*さいはての西*

fwest.exblog.jp
ブログトップ

惣領冬実さんの「マリー・アントワネット」本・2冊

d0075857_12342349.jpg
『マリー・アントワネット』惣領冬実著(モーニングKCDX)講談社
史上初、ヴェルサイユ宮殿が衣装、建築、そして王宮儀礼のすべてを監修。壮麗なロココを紙上に再現した惣領冬実の最高傑作!はじまりはヴェルサイユ宮殿の離宮プチ・トリアノン。絢爛豪華な宮殿の喧噪を離れたその場所は、王妃が求めた家族の理想郷だった。21世紀に発表された衝撃の事実をもとに描かれる、全く新しいフランス王妃マリー・アントワネットと国王ルイ16世の物語。この漫画は、歴史に革命を起こす。
(Amazon.jpより・画像も)

d0075857_12345170.jpg

『マリー・アントワネットの嘘』惣領冬実,塚田有那著(講談社)
夫はチビでデブの気弱な国王、不能の夫に欲求不満でフェルセンと密通、「パンがなければ、お菓子を食べればいいじゃない」発言、離宮は王妃の淫らな社交場だった…etc.その歴史、ぜんぶ嘘でした。ヴェルサイユ宮殿、そしてマリー・アントワネット協会が監修した史上初の漫画企画『マリー・アントワネット』。その作者である惣領冬実が「真実のマリー・アントワネット」に出会うまでの製作秘話のすべてがこの一冊に。
(Amazon.jpより・画像も)





『マリー・アントワネット』はヴェルサイユ宮殿からの依頼を受けて描かれたマンガ、『~の嘘』(もうちょっと何とかならなかったのかな、このタイトル)は、マンガの方が描かれるに至った経緯と、惣領冬実さんがいかにこのマンガを制作されたかという苦労話・裏話がメインの本です。前の方に少しだけ(第一章のページにして50ページ弱分)歴史秘話的なテーマで描かれている部分があります。

どちらの本もおもしろかったです。
「ベルばら」の影響が根深い日本においては特に、この惣領冬実さんの『マリー・アントワネット』は、文字どおり画期的な作品だと思います。
残念なのは1巻で完結してしまっていることですが、なぜコミックス1巻分しか描かれなかったのかについては『~の嘘』を読むとわかるようになっています。
(なっていますが、やっぱりとても残念。いつかぜひ続きが読みたいです。『チェーザレ』の続刊見ないなと思っていたら、そういうことだったのか……。)

ルイ16世については、こちらの本(→)の感想でも当ブログで記事にしましたが、最近ではルイ16世とマリー・アントワネットの実像については再考証が進んでいて、かつての二人の姿は見直されてきているとのことです。
ですので、「ベルばら」で描かれたような、小太りでさえない愚鈍な王というルイ16世のイメージは、フランス革命当時、革命派が悪意をもって広めたゴシップなどから派生した歪んだ姿で、世が世なれば賢君として歴史に名を残したであろうということがわかってきています。
歴史はいつでも勝てば官軍ですから、勝者の声の方が大きく、自分たちにとって都合の悪いことは書き変えてしまいます。後世の人間はいつもそこに嘘がないかどうかを見極め、よくよく熟慮する必要があります。
タチが悪いのは、書き変えられた歴史が全部が全部嘘ではなく、そこに一部事実が混じっていることで、嘘がよりいっそう真実みを帯びて見えるということですね。


「ベルばら」はツヴァイクの伝記の影響が大きく、もちろんそこへ池田理代子さんの創作が加わっています。
好きでもないのに嫁がされた夫が愚かで男性的な魅力に乏しく、それでほかの男性と恋に落ちたが、その恋は悲恋に終わった、という展開は、少女漫画としては燃えるシチュエーションだと思いますが、史実から見ると、それはあまりにルイ16世に対して公正な見方でなかったばかりか、マリー・アントワネットに対しても失礼だったのではないですか、というのが、最近の見方になってきているようです。
これは以前からわかっていたことですが、フェルゼンは確かに一生独身を通しましたが、マリー・アントワネット以外にもヨーロッパ各地に何人も恋人がいて、股がいくつあるんだと思うような男性だったようです。フェルゼンはそんな感じで恋愛巧者ですから、マリー・アントワネットとの関係がそんなに純粋で単純なものだったかと考えると、かなり疑問です。二人ともいい大人ですし、正式な結婚以外に愛人をもつのが当たり前だった当時の宮廷や貴族の文化を考えても、そうだろうと思います。

そのために、必要以上に滑稽に描かれた「ベルばら」のルイ16世は、やはり気の毒だったと思います。人間は視覚から得る情報が大きいですから、「絵」で見せられてしまうとそれが強いイメージとしてすり込まれてしまうのですよね。
惣領冬実さんの描かれるルイ16世は、その分の揺り返しが来たみたいなデザインになっていて、『~の嘘』でもフランス側の担当の方に「ここまでルイ16世がハンサムだったかどうかはわかりませんけれどね(笑)」と言われていますが(笑)。

ただ、マンガ作品(フィクション)としてどちらが単純に「おもしろい」かと問われると、依然「ベルばら」に軍配を挙げざるをえないと思います、というのが正直な感想です。
惣領さんの作品は「ベルばら」に比べると時代考証などが非常に緻密で、何倍も正確であるであろうということはわかります。キャラクターどうしの繊細な心の交流なども、惣領さんの作品はすばらしいです。
ただやはりとても短いということもあって、優れた歴史同人誌を読んでいるような印象が、どうしてもぬぐえませんでした。
惣領さんは聡明で理知的で、まじめな方なのでしょうね。絵にもそれが強く表れていますが、逆に言うと隙がなくて崩れないのです。いいかげんなところがない。勉強したことが画面の隅々まで行き渡っていて、ちょっとお行儀が良すぎるという印象も受けてしまいます。
「嘘」が混ざっていても、フィクションはそもそも「作り話」なんだから、華麗に風呂敷を広げて楽しんだもの勝ちよ!と、ある意味、バカになって舞台の上で踊った「ベルばら」が、大勢の人を惹きつけるのは、よくわかります。「ベルばら」の方はオスカルという男装のキャラクターが、あの時代に女性にとって生きるとはどういうことかというテーマも内包していることが大きかったと思いますが。

だから、両作品は競合しません(笑)。
エンタメに徹した「ベルばら」の方は、確かに史実という点では正確さに欠けるところが多かったかもしれませんが、純粋にあの時代に描かれたマンガとしておもしろいです。
惣領さんの『マリー・アントワネット』は、「ベルばら」しか知らなかったと言ってもいい(本当は『イノサン』とかいろいろ出てるんですけれどもね、最近も)イメージを「そろそろ見直した方がいいんじゃないですか?」という問いかけになっている作品として、すばらしいです。
もちろん、正確で緻密な時代考証で描かれた作品世界は、言うまでもなくすばらしいです。

「ベルばら」原理主義者みたいな熱心なファンの方にも、食わず嫌いや脊髄反射的に否定してしまうのはあまりにももったいない作品です。
この画期的で意義深い作品も新鮮な目で楽しめるのではないかと思います。おすすめします。


…ところで『チェーザレ』って、結局どうなったのでしょうね…?
もう再開されないのかしら。コミックス派で飛び飛びに読んでて、長い間があいてしまったので、すっかりお話忘れてしまいました。(それでなくてもあの辺りの歴史に素養がない身の上ですのに…)




[PR]
# by n_umigame | 2016-11-21 00:03 | コミックス | Trackback | Comments(0)

『ラスト・ウェイ・アウト』フェデリコ・アシャット著/村岡直子訳(ハヤカワ・ミステリ文庫)早川書房

d0075857_15443416.jpg


テッド・マッケイは自分の頭に向けて拳銃をかまえた。妻と娘が旅行中の今日、とうとう自殺を決行するのだ。引き金に指をかけたそのとき、玄関の扉が激しく叩かれた。リンチと名乗った突然の来訪者は、ある「組織」からテッドへ依頼を伝えに来たと語りはじめる。その内容はあまりにも常軌を逸したものだった…。迷宮のごとき物語の果てには何があるのか。異様なるイメージと予測不能の展開が連続する、南米発の“奇書”
(Amazon.jp・画像も)


何を話してもネタバレになってしまう種類の本ですので、未読の方は回れ右でお願いします。








More
[PR]
# by n_umigame | 2016-11-20 00:15 | | Trackback | Comments(0)

英国ITV版「メグレ警視」シリーズ1"Maigret Sets a Trap"(メグレ罠を張る)

ローワン・アトキンソンがメグレ警視を演じるテレビシリーズって、そう言えばどうなったかしらーと思っていたら、今年(2016年)の5月末頃にシーズン1の放送は終わっていたようですね。
シーズン2は来年の模様。
シーズン1は『メグレ罠を張る』だったようです。

日本未公開の海外ドラマの情報を知りたいときにいつもお世話になっているIMDbをちらっと見に行きましたらば…!


d0075857_19025963.jpg
画像はIMDBより。



ちょ、誰ですかこのイケオジーーーーー!!!

ローワン・アトキンソンさんです。

うそでしょーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!(←ちょっと。)


いやー、化けましたね、見事に!
この画像を見ているだけでも、控えめに言っても最高じゃないですか。

最初ちょっと心配していたんですよ。ローワン・アトキンソンさんのメグレって。
しかも今ごろ、しかもイギリス人がメグレ警視に手を出すってどういうこと? って。
自国が刑事もの含めてミステリーの宝庫で、よその国の作品までドラマ化するほど不自由していませんわ、ほほほほほ!(ヴァランダーは) 傑作がなければ名作を食べればいいのに?ミステリー文学貧乏の国はとか思ってるでしょ(なにその僻み)、ふだんフランス語文化圏のあれこれだって小馬鹿にしてるくせにって思ってたんですよ。(←偏見)文句があるならバッキンガム宮殿にいらっしゃいくらいに思ってるかなって。(だからなにその僻み)

フタを開けたら、何ですかこれ、すんごいいい感じなんですけど!!! 目、覚めたわ。

d0075857_19035036.jpg

どや、このイケオジっぷり。(鼻血)


英国人俳優、心から改めておそるべし。
このお年を召してからの化けっぷりがはんぱないです。

だって、どうしたって日本では(世界でも?)彼のイメージはミスター・ビーンでしょう? 英国の人にしたって『ブラックアダー』とかコメディシリーズのイメージなんじゃないですか? 知らんけど。
でもコメディ畑出身の俳優さんたちは演技が達者で頭のいい方が多いので、本気出したらこんなもんなのかもしれませんね。
失礼しました。

脚本の Stewart Harcourtさんはデヴィッド・スーシェ版『オリエント急行の殺人』の脚本なども担当された方のようで、脚本の方も期待できます。ぜひぜひ見てみたいです。


ほかのキャストも見ていたらとってもいい感じで、ますます見たくなりました。

以下、画像が多くなってしまったので畳んでおきます。

メグレ警視シリーズファンのネタ萌えもやかましいですよ。覚悟はよくって。
「よくってよ。」と言う方はお入りください。









More
[PR]
# by n_umigame | 2016-11-19 23:30 | 映画・海外ドラマ | Trackback | Comments(2)

『狙った獣』マーガレット・ミラー著/雨沢泰訳(創元推理文庫)東京創元社

d0075857_13205677.jpg
(書影はAmazon.jpより)



莫大な遺産を継いだヘレンに、友人を名乗る謎めいた女から突然電話がかかってきた。最初は穏やかだった口調は徐々に狂気を帯び、ついには無惨な遺体となったヘレンの姿を予見したと告げる。母とも弟とも断絶した孤独なヘレンは、亡父の相談役だったコンサルタントに助けを求めるが……米国随一の心理ミステリの書き手による、古典的名作の呼び名も高いMWA最優秀長編賞受賞作。解説=宮脇孝雄/訳者あとがき=雨沢泰
(出版社HP)


『まるで天使のような』もタイトルから想像していたものとまったく違うおもしろさの作品でしたが、こちらもおもしろかったです。
「おもしろい」と言いましたが、読んでいる間、厭で厭で仕方がなく、こう、真綿で首を絞められるような何とも言えない不愉快さ、通勤途中の電車の中で走り出したくなりました。

原著は1955年に刊行されたということを頭においておく方がいい作品だと思います。
人によっては、こういう描かれ方はかなり不愉快に感じる方もいると思いますし、解説も含めて「今どきそれかい」というツッコミを入れざるを得ない部分があります。

マーガレット・ミラーの代表作などについての紹介は、こちらの記事がわかりやすいと思います。






長年邦訳が手軽に手に入らなかったと言うこともあり、マーガレット・ミラーを読むのはこれが2冊目です。


以下、ミステリーとしてのトリックも割っていますので、未読の方は回れ右推奨。






More
[PR]
# by n_umigame | 2016-11-19 23:13 | | Trackback | Comments(0)

「PEANUTS MEET HANKYU」スヌーピーのラッピング阪急電車

d0075857_19534552.jpg

10月1日から開始された、阪急電鉄とPEANUTSのコラボ企画の一環として、ラッピング車両が走っています。



…なのですが、阪急には月に数回乗ればいい方の生活では、なっかなか出会えませんでした。

が!
とうとう!!
11月になって出会えました-!!!

きゃー!!きゃー!!
(おまえはいったい何歳だ。)

d0075857_19531854.jpg

d0075857_19532745.jpg

d0075857_19533480.jpg

d0075857_19533911.jpg

かわいいいい!!!
かわいいいいいい!!!!

そうか、各停か!! 各停狙えばよかったのか!!!
何の根拠もなく、なとなく特急なんかなと思っていたよ!

この日は行きも帰りもこのラッピング電車に出会えましたよ。

ふだんJRユーザーで、イコちゃんに身も心もめろめろ(心だけにしとけ)のわたくしでも、PEANUTSとなれば話は別ですよ。


車内吊り広告~♪♪

d0075857_19541187.jpg

d0075857_19541965.jpg

いやはや、やっぱり阪急さんはなさることがしゃれてはりますなあ!
さすが、えび茶色…いやさ、えんじ色…どやさ、マルーンの貴婦人と呼ばれるだけありますなあ!

阪神電車といっしょになるって伺ったとき、みんな耳疑ったもんな。
なにその身分違いの結婚て。
大スキャンダルですやんて。(スキャンダル言うな)

えっ?
ひがんでなんかないですよ。
JRおっさんくさい(物理)ってずっと言われてて、学生のころJRで通学してたら「JR娘」て言われてたとか、遠い日の思い出ですよもうそんなもん。
確かに、ときどき生乾きのぞうきんみたいな臭いのする電車来ることあるわJR。
新快速とかな。
ときどき快速もかな。
ときどき普通もあるけどな。
つまり全部やけどなーーーー!(泣)

あ、コラボグッズも販売されています。

わたしですか?
もちろん買いましたよ、ボールペンとメモ帳だけ。
もうスヌーピーは買い始めたらきりないので、めっちゃがんばって選びに選びました。

新大阪駅のお店で売ってるのみかけたんで、「おおおおどうせ買うならここで買おう! だって使えるものな、これください、ICOCAで!
ってあんたどんだけJRの鴨ネギ。

最近イコちゃんグッズがアレなもんで、もうこれくらいしか返せるとこなくて。

JRもイコちゃんラッピング電車とか走らせてくれたらいいですのにね。
わたし走ってついていきますよ。
(お客様、ホームでの危険な行為はやめてください)



[PR]
# by n_umigame | 2016-11-14 21:30 | 日々。 | Trackback | Comments(0)

『ロルドの恐怖劇場』アンドレ・ド・ロルド著/平岡敦編訳(ちくま文庫)筑摩書房

d0075857_17051647.jpg
二十世紀初めのパリで、現在のホラーやスリラーの源流となったグラン・ギニョル劇が大ブームとなった。その代表的作家ロルドの短篇小説傑作選。
(出版社HP・画像も)



怖がりのくせに怖い話大好きにせうみがめです、ごきげんよう。
怖い話は好きなのですが、「ぐちゃっ」とか「ねちゃっ」とかいう擬音が聞こえそうなグロ描写が、ぜんぜんだめ。映画だと目を反らしたりして、がんばって完走する始末です。
本当はそこまでして見たくないので、基本的にそういうのは見ません。戦争映画も医療ドラマもダメ。痛いのダメです。

そんなわたくしのTwitterのTL上に、刊行前に一部内容紹介が流れて来まして、そのあまりに酸鼻をきわめる描写にツイートを読んでるだけで貧血が悪化しそうになり、たじろいで敬遠しかけたのですが、実際に読んだ方の感想が出始めて、それらを拝見している限りでは自分でもいけるかもと読んでみました。

で、最初の収録作品『精神病院の犯罪』が、残酷描写のための残酷な話みたいな作品で、またここでいったん休止。
ほかに楽しい本を読んで体力が多少回復したところで、再度2作目から読み始めたところ、今度はいけました。

ことほどさように、グロ描写が苦手な人間には多少ハードルの高い作品集です。

内容紹介に「現在のホラーやスリラーの源流となった」とあるように、読み慣れてくると、現代の小説と言うよりは、民話や都市伝説などの残酷描写に近いものがあり、ある種の様式美、典型が見えてきます。
登場人物もモダニズム的な背景や厚みを持った人間というよりは、役割を与えられて動く駒のようで、現在のホラー小説のお手本になったのも納得です。基礎工的な作品が多いので、その上に土台を積んだりデコレーションを盛ったりと、応用が効くのですね。
実際、多くの方の感想で見かけたように、ある作品はスティーヴン・キング原作の映画『ミスト』にとてもよく似ています。

著者のド・ロルドは医者崩れだったそうで、この短篇集も病院が舞台だったり、心身の病気にまつわる(現在から見ると偏見に満ちた)作品が多いです。
人生で2回全身麻酔が必要な手術をしていて、加えてグロがダメ、痛いの嫌いな自分には、そこも非常に読んでいてつらい本でした。

お話としてはよくできているというと不遜ですが、さすがに「典型」を形作ったパイオニアの作品集だと思いますので、心身ともに健康で、なおかつグロ描写が平気という方には、おすすめいたします。

ですが、まかりまちがっても、入院している人のお見舞いには持っていかないようにしましょう。
鉢植えより良識を疑われること、必至であります。





[PR]
# by n_umigame | 2016-10-02 23:04 | | Trackback | Comments(0)

BBC製作(2015)『そして誰もいなくなった』がNHK BSで放送決定



当ブログでもこちらの記事()でご紹介したBBC製作の『そして誰もいなくなった』の日本放送が決定しました。
こういうときはやっぱりBBCとNHKのつながりがありがたいです。


NHK BSプレミアム公式ウェブサイト
「アガサ・クリスティー そして誰もいなくなった」

BSプレミアム 11月27日(日)放送スタート 毎週日曜 午後9時

詳しい放送予定などはまだ公式には掲載されていませんが、「NHK海外ドラマスタッフブログ」のページによれば、全3回。
BBCで放送されたとおりの回数で放送されるようです。

d0075857_10203648.jpg
BBC公式ウェブサイト
"AND THEN THERE WERE NONE"
(画像も)

d0075857_10210626.jpg


依然、人気赤丸急上昇中のエイダン・ターナー出演ということもあって、ふだんミステリーに興味のない層も視聴者が広がるドラマではないかと思います。
個人的にはサム・ニール、チャールズ・ダンスという個性派ステキ俳優さんたちがクリスティーのドラマに出てくるというだけでありがとうございますと拝んでいたのですが、ドラマ自体も秀作でしたので、なまじなホラーより格段に怖い『そして誰もいなくなった』、吹き替えで見るのが本当に楽しみです。

d0075857_10213287.jpg


以下、ドラマのネタバレになりますので、真っ白の状態で見たい方はここで回れ右でお願いします。
原作未読の方、未読だししかもトリックも知らない・聞いたこともないという幸せな方も、ここで絶対回れ右推奨。







More
[PR]
# by n_umigame | 2016-09-22 21:18 | 映画・海外ドラマ | Trackback | Comments(0)

『ケルン市警オド』青池保子著(プリンセスコミックス)秋田書店

d0075857_15371703.jpg
活気あふれる中世の大都市・ケルンの治安を守る市警たち。その若きエース・オドは、後輩のフリートも憧れる仕事のデキる男だ。しかしお偉方から厄介払いで命じられた人探しが大事件に発展し…!?
「修道士ファルコ」の人気キャラ「兄弟オド」の治安役人時代の物語。
(出版社HP・画像はAmazon.jpより)



『修道士ファルコ』のスピンオフです。

「ファルコ」が『エルカサル-王城-』のスピンオフなのに、さらにスピンオフ。海外ドラマみたいなことになってきましたが、面白かったです。
青池保子さんの作品は安心して読めますね。
ほかの漫画家の方の絵を見ていると、やっぱり絵を描くって体力なんだよなあと思うこともあり、ファンとしては寂しい気持ちになることもあるのですが、青池さんは安定しているように思います。
と言ってもわたくし全然長年のファンではないので、20年、30年と読んでらっしゃるファンから見たらやっぱりさみしいよ~と感じてらっしゃるのかもしれませんけれど。

主人公は、リリエンタール修道院でのファルコの先輩に当たる、兄弟オド。
俗世では屈強の騎士だったファルコと組んで、腕っ節の強さと、謎があるとついつい推理してしまい、正義感の強いところを見せては「未熟者をおゆるしください」と懺悔しつつ、それを繰り返して読者を楽しませてくれていました。
今回は、そのオドがまだ出家する前にケルン市で警吏をしていたころのお話です。

なのですが、今回の疑惑の舞台は修道院。
なんだかんだ言って平和で、良き秩序が保たれているリリエンタール修道院とは違い、本当にまずい修道院でした。「汝、殺すなかれ」ガン無視です。怖いにもほどがある。閉鎖的で陰謀うずまく修道院と言うと、ちょっと『薔薇の名前』の修道院を連想してしまいます。
オドはリリエンタールでも医療を担当していますが、薬草の勉強をするきっかけになったのがこの事件なんだろうというエピソードもあって、この先、オドが出家するまでどうつながっていくのか、それも楽しみです。
ペトルス修道士はちゃんと罪をつぐなったら、またオドと再会してほしいです。
青池さんのマンガは犬がかわいいのもうれしい。

ところで、最近読んだドイツのミステリー『ミルク殺人と夏の憂鬱』を読んで、この本を青池保子さんがコミカライズしたら何倍も笑えるだろうなあと妄想していました。
いつか叶うといいなあ。




[PR]
# by n_umigame | 2016-09-21 00:07 | コミックス | Trackback | Comments(0)

『ささやく真実』ヘレン・マクロイ著/駒月雅子訳(創元推理文庫)東京創元社

d0075857_15052815.jpg

奇抜な言動と悪趣味ないたずらで、周囲に騒動をもたらす美女クローディア。彼女が知人の研究室から持ち出した新薬には、強力な自白作用があった。クローディアはその薬を自宅のパーティーで飲みものに混ぜ、宴を悲惨な暴露大会に変容させてしまう。その報いか、深夜、彼女は何者かに殺害された……! 死体の発見者となった精神科医ウィリング博士が、意外な手がかりをもとに指摘する真犯人とは? マクロイ屈指の謎解き純度を誇る、傑作本格ミステリ。
(Amazon.jpより・画像も)


安心安定のヘレン・マクロイでした。

『小鬼の市』があまりピンと来ず、以降コンスタントに翻訳が出て、そのたびにそれなりにおいしくいただいていたのですが、やはりマクロイの翻訳が再度出始めたころの『幽霊の2/3』や『家蠅とカナリヤ』『殺す者と殺される者』辺りの傑作と比べると、クオリティが高いとは言いがたいなあというのが正直な感想でした。
ですが、今回は久しぶりに端正な謎解きをわくわくしながら楽しみました。

マクロイがよく使うような、オカルト的なところはなく、探偵役のウィリング博士が心理学者であるという設定を上手に使って犯人に迫る、非常に端正なミステリでした。
翻訳の文章ももちろんいいのでしょうが、マクロイの文章は読んでいて気持ちがいいです。
「ささやく真実」という邦題もすばらしいですよね。

ウィリング博士のシリーズではギゼラさんが好きで、ギゼラが出てくるとそれだけでうれしくなるのですが、いらいらするほど進展がなくてですね(笑)、で、時系列でうしろの方の作品だともう結婚してるんですよ。
ウィリングとギゼラさんの出会いを描いた作品もあるようなので、邦訳が待たれます。そしてなによりどのお話で結婚することになったのかも楽しみにしています。
今回の作品ではウィリングとギゼラさんとのデートに関する描写が重要な伏線になっていて、さすがだなあとうっとりしました。
ただののろけじゃないから、油断も隙もあったもんじゃありません。

東京創元社から出ているマクロイの本は、デザインも大好きです。



[PR]
# by n_umigame | 2016-09-21 00:04 | ミステリ | Trackback | Comments(0)

『ミルク殺人と憂鬱な夏 中年警部クルフティンガー』フォルカー・クルプフル, ミハイル・コブル著/岡本朋子訳(ハヤカワ・ミステリ文庫)早川書房

d0075857_12321129.jpg


ふだんは平和なドイツの田舎町で、殺人事件発生。だが殺された食品開発技術者の周囲からは、動機も容疑者も浮かばない。それでもクルフティンガー警部率いる捜査陣は、懸命に捜査を進めてゆく……不器用にして恐妻家、要領は悪いが愛すべき中年警部の獅子奮迅の活躍を描き、ドイツで圧倒的な支持を受けた話題作
(出版社HP・書影はAmazon.jpより)




さらっと読めて、とても楽しかったです。
ヘレン・マクロイに続いて、久しぶりにミステリを読んで楽しいと感じました。(この感覚を大事にしたい)

カヴァーイラストがかわいらしくて(このイラスト、好きです)、タイトルからもコージーミステリーかと思われそうですが、一応きちんとした謎解き形式のミステリーでした。(“一応”て何という話はあとで)ちょっと真面目にミステリーしすぎていると感じるくらい。偏見覚悟で言うと、ドイツの人らしい生真面目さを感じました。いいなあ。

最近、ゲルマン諸語系と言いますか、鳴り物入りで日本に紹介されるドイツや北欧のミステリーというと、陰惨で気の滅入るような描写がこれでもかと続いて、それが露悪的であまりにも悪趣味にすぎるため、いいかげんげんなりして、最近は書店でもミステリーの棚にあまり近づかなくなっていました。そういうものもたまにはいいのですが、一つ何かがヒットしたらそればっかりになるというのは困りものだと思います。(ゆるゆるプリンが流行ったときの、ふつうのカスタードプリンを渇望するあの気持ちったらもう。)

そんな中でTwitterに流れてくる情報などで、あっ、これは私好きかもと手を出してみましたら正解でした。


さて、本書。
原書は2003年、今から13年も前に刊行されていたものです。すでにドイツでは大人気のシリーズで、ドラマ化もされているそうです。映像化作品もぜひ見たいと思わせる小説でした。
ドイツ語圏のミステリーを読み慣れていないせいか、最初はこの独特の雰囲気とノリになじむのに少し時間がかかりました。
でもそれに慣れてくると本当ににやにや顔が笑ってしまうし、ツッコミマシンにならざるをえないし、それをミステリーとしても大団円にまとめてくる 豪腕 手腕はすばらしいと思います(笑いながら)。いや本当に。「よくまとめたな!」って、こう、元気になると言いますか。真犯人がわかるシーンで顔笑ってましたもんね。(それもどうか)

この警察のゆるゆるな感じは、警察犬レックスがちょうかわいいドラマ『REX』を思い出しました。『REX』(はウイーンを舞台にしたドラマですが)も独特の雰囲気で、ミステリーとか警察ドラマとしてはどうなのかと思うエピソードも多く、それなのに見ていると何がおもしろいのかわからないんだけどとにかくおもしろいという、非常に頭悪そうな感想になってしまうところも似ているかもしれません。(※個人の感想です)


以下、少しネタバレですので、真っ白な状態で読みたい方は読了後にまたおいでください。


それで何が“「一応」謎解きミステリー”なのかと申しますと、本当に謎が解けるのは“一応”なのです。
別に探偵役のクルフティンガー警部や、警察の人たちの捜査や推理がすばらしいから犯人がわかるわけではないのです。(言い切った。)
そもそも推理が行き当たりばったりで、しかも推理は全部はずれます。
てゆうか推理してねえ。

それでどうやって事件を解決するんだと思われると思いますが、実際に読んでみたら、本当によくこれで解決まで持ち込んだなと、著者の 豪腕 手腕に惜しみない一人スタンディングオベーション状態でした。
クルフティンガー警部が主人公で主な探偵役ですが、私生活はダメだけど仕事は有能というタイプでもなくて、めちゃくちゃどんくさく、言ってしまうと公私ともにドジっ子です。(いいかげん太鼓は車から下ろせよと何度思ったことか)しかも部下に引かれるくらいケチ。本人は倹約家だと言い張ってますが、客観的にはケチ。(2回)
こんなどんくさくてケチな上司をもった部下に同情してしまいそうですが、部下もたいがいナチュラルボーン天然なのでバランス取れてます。
こんな警察でこの地域の治安とは。と考えてしまいますが、殺人事件がめったに起きないそうなので、結果オーライです。

中年の警察官が主人公だと家族関係が冷え切っているというのが多いですが、クルフティンガー警部は美人の奥さんともうまくいってるのかどうなのかよくわからないところだけがリアリティがあると言いますか、家族関係は概ね良好なようで、そこはほっとします。(クルフティンガー警部のお母さんは作家のエーリヒ・ケストナーのお母さんを思い出しました。)

以上、悪口しか言ってねえじゃねえかと思われるかもしれませんが、ほめてます。
だってこれでおもしろいって奇跡みたいじゃないですか。
クライマックス(?)の空港のシーンなんて、絵柄を想像して笑いが止まりませんでした。コントかよ。

内容はけっこう真面目に警察小説の形式を取った謎解きミステリーなのに、カヴァーイラストがコージーっぽくて、読者を選別してしまうかもしれないと思いましたが、登場するドイツの食べ物の描写がとても美味しそうで、うっかりコージーだと思って釣られた人もそうつかまされた気持ちにならずに済むんじゃないかと思います。そう考えたら秀逸なカヴァーですね。(ケーゼンシュペッツレというドイツ版チーズマカロニみたいなお料理があるそうで、これがとても美味しそう。)

こちらにレシピが載っています。→★「ケーゼ・シュペッツレ」



フロスト警部が好きな人は好きそうという感想を見かけました。当たらずと言えどもやっぱり少し遠いと言いますか、フロスト警部のキャラの方がよほど読んでいてしみるような人情に富み、私生活は哀愁にあふれ、おふざけはとことん悪趣味にふざけ、小説としてはいしいひさいち先生に「短篇集じゃないの」と言わしめた超絶技巧モジュラー型。あんな華麗なる職人芸では決してないです。あんなに下品でもないですし。
この根本的にゆるい雰囲気、まじめにやれと言いたいけれどどう見てもまじめにやっていることから来るおかしさ、フロスト警部のブリティッシュネスに比して、どこまでもこれがドイツなんだろうなと思う、ちょっぴり垢抜けないところも含めて、そんな楽しい小説でした。
続きが楽しみです。

シリーズのHPがありました。→
著者のお二人、お若いですね~。Twitterもされているようなので、ドイツ語OKな方は覗いてみられても楽しいんじゃないでしょうか。


ドラマの画像をちょこっとググったところ、こんな雰囲気のようです。
うわーちょう見てえええ(笑)。
d0075857_12343968.jpg
画像はこちらのサイトより。




[PR]
# by n_umigame | 2016-09-20 22:31 | ミステリ | Trackback | Comments(0)