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『Zの悲劇』エラリー・クイーン著/越前敏弥訳(角川文庫)角川書店

黒い噂のある上院議員が刺殺され、刑務所を出所したばかりの男に死刑判決が下されるが、彼は無実を訴える。サム元警視の娘で鋭い推理の冴えを見せるペイシェンスとレーンは、真犯人をあげ彼を救うことができるのか? (Amazon.jp)


改めて、翻訳小説において翻訳者は大事だということを噛みしめた1冊となりました。翻訳の良さはむしろ作品のレベルが残念なときにこそ、よりそのありがたさがわかりますね!(おい)

初読の際は、ペイシェンスもさることながら、その求婚者の青年・ジェレミーにいらいらして話の筋が頭に入らないほどうっとおしかったものでした。
今回読んでもその印象は変わらなかったのですが(笑)、ああ~どっかで見たと思ったら、このジェレミーはあれだ、『マイ・フェア・レディ』のときのジェレミー・ブレット(オードリー・ヘップバーンにモーレツ★アタックする青年の役)です。そんなことを連想するくらいの余裕はありました。
奇しくもどちらもジェレミーです。『マイ・フェア・レディ』を見たときはクレジットで「ええ、あのシャーロック・ホームズの人!!?」と我が目を疑いましたが、ルックスはいいのに中身のアホがだだ漏れというか、おバカさんの見本というか、とにかく残念な感じの、あんな感じです。

『Z』は1933年の作品なので、ロマコメにはこの手のアホ男がデフォルトだったのかもしれませんが、エラリー・クイーンがロマコメを書きたかったのかと問われると、そうだったのかもしれません。(おおおおい!!)

『X』『Y』が傑作の名高く、その次が『Z』だったので、そのギャップで「ええー」と思われた向きも多かろうと思うのですが、ミステリとしてもやはり地味で無理があると言わざるをえません。
利き手、利き足の推理も、そういう傾向があるといういわば蓋然性の問題で、いかなる状況、いかなる人間も100%そうであるという根拠にはなりません。
これを論拠にしようと思ったら、少なくとも事件関係者全員の利き手利き足を調べるくらいはやらなければ、「レーンたちが犯人であって欲しくない人」だけを選んで条件潰しをしたところでご都合主義だと言われても仕方がないのでは?と思ってしまいました。
やけにリアルな電気椅子による死刑の描写は圧倒されます。これもミステリのコマとして使われているところは見事だと思いますが、同じクイーンの作品で中編の『キャロル事件』のほうがドラマとしての余韻を残します。(新潮文庫版で訳者の方はこのシーンを「社会見学」と書いてらっしゃいますが、言い得て妙です)
自分たちが奔走して死刑から救い出したエアロン・ダウについて「社会にとって必要のない人間だ」と、さらっと述べるペイシェンスもどうなのと思いました。結局、ダウはあんたにとって推理の正しさを立証するための駒でしかなかったのか、人一人の命をなんだと思っとんのかと。
このペイシェンスの冷酷さがだめ押しでした。

最後の消去法による犯人の断定の部分も、推理そのものはゲームと考えればおもしろいです。クイーンが大好きで得意な部分ですが、今ひとつカタルシスがありませんでした。
理由はやはり、物語の語り手が冷酷で共感できないため、主人公側の推理が立証されても心から「やったね!よかったね!」と素直に思うことができないからでしょう。
ほかに、女性探偵ペイシェンスの登場や、死刑になるまでに謎を解かなければならないというタイムリミット・サスペンスなど、先駆け的な設定を盛り込みながら、もっともっとおもしろくなっただろうにと残念です。

やはり、『Z』から(わけあって)ペイシェンスの一人称の語りに変更になったというのに、このヒロインの設定ひとつ取ってもキャラクターが不自然で、おまけに魅力がないというのが致命的だったのではないかと思われます。
ゲームがしたければゲームをします。
ミステリを読むのはミステリという”小説”が読みたいからです。
頭が良くてスタイルバツグンの美女であれば小説のキャラクターとして魅力があるというわけではありません。これはもちろん男性キャラにも言えます。頭が良くて美男であれば人をして惹きつける力があるかというと、そんなことはありません。
ペイシェンスを「女装したエラリー・クイーン」と表した方がありますが、これはクイーンの若いキャラクターの人物造型のまずさを如実に言い得た言葉だと、深く頷いた覚えがあります。
ペイシェンスが男性から見ても「女性ですらない」ということであると同時に、ペイシェンスから透けて見えるいろいろな問題点がエラリーを想起するということですから。
年配のキャラクターは良い感じのキャラが男女ともたくさん出てくるんですけれどもねえ。クイーン警視とか。クイーン警視とか。あと、クイーン警視とか。(もうだまれ)

ペイシェンスが不自然なのは、その登場の仕方が一番不自然なのですが、これはまあプロット上の必然ということで。
しかし今まで登場しなかった理由というのが、ヨーロッパに遊学していたからということになっています。
20世紀初頭のことですので、良家の子女がフィニッシング・スクールに行くならわかりますが、ごくふつうの公務員であるサム警視の娘であるペイシェンスが専任の家庭教師らしき女性を付けて、何年もヨーロッパを遊学できるというのが不思議です。

父親のサム警視から「レディらしくないぞ」といろいろとその言動をたしなめられるたびに、自分をヴィクトリア時代に閉じこめておきたいのだとかなんとか不平を述べるのですが、大勢の人前で(しかも話をしている途中で)「唇をすぼめて紅を差す。」とかどこのはすっぱだ。マナー以前に会議中にそれはないだろ。
選挙権や産児制限についてはペイシェンスの意見に賛同しますが、ちょっとセクハラされたら悪夢を見るような繊細というかうぶというかなのに、サム警視でなくても「生意気言うな」と思っちゃいますよ。
かく言うサムも娘にセクハラしております。親子関係がまだ浅いということが読者にわかっているので、やりすぎ感が否めず「セクハラだ」と感じてしまうのでしょう。(それに娘が若い男に両足首をつかまれているのを見ても何も言わない父親なんているのか?)
クイーンさんが、いったい、ペイシェンスをモダンで自立的な女性として描きたかったのか、それとも口ばっかり達者で頭でっかちなお嬢ちゃんを描きたかったのか、わからないのですよ。

母親も生きているのかどうかも不明です。
最初の自己紹介が全部ペイシェンスの妄想というならわかるのですが。(えええ)
幼い頃に両親が離婚したことから精神的に不安定になって長期入院していたのだが、面倒をみてくれていた母親が死んだので最終的に父親がいやいや引き取った、というほうがよほどアメリカにありそうな話だし。(えええ)

悲劇シリーズの探偵であるドルリー・レーンがそもそもかなりやばい人ですから、「すいません、全部パラノイア日記でした」って言われたら、信じますね。(信じるな。)
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by n_umigame | 2011-04-26 21:17 | *ellery queen* | Trackback | Comments(0)

名探偵MONK シーズン1 DVD-BOX、発売!



エミー賞過去8 部門受賞!全米を熱狂させた本格推理サスペンス・シリーズ!

★アメリカのTVドラマの歴史を変えたメガヒット作品
★エミー賞、ゴルデン・グローブ賞他、全米ドラマアワードを総なめ!ノミネートは数え切れず!
★日本のおいても人気・認知度は抜群!

【DVD4枚組/12話収録】
◆『名探偵MONK シーズン2 DVD-BOX』は8月24日発売!

【ストーリー】
ある事件をきっかけに恐怖症、過敏症、潔癖症などが併発し、市警を休職したモンクは現在リハビリの身。カウンセラーのアドバイスにしたがい、刑事への復職をめざして私設看護師シャローナと共に犯罪コンサルタントとして活躍していた。でも高いところは苦手!ばい菌をうつされそうで握手できない!地震に遭うと宇宙語を喋り始める!など様々な奇行が繰り返されモンクはなかなかフツーに捜査できない。元上司のリーランド警部はそんなモンクを煙たがっているが、迷宮入りと思われる何事件を次々と解決する天才的な推理力に頼らざるをえない。捜査の過程で仲間達をア然・ボー然とさせながら、モンクは数々の難事件に立ち向かっていく。(Amazon.jp)


待ったよ待ったよ待ちましたよ!!
ファイナルシーズンの放送も終了してしまってけっこう経つし、もうあきらめかけていたところ、ウレシイお知らせでした。

このあと、シーズン2,3まではすでにあまぞんさんで予約できますよ!

いっや~本当にめでたい。

実はずっとNHKで見ていたので、AXNミステリーで始まったときは「…ふっ、今さら? あたくし、そんなの、みんな見ててよ?」と鼻で笑っていました。
ところがNHKでは大人の事情で放送できなかった回があり、AXNミステリーでは放送されたとあとで知って、「うわああああ鼻で笑ったからバチ当たったー!!ごめんなさいー!ごめんなさいー!」と光速で心から謝っもんです。
その祈りが天に通じたんですネー!!!(どこまでもおまえってやつは)

何はともあれ、これで全話見られるというものです。

あの素敵な吹き替えも堪能できるようだし、もちろん字幕でも見られるし、映像特典もついてて今ならこのおねだんですよ~。

とろこで、ケネス・ブラナー主演の『刑事ヴァランダー シーズン1 DVD-BOX 』も出るんですね?
これって英語ですよね?
イギリスのドラマ情報でよく拝見しているブログマスターさまが絶賛されていたので興味があるのですが、邦訳済みの原作ではちょっとしか出てこないヴァランダーの娘との「親子探偵」みたいになっているらしいというのと、ご存じのとおり、あたくし、ケネス・ブラナーがちょっと苦手でして…。
「いや、万難を排してでも、見ろ!! なぜなら!!」という方は、どうぞ教えてくださいまし。
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by n_umigame | 2011-04-25 22:19 | 映画・海外ドラマ | Trackback | Comments(2)

『ジェットコースターにもほどがある』宮田珠己著(集英社文庫)集英社

世界中のジェットコースター、乗りまくり!
本場・アメリカに赴いて朝から晩まで乗りまくった旅行記など、臨場感満点の写真と脱力系の図解イラストを交えて繰り広げる最高に爽快な暴走エッセイ。巻末には同志達との熱い座談会を収録! (出版社HP)


著者のタマキングこと宮田珠己さんとは好きなものが二つかぶっていて、一つはウミウシ。もう一つがジェットコースターです。
乗りも乗ったり、世界中のジェットコースターを乗りたおした記録エッセイです。

楽しいですよね、ジェットコースター。
まー動力がなくて慣性の法則で走ってるだけの乗り物なので怖くないと言えば嘘になりますが、逆に言うと動力で走ってる乗り物は動力がやられるとアウトなわけで。
また最近は日本では人が亡くなるような事故がわりと続いたので、メンテナンスの行き届いていないかもしれないものに乗るのは怖いのですが、宮田さんいわく、メンテナンスが行き届いているジェットコースターは変な揺れがなくて、ハーネスがガツガツ顔や首に当たるといったこともなく、乗り心地が良い絶叫マシンなんだそうです。

個人的にフリーフォールは姫路セントラルパークのに乗っただけで、もうおなかいっぱい、あと三半規管が弱いのでフライングカーペット的なやつは勘弁な。なのですが。

ジェットコースター好き、あるいは人がおバカさん★なことをやっているのを見るのが大好きな方には、おすすめのエッセイであります。
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by n_umigame | 2011-04-18 19:12 | | Trackback | Comments(0)

『イノセント・ガールズ : 20人の最低で最高の人生』山崎まどか著(アスペクト)

こんなとてつもない人生がごろごろしてるなんて
……アメリカ、おそろしい子!
翻訳家・岸本佐知子さん、推薦!

廃屋の中で発見された、ジャクリーン・ケネディの従姉妹、死ぬまで男性を装い続けたジャズミュージシャン、『ティファニーで朝食を』の主人公のモデルとなった孤高のエッセイスト……etc.

20世紀のアメリカを中心に、時代の波や人間関係に翻弄されつつも、「人並みの幸福以上の何か」を追い求め、数奇な人生を送った20人の女性の生涯を紹介する評伝エッセイ。ときには孤独にさいなまれながらも、独自の生き方を貫いていく女性たちの姿から、生きるヒントと、大いなる勇気を得られる一冊です。(Amazon.jp)


岸本佐和子さんの帯につられて読んでみたのですが……アメリカ、おそろしい子!!

あまりにも悲劇が深いと、かえってありふれた、陳腐なことしか言えなくなってしまうものですが「事実は小説より奇なり」という言葉しか出てきません。

ここで語られるのは全員女性です。
本人にはどうしようもないこと(例えば女に生まれたこと)に起因することから、そらーアナタ自分も悪いよ、と思ってしまうことまで、ありとあらゆるパターンがてんこもりです。

とはいうものの、著者の方の前書きにもあるように、一見、他人事のように見えるとんでもない人生の中に、そこはかとなく自分を映す”鏡”になっている部分があるからこそ、読んでいて目をそらせないような何とも言えない吸引力があるのかなと思いました。
正直なところあんまりありがたくない吸引力なのですが、例えば母親との関係などは同性として「ああー、なんかわかるわー、わかりたくないんだけども」というような身につまされる部分もあります。(笑)

上の紹介文のように「大いなる勇気が得られる」かどうかは疑問で、「ごめん、しばらく見たくもない」となる可能性も大ですが(笑)。
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by n_umigame | 2011-04-18 19:09 | | Trackback | Comments(0)

『ウサビッチ』 シーズン4/42話 「合体マシン」

いきなり…!!!ヽ(´▽`)ノ

以下、ネタバレです!

More
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by n_umigame | 2011-04-17 20:35 | ウサビッチ/Usavich | Trackback | Comments(2)

『銀河ヒッチハイク・ガイド』の続編邦訳、5月に刊行

ダグラス・アダムズの死後、オーエン・コルファーによって書かれたH2G2こと『銀河ヒッチハイク・ガイド』の続編。シリーズのカウントで言うと6作目に当たります。

刊行予定は以下の通り。(河出書房新HPより)

河出文庫 『新 銀河ヒッチハイク・ガイド』上下
オーエン・コルファー 著
安原 和見 訳

まさかの……いや、待望の公式続篇ついに登場! またもや破壊される寸前の地球に投げ出されたアーサー、フォードらの目の前に、あの男が現れて――。世界中が待っていた、伝説のSFコメディ最終作。


オーエン・コルファー (コルファー,E)   
1965年、アイルライド生まれ。累計1800万部の世界的ベストセラーとなった〈アルテミス・ファウル〉シリーズでの人気と実績が買われ、〈銀河ヒッチハイク・ガイド〉シリーズ公式続篇の執筆者に抜擢される。

安原 和見 (ヤスハラ カズミ)   
鹿児島県生まれ。主な訳書に、アダムス〈銀河ヒッチハイク・ガイド〉シリーズ、ネイラー『宇宙船レッド・ドワーフ号』、オースティン&グレアム=スミス『高慢と偏見とゾンビ』など。


本国イギリス、Amazon.ukでのレビューは以下の通り。

"And Another Thing ...: Douglas Adams' Hitchhiker's Guide to the Galaxy: Part Six of Three (Hitchhikers Guide 6)"

元々ダグラス・アダムズによる、結果的に遺作となった第5作目のオチがあんまりだってんで書かれた第6作目だそうですが、マニアックで長年のファンが多い作品ですから、まあ、予想通りのレビュー配分という感じでしょうか。
きっとつまらないんだろうなあ…。
でもきっと買って読みます。
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by n_umigame | 2011-04-15 14:51 | | Trackback | Comments(0)

『おべんとうの時間』阿部了 写真, 阿部直美 文(木楽舎)

全日空機内誌『翼の王国』の人気No.1エッセイ、待望の書籍化!

本書はお弁当のレシピ本ではありません。阿部夫婦(夫・カメラマン/妻・ライター)が全国各地の手作り弁当を二人三脚で取材したフォトエッセイ集。
海女、釣り堀経営、素麺職人、高校生、猿まわし、営業マン、大学教授……市井の人たちが照れながら見せてくれた手作りのお弁当。 食べながら語られるのは、仕事のこと、家族のこと、こどもの頃のこと…。そこには、お弁当の数だけ絆の物語がありました。
本書を読むと、子供のころのお弁当が懐かしく思い出され、また、手作り弁当を味わいたくなる、そんなあたたかな一冊です。 (Amazon.jp)



『トラウマ映画館』があまりに怖かったので、お口直しに目も心もあたたまり、健康的におなかが空く本を。(笑)

ここ数年のお弁当ブームともあいまって、見ているだけで楽しいお弁当の本がたくさん出版されるようになりました。自分も去年から数年ぶりにお弁当生活に戻り、そんな本をいろいろと楽しませていただいております。

しかし、人様のお弁当を見るのって、なんでこんなに楽しいんでしょうね。

オールカラーの写真で、手作り弁当の持ち主さん、お弁当の写真、+αの3ページと、+1ページに文章、という一人4ページで構成されています。
ふつうの言葉で、ときに方言混じりで語られる言葉が書き起こされているのですが、そこから人々の暮らし、仕事、家族のことなどが、読んでいるだけで目の前に見えるようで、この文章もとてもいいです。人間は良い意味でみんな一人一人なのだということが伝わってきます。(別の言い方だと「オンリー・ワン」なのですが、この言い方あまり好きじゃないので)

紹介されるお弁当は、カリスマ主婦が作ったようなきれいなものばかりではないし、高級な食材が入っているわけでもない。大きなおにぎり一個だけだったり、お弁当箱に入ってすらいないものだったりするのですが、その人それぞれの理由も、お人柄が見えるようだったりして、小さな(けれどある意味大きな)物語になっています。
食べ物に対してももちろん、食べることに対しても真摯なことが、この人たちのお弁当からは伺えます。食事が人間を、ひいてはその人間が生きる人生を作っていると考えると、本当に食べることというのは大事なことだと思っています。

一つ一つを丁寧に読んでお弁当の写真を見ていると、なんとなく自分も力をもらったような気になります。自分も明日もがんばらなくちゃと。
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by n_umigame | 2011-04-15 14:32 | | Trackback | Comments(0)

『トラウマ映画館』町田智浩著(集英社)

映画はときどき、来るべき人生の予行演習だ
『傷だらけのアイドル』『早春』『マンディンゴ』『裸のジャングル』『わが青春のマリアンヌ』『かもめの城』『眼には眼を』など全25本。貴方の記憶の奥に沈む、忘れたいのに、忘れられない映画がある。 (出版社HP)


TwitterのTLに流れているのを見て、おもしろそうだなあと本屋さんを当たったのですが、けっこうどこも品切れでした。2月に出版されたばかりなのですが、重版が決まったようです。
映画のレビュー集です。
そしてこの著書で語られる映画を、幸いにして(とあえて言わせていただきます)一本も観たことがないにも関わらず、批評に上がった映画作品が著者のレビューを通して、今度は読者がトラウマになるという恐るべき構造の本です。

怖くて怖くて、読むのをやめられませんでした。
見てはいけない、見たらそのおぞましさに忘れられない記憶になるから見ないほうがいいとわかっている、わかっているんだけれども目をそらすことができない、というような感じです。

ホラーとコメディは、好きな人がある程度かぶっているように思うのですが(あくまで個人的な印象ですのであしからず。)珍獣みたいな犯人が次々と猟奇的な殺人事件をおこすといった映画は、それがフィクションの表現になった時点で、冷静に考えればギャグみたいなものです。
映画の中で殺されていく人は、例え生身の俳優が演じていても<記号>で、リセットボタンを押せば生き返るゲーム的な「設定」でしかありません。
また、それらは自分とは一線が引かれていて、あの狂気は自分とは関係がない、という一種の安心感に保障されているからこそ見ていられるのだと思います。

ところがこの著書で紹介されている映画は、人間が普遍的に抱えている負の部分が、さらけだされたりにじみ出たりしている作品です。
NYタイムズ紙が『マンディンゴ』について「『マンディンゴ』も猟奇犯罪映画だ。犯人に顔はない。アメリカ社会そのものだから」という評を載せたそうですが、ある社会そのものが抱えていて、なおかつ誰も見たがらないため「臭いものに蓋」されているものが、どうしようもない形でさらけだされている。
ある個人的な憎悪や情念といった小さいものではなく、それは歴史的、集団的に形成されてきた普遍的な真っ黒な「かたまり」です。
そしてこの「かたまり」は決して消えません。どんなことをしても償えるものではない。
だからこそ怖いと感じるのだろうと思います。

また、「ハリウッド映画」というと能天気の代名詞みたいにしか思っていない方にも一読をおすすめいたします。
逆に思ったのですが、なぜハリウッド映画は現在のようなことになってしまったのでしょうか。
作った人のあけすけなアレコレがだだ漏れ、みたいな怖い映画にあまりお目にかかったことがありませんよね。
あと小説やマンガといった個人作業のものが「作った人のあけすけなアレコレがだだ漏れ」になっているのはわかるのですが、映画のようにチームで作るものがなぜそうなるのかも昔から不思議でした。
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by n_umigame | 2011-04-15 14:29 | | Trackback | Comments(0)

夜桜とパンダまん

王子動物園の夜桜の通り抜けに、初めて行って参りました。

しかし桜にはあまり期待しておりませんでした。(おい)
それよりもなによりも期待していたのは、
「パンダまん」
というものがあるらしい。

「パンダまん」。

なにそれ。(*゚д゚*)

名前もカワイイが、音の響きもいいよ「パンダまん」。

まだ見ぬ「パンダまん」に思い焦がれたわたくしは、職場で「パンダまんって知ってる?」「ねえねえ知ってる?」「食べたことある?」と聞いてまわり、あげくのはてに「知りません。にせみ(仮)さん、仕事してください」と言われる始末ですごめんなさい。
あげく、「パンダまん……何の肉ですか。
と言い出す者まであらわれ、怖いこと聞くな!!! 
肉まんなんだから、ぶ、ブタさんにき、き、きまっ……たぶんな。(号泣)

じゃあ現物見に行こう。そうしよう。

やってまいりました、神戸市立王子動物園。
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王子動物園と言えば入り口のフラミンゴs。
みなさんほとんど寝たはりました。すまんのう。
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なかなかの人出です。
警備員さん、人の顔見て、「酒類の持ち込みは禁止させていただいてまーす」言うな。
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暗闇に浮かび上がる薄紅色の花、花、花。
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「一人で、この暗闇の中の花トンネル抜けろって言われたら?」
「いやですね」
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夜桜の美しさには、魔がひそんでいるような気がします。

そんなときは「ここは動物園さ。ほら、パンダ館」と自分に言って我に返りましょう。
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旧ハンター邸。ミントグリーンの外装がかわいい。チョコミントアイス食べたい。
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そして、これが「パンダまん」だ!!
かわいいい!!
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肉まんと、季節限定の桜あんまんもありました。

もちろんブタさんのお肉でしたよ。ほら、これが証拠の写真。
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しかし…。「パンダ豚まん」て……。
い、いや、鯛焼きだって、鯛、入ってないしな。

ごちそうさまでした。

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by n_umigame | 2011-04-13 23:11 | 日々。 | Trackback | Comments(4)

『シャーロッキアン!』1 池田邦彦著 (アクションコミックス)双葉社

シャーロッキアンである女子大生・原田愛里(はらだあいり)と大学教授・車路久(くるまみちひさ)のコンビがべーかー街のホームズ&ワトソンよろしく、さまざまな依頼人(?)のため『シャーロック・ホームズ』物語に隠された知られざるオドロキの秘密に挑む!
心と謎を解きほぐす極上のハートフル推理エンターテインメント!(裏表紙)

切り裂きジャックVSホームズ ホームズは真犯人を知っていた!?

なぜか他人の名で夫を呼ぶワトスン夫人。そこに隠された号泣必至の感動ドラマとは…!?

モリアーティと投身後復活まで3年”大空白時代”に隠された真実とは!?

エピソードごとにコロコロ変わるワトスンの古傷の位置…その意外な真相は!?
(帯)



表紙を見て「…なんかこの二人がコンビでホームズものの謎解きをするお話?」という程度であまり期待せず、しかも味はあるものの地味な絵だなあと思いつつ、まったく予備知識なしに読み始めました。

シャーロッキアンの蘊蓄語りみたいなマンガだったらちょっと嫌かもと思ったのですが、ひとつひとつ丁寧に作りこまれた物語に、この地味な絵(失礼)がとてもしっくりと滲みてきて、何とも言えないあたたかい読後感を残す連作でした。
あまりシャープさのないペンタッチが良く合います。(ペンタッチって性格とかそのときの体調とか心境とかいろいろだだ漏れになりますよね。怖いですよね…)
でもちょっと昭和っぽいかな?(笑)

昭和オッケー、カモン!!という方で、ホームズものや謎解きミステリの好きな方にはオススメいたします。
(エラリイ・クイーンの表記が早川版で”エラリイ”なところも、わたくしほだされましたよ、ええ! 主人公の通う大学が「エル大学」なのですがこの「エル」はもしかしてもしかしますか? 読み過ぎですか?)
シャーロッキアンの方にはむしろ「今さら」なネタなのかもしれませんが、特にホームズものを原典以外に読んでいないわたくしには、その部分もとてもおもしろかったです。
上に引いた帯に掲載された謎が、みごとに論理的に解明されます。(と言っても物語上なので、シャーロッキアンの間で定説として答えが出た、というわけではないようですが)

表紙に描かれた大学の先生とその教え子である学生を中心として物語は進むのですが、人間を見る目のあたたかさと、ホームズへの深い深い愛がなんとも言えない調和をかもし出しています。

「先生! シャーロッキアンって……
重箱の隅をつっつくようなつまんない細かい事を……
ゴチャゴチャ言ってる人たちだと思ってました」
「そりゃ……
ご挨拶だね!」
「でも本当はそうじゃないってわかったんです」


このあと主人公(の一人である)愛里が言った台詞、それがおそらくこの先も底流するこの作品の最大のメッセージであるのではないかと思いました。

そして愛里と同じような形で、心からミステリを愛する人は、この「シャーロッキアン」のところに別の名前が入るのだろうと思います。

2巻が今年の秋に出る予定だそうですが、楽しみです。
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by n_umigame | 2011-04-11 21:20 | コミックス | Trackback | Comments(2)

Welcome. 本と好きなものがたり。


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