストセラー小説をCGを用いて映画化したファンタジー大作。17世紀、30年戦争のさなかに両親を失った14歳の少年クラバートは、長い放浪の末に、ある村の製粉所に受け入れられる。そこでは、同じような境遇の少年たちが生き生きと暮らしていた。しかし、実はそこは恐るべき黒魔術の学校であり、少年たちには「マイスター」への絶対服従が義務づけられていたのだった。自由になるには「マイスター」を倒すしかないことを知ったクラバートは、愛する少女カントルカとともに「マイスター」との魔法対決に挑む……。(ドイツ映画祭2008公式HPより)


@ドイツ映画祭2008 11月3日

以下、全面的にネタバレでまいります↓

かなり正直に語っておりますゆえ、一部の役者さんの熱烈なファンの方々には不愉快な思いをさせてしまうかもしれませんので、最初にあやまっておきます。ごめんなさい。

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by n_umigame | 2008-11-04 23:39 | Krabat/クラバート | Trackback | Comments(8)

『クラバート : 謎の黒魔術』(2008) サントラ/音楽

「ドイツ映画祭2008」で10月31日と11月3日の2回上映された、『クラバート : 謎の黒魔術』を観てまいりました。
わたくしが見たのは11月3日の方です。
遊びに東京に行ったのって久しぶりでそれだけでもけっこうわくわくしていたのですが、今回はごいっしょできたお仲間の方がいてくださり、しかも芋蔓式でお仲間が増え、おかげさまでたいへん楽しい1日となりました。
お世話になったみなさまがた、ほんとうにありがとうございましたv

さて、映画の感想の前に、まず音楽のお話から。
音楽がけっこうよかったので、サントラがほしいですねーというお話をしていて、どっかでサントラをすでに見たよーな気が…と調べなおしたところ、やはり出ていました。

Krabat [Soundtrack] (amazon.de)
 まだアマゾン・ドイツでしか取り扱いがないようですが、アマゾン・ドイツでお買い物される方はぜひ。
カスタマーの感想がえらく割れているのが気になるんですが……。


それから、映画のエンド・クレジットで流れたとってつけたような(…)音楽もCDが出ていました。
Polarkreis 18というバンドの"Allein Allein"という曲ということがわかったのですが、You Tubeでもビデオクリップが見られましたので見てみました。
Polarkreis 18 - Allein Allein (Official Video)

母語はドイツ語の方のバンドのようなのですが、歌詞を見るとほとんど英語でサビのところだけドイツ語とゆー…歌の感じとか、なんだか往年のa~haを思い出しました……。

歌詞はコチラで見られます。
Polarkreis 18 - Allein Allein lyrics

Alleinは英語のaloneという意味なのだそうです。
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by n_umigame | 2008-11-04 19:52 | Krabat/クラバート | Trackback | Comments(2)

『クラバート』 on ドイツ映画祭2008

日本公開が待たれる映画『クラバート』が、ドイツ映画祭で上映されることが決まったようです。

花岡十太さまから教えていただきました!
(重ね重ねありがとうございます、花岡さま!!)

詳細はコチラ!→ ドイツ映画祭2008

10月31日~11月3日の期間中、2回上映されるようです。
ゲストもいらっしゃるようですね。

それから、IMDbでも観た方からの評価が投票され始めています。
現在、43人、評価は10点満点で、レイティングの分布はこんな感じです。

うーん、みごとに割れている(笑)。
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by n_umigame | 2008-10-09 22:04 | Krabat/クラバート | Trackback | Comments(0)

『クラバート』の新しいポスター(?)

が、発表されたようです。

d0075857_2358437.gif


なんか、もう、えっと、いちおう主役はクラバート。ですね。ですね??
(右頬に傷がないなあ)

そしてやっとIMDbのキャストが、フルキャストそろい踏みになったようです。

David Kross ... Krabat
Daniel Brühl ... Tonda

Christian Redl ... Evil sorcerer (←この「悪い魔法使い」ってのやめていただけなくって? そうだけど。)
Robert Stadlober ... Lyschko
Paula Kalenberg ... Kantorka
Anna Thalbach ... Worschula
Hanno Koffler ... Juro
Charly Hübner ... Michal
Moritz Grove ... Merten
Tom Wlaschiha ... Hanzo
Sven Hönig ... Andrusch
Stefan Haschke ... Staschko
Tom Lass ... Kubo
Daniel Fripan ... Kito
Daniel Steiner ... Petar
David Fischbach ... Lobosch

ヴォルシュラ役の役者さんは今年で25歳なのですが、そっか、そんなイメージなのか、ドイツでは。
勝手にもっと若いイメージでした。

公開日はドイツが2008年10月9日、オーストリアが10月10日。
さー日本はいつだいつだ!!
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by n_umigame | 2008-08-21 23:59 | Krabat/クラバート | Trackback | Comments(4)

映画『クラバート』のスチール画像

女性をターゲットにした新進(?)のSNSなのだそうですが、teamsugarとかいうサイトに映画『クラバート』のスチールがいろいろ貼ってありました。

コチラ。
見やすいですね。

んー、これはユーローなんだとしたら、けっこう自分のイメージに近いんだけどな、という絵もありますが、ちがうかな…?

そして、やっぱり主演はダニエル・ブリュールなのかというか、女子のターゲットはやっぱりそこなのかという感じの絵も。
んもー、だめじゃん、もっと親方出さなきゃ!(それも違う)

うーん、この親方は本当にステキだーvv

こうして見るとクラバートの右頬に傷がありますね。
何かありましたっけ??

teamsugarについて詳しいのはコチラ。
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by n_umigame | 2008-07-29 23:18 | Krabat/クラバート | Trackback | Comments(2)

Welcome. 本と好きなものがたり。


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