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『玄奘西域記』(全4巻) 諏訪緑著(PFコミックス) 小学館

先日「うしとら」を一気読みしたあとで、やはり読み返したくなって押入の奥からごそごそ引っぱり出してきて読みました。
これも最初は友人に貸してもらって、「ううう、絵がなー」「うううくっさいなー」と、まったく「うしとら」と同じ感想を抱きつつ読んでいたのですが、最後まで読んで「これは傑作じゃあー!!」と感涙にむせびました。
読み返すのは何度目かわかりませんが、いつも何度読んでも文字通り目に涙があふれそうになるシーンは同じ、だいたい盛り上がるシーンではなく、登場人物が何かを淡々と語るシーンが胸に迫るのでございます。

物語は『西遊記』でおなじみの玄奘三蔵が天竺に経典を取りに行く、という、これだけ聞いていると『西遊記』とまったく同じあらすじなのですが、妖怪は出ません。
あえて言えば、まだまだ青臭い玄奘が旅を通じて成長してゆくビルドゥングス・ロマンであると言えます。
今から十年以上前の作品ですが、描かれていることは今でも(今こそ?)十分通用する、古さを感じさせないテーマとなっております。

「心の不安を解消する手だてを考えず
拠(よりどころ)を取り上げては
人の心は宙に迷ってしまいましょう
迷った心のままで生産性は向上するのでしょうか

物質的な生活が向上していながら
宗教が盛んというのは
この国の人びとの心の不安も
高まっているからではありますまいか?」

「必要ではない…
……そう言うたら
人の心から宗教を拭い去ることができると思うか?
〔中略〕

……人の心は弱い…

いつも揺れ動いておる
貧しさに
争いに
愛憎に
生きることの迷いに

必要ではないと言うたところで
人の心は拠を求めてしまうものなのではないか
それが宗教にでなくとも
国にでも
配偶者にでも
理想にでも
偶像にでも
なんにでも…

信仰する心が宗教を生むのではないか…」

「尊いのは経典ではない
そこに書かれている言葉が尊いのでもない

言葉が伝えようとしているもの…

それが尊いのではないか」

「縁とはな
物事が決して一つでは成り立っておらんことを言う

物事は必ず他との相関関係で成立しておる

網の目のように人と人は関係しあい影響しあって
自分という目ができておるのじゃ」

著者の「宗教とは何か」という宗教観に貫かれた作品でありますが決して抹香臭かったり説教臭かったりはしませんし、玄奘と、突厥の族長の息子ハザクとの友情も伴走となって、すがすがしい読後感を味わえます。

このマンガ家さんはこのあと『うつほ草子』という作品を描かれているのですが、こちらの『玄奘西域記』の方がオススメです。
今文庫本になっているようですので、よろしければぜひに。
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by n_umigame | 2008-01-27 23:47 | コミックス | Trackback | Comments(2)

『無限がいっぱい』 ロバート・シェクリイ著/宇野利泰訳(異色作家短篇集9) 早川書房

『人間の手がまだ触れない』を読んだあと、この作家さんは読むぜ! と思っていたところなかなか手に入らず、ネット書店でも手に入らないときはここだ。と決めている『慧眼のオヤジ書店2号店』で手に入れました。(この書店はどういうわけだかアマゾンなどで品切れの場合や、すでに品切れ、あるいは絶版として出版社でアナウンスされている本がふつうに置いてあって、重宝しております。しかも書店員さん(あるいは店長さん?)のシュミとしか思えないような、いわゆるジャンル小説などのけっこうコアな本が…。 …え? どこの本屋さんかって? おーしーえーなーいv)

さて、この作品集も『監視鳥』や『倍額保険』など、元祖筒井康隆(?)節大爆発なブラックでシュールな作品ももちろん健在でしたが、『先住民問題』や『暁の侵略者』など批判とアイロニーに満ちた作品もおもしろかったです。

こういうところはアメリカの人のいいところだなあと思うのですが、例えば日本で今の「日本という国」の原型ができる過程を皮肉ったような作品を笑いを込めてこんなふうに描けるかというと、むずかしいのだろうなと思います。
それを書く作家はいろいろとタブーを破らねばならない上、冗談抜きで命を狙われる可能性も覚悟せねばならないでしょうから。
それがいまだタブーであるところがおかしいようにも思うのですが、民主主義国家である以上、本来言論と表現の自由とはこういうところで発揮されるべきだろうと言いますか、本物の勇気を伴わない言論と表現の自由にあぐらをかいていると言いますか、あまりにも「言論と表現の自由」をはき違えている人が多い(あるいは悪目立ちする)ように思います。
ハリウッド映画を見ていると、よくもまあこんな作品を恥ずかしげもなく外国に輸出するなと思うような、「時の政府に乗せられてますよ寄らば大樹のかげっすよHAHAHAHA!」という映画が興行的に大ヒットしたりしていますが、その半面、きちんとカウンターバランスのような作品、「ごめん、うち、今ちょっとおかしいと思うよね?」という作品も制作されています。(日本にあんまり来ないみたいだけど。)

『乗船拒否』とかなかなか現代でもホットな作品ではないかと思いました。
エラリイ・クイーンの『ローマ帽子の謎』を読んだときも「うっへー、なんちゅうとほほな感覚じゃあ」と思いましたが、「白人以外の血が1滴でも混じっていたらnot白人」という感覚は、人類の歴史をさかのぼって冷静に考えたらおかしいってすぐわかると思うんですけれどもね。

いろいろとドキドキさせられるかの国の人の感性や概念を、ブラック無糖で笑い飛ばす珠玉の短篇集でございました。
個人的に『人間の手がまだ触れない』の方が読みやすかったような気がしますが、よろしければこの作品集の中の「ひる」「先住民問題」「乗船拒否」だけでも読んでみてくださいませ。
「ニヤリ」とさせられること請け合いです。

しかし、日本にもこのような他国の人に「ニヤリ」とされているようなこと、いっぱいあると思うのですが、いかんせん作品がねえ。ないというのはどうなんでしょうねえ。
「外国から見た日本人像」のようなものばかり気にしてないで、自分の国(の歴史)をこんなふうに自分たちで笑い飛ばせる作品をエンタメでさくっと書いてみせてくれる作家さんが出ない時点で(いらっしゃったらすみません)、なんだかいろいろと遅れをとっているように思います。
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by n_umigame | 2008-01-27 18:03 | | Trackback | Comments(0)

『聖☆おにいさん』 1 中村光著 (モーニングKC) 講談社

ブッダとイエスは世紀末も無事に(?)乗り切り(?)下界にやってきて休暇でアパートをシェアして暮らしていました…なぜか東京の立川で。

というマンガ。
オノ・ナツメさんの『Danza』の広告ページで見たのが最初だったと思いますが、「あはは、なんじゃそりゃー」と思いつつ、先日地元の「慧眼のオヤジ書店」に平積みにされていたのを見て、つい、読んでみました。

ネタバレ注意↓

このマンガ家さんの作品を読むのは初めてなのですが、うーーーん、いい味出しやがっていらっしゃいますですね!!(やめなさいその変な日本語)

下手をすれば設定倒れになりそうな、ある意味デンジャラスなネタで、ムハンマドを避けたのはせめて正解だったと思いますが(笑)(いや笑い事じゃ…)、下ネタにも走らず、ブラックにもならず、これだけほんわかとしたいい味のコメディが描けるというのは、すばらしいです。
(いや、イエスが極道の二代目に勘違いされるというのは、ある意味、すんごい鋭いかも……?)

やたら動物になつかれる2人に大笑いしつつ(ネコのシーンが最高)(「これ涅槃とかじゃないから」もいいけど)、コメディなんだけれども、これはかなりブッダとイエス(とそれぞれのエピソード)について詳細な知識がないと、ここまでこなれて描けないと思いますので、それもすごいなあと思いつつ読んでおりました。

例えば、ブッダの、スジャータさん(人名)のエピソードとか、わたし、スジャータ(コーヒークリームの商品名)の袋の裏だったかに書いてあった商品名の謂われを読んで初めて知ったトリビア(トリビア言うな)でしたし、イエスの「三度わたしを知らないと言う」ネタ(ネタ言うな)とか、一般的によく知られているエピソードとはあまり思えないのに、これだけネタとしてさらっと出せるというのは、知識が血肉になっていないとなかなかこうは描けないと思いますよ。
ヨハネの洗礼と水の上を歩いたというエピソードを「イエスがかなづち」で結びつけたりとかですね、すごいですよ(笑)。

やっぱりメジャーなネタの方が笑えますけれどもね、「わしゃあ網走じゃあ、兄ちゃんは」「ゴルゴダです」とか(大笑)。

……いやいや、こんなに笑っていたら仏罰、ならびに神のいかづちに撃たれるわ(笑)、と思う半面、いやいや、ニッポンには八百万の神サマがいらっしゃるから、なんならこのマンガみたいに諭してくれはるわ、と、心強いことでもありました。

わたくしのブッダの人生基礎知識は「ええとこのぼんぼんとして生まれる→妻子(しかも子ども生まれたて)を捨てる→解脱→涅槃」、イエスの方は「30近くまでフリーター&パラサイトシングル→新興宗教に目覚める→痛い目に遭う→未婚のまま昇天(そして復活)」というものでしたが、そのようなイメージは露も感じられず、ブッダとイエスがたいへん可愛いので、2巻以降もとても楽しみです。

光瀬龍さん原作で萩尾望都さんマンガ化の『百億の昼と千億の夜』に次ぐ、「開祖オンパレードマンガの傑作」となるかどうか、見守りたいと思います。
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by n_umigame | 2008-01-27 01:58 | コミックス | Trackback | Comments(0)

無口なウサギ オープン・ブログ

"Untalkative Bunny Neighbourhoods"

ものすっごいお久しぶり! の「無口なウサギ」の記事でございます。

最近ちっとも新しいネタがないようしくしくしく……と泣いておりましたら、いつのまに…!
"Untalkative Bunny Unofficial Site"の新コンテンツとして、ファンの交流ブログが新設されておりました!

今のところ「始まるよ~」というお知らせと、「You Tube」で「無口なウサギ」の動画が見られるよ~というネタ(ネタて)しかアップされておりませんが、今後にぎやかになっていくといいなあ。

まだ海外にもファンの人がいるんだ、と思うと、それだけでもうれしかったです!
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by n_umigame | 2008-01-27 00:49 | 無口なウサギ/UB | Trackback | Comments(4)

web拍手御礼申し上げます!

毎日ぽちぽちとありがとうございます!

このところ客層が少し変わったのかな? と思うことがあるのですが、客層が変わっても当ブログはデフォルトが「バカ」で設定されております。
(ちなみにこの「バカ」は「ん、もう、バカなんだからv」の「バカ」ですからー)

うっかり流れ着いてしまわれた方、見なかったことにして去るのも手ではございますが(大泣)、これも何かの縁とおつきあい下されるとうれしゅうございます!v

(スパムコメつける輩はおととい来ーい!! 岩塩直球でデッドボールで投げてくれるわむきー!)

まったりマイペースのバカ文ブログですが、愛想をつかされないよう今後も精進していきたいと存じます。

読んだ本がたまっております・・・。
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by n_umigame | 2008-01-21 22:27 | web拍手 | Trackback | Comments(0)

エドワード・D・ホック逝去

2008年1月17日にエドワード・D・ホックさんが亡くなったそうです。

東京創元社の「お知らせ」ページより。

享年77才。
…まだ若いですよ。

先日も書いたように思いますが、今70代くらいの方って、いろいろあやういお年頃なのかもしれないですね。

エラリー・クイーン名義で書いた『青の殺人』や、怪盗ニックやサム・ホーソーンなどが有名だと思いますが、作品は実はあまりたくさん読んだことがありません。
それでもまじめで端正な謎解き短篇を書く作家さんというイメージで、今時得難い作家さんだと思っておりましただけに、残念です。

ご冥福をお祈りいたします。
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by n_umigame | 2008-01-20 18:57 | ミステリ | Trackback | Comments(0)

リンク追加

今夜もeat it」 さん リンクを貼らせていただきました。

「それいけめんたいこちゃん」の写真家さんのメインブログ。

兄弟ブログとして「さつえいだ! チャーリー!」(こちらもリンクさせていただきました)もあります。

うーんかわいい。

夜の暗ささえもあたたかい、写真を撮られる方だなあ…とほんわかと拝見しています。
手作りのケーキやクッキー、紅茶がすっごくおいしそうです。紅茶スキーさんもれっつごー。です。
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by n_umigame | 2008-01-20 17:31 | 日々。 | Trackback | Comments(2)

コメント受付再開

コメントの受付を再開いたします。

どきどき。

スパム・コメントは見つけ次第受付拒否&削除を行っておりますが、2月以降ばたばたしそうなので、なかなかPCを立ち上げているヒマがないかと予想されます。
目障り・不愉快な商用コメントがついていても無視してくださることを推奨いたします。

なお、特にアダルト系とおぼしきコメントにはくれぐれもご注意下さい。
エキサイト・ブログのスパム・コメント対策に四苦八苦しておられるブログなどを拝見していると、クリックしただけでお金を請求してくるような悪質なサイトにつながることもあるようです。
もちろんそんなものにびた一文支払う必要はありませんが、とにかくさわらない、というのがよろしいかと思います。

当ブログにお越し下さる方々は皆さま大人ばかりだと思われますので、きっと大丈夫と思いますが、不用意にうさんくさいリンクを踏まないようご注意ください。
わかっててやっちまった方、あるいは好きでやっちまった方は、そのあとのことは自己責任でお願いいたします。当ブログは責任を負いかねます。

万一、未成年の人がいらっしゃったら、社会的に自分で責任がとれるトシになるまで待つように。
イヤでもトシは食うのよ。つまんないことで親に面倒かけないようにしましょうね。くやしいじゃないですか。
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by n_umigame | 2008-01-20 16:08 | 日々。 | Trackback | Comments(0)

逆縁の仏

何だかいいことばかもしれないと思いました。
「かもしれない」というのは、ソースがわからないので本当にこういう言葉があるのかどうか不明なためです。

「ほとけ」と言うからには仏教なのかしら。

『うしおととら』を読み終わったあとに、『玄奘西域記』も読み直したくなりました。
(仏教つながり…? うしとらはエセ仏教だけれども(笑))

ところで、うしとら読み直して改めて思ったのですが、なぜ日本だけ仏教の僧侶の妻帯が許されているのでしょうか…?
え、が、学校で教わっただろうって?
アタシ、宗派と宗祖の名前を覚えるの、苦手でしたー。てへ。(別の言い方:興味ありませんでした。)(興味なくても学校の勉強はしておくもんなの!)(はい、反省しています)(今からでも間に合う皆さん、ファイトっ!)
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by n_umigame | 2008-01-17 23:15 | 日々。 | Trackback | Comments(0)

「好きなタイプの男性は?」

本日はおなじみの日帰り出張でした★

長距離バスの座席ネットの中に出張先のタウン情報誌が入っていたのでぱらぱらと見ていたら、「地元の看板娘☆」みたいなコーナーがあり、娘さんたち(17才から25才くらい)に「好きなタイプの男性は?」という質問にひとことづつ答えてもらっていました。

おもしろくて優しい人、やさしくて頼りになる人、無口な人、いっしょにいて落ち着く人、いつも笑わせてくれる人、などなど。

逆に表現してみると「薄情でちっともおもしろくない人」「冷酷でたよりない人」「立て板に水みたいに始終べらべらしゃべる人」「いっしょにいると落ち着かない人」「いつもムカつかせる人」はみなさんヤダ、とおっしゃっているわけで、男としてどうかという以前に人としてどうかという人は困ります、ということでございます。

ごくふつうの感覚であるなあ、いつの世も女子の理想の男性像は変わらぬものよ、うんうん、とほほえんでおりましたら、一人、逸材がおりました。

「好きなタイプの男性は?」
「ツンデレ。」(17才)

………………。
………………。

…いやいや、お嬢さん。
ぶっきらぼうでも根はやさしい男に多いタイプであるということはわからんでもないですが、言うにことかいて「ツンデレ」てあんた。
てゆうか、ふつうの女子高生が「ツンデレ」て言いますか?

キミの行く道に幸あれ……!
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by n_umigame | 2008-01-16 22:49 | 日々。 | Trackback | Comments(0)

Welcome. 本と好きなものがたり。


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