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*さいはての西*

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年末のごあいさつ

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去ぬ年、来るトリ。



今年も一年間、当ブログにおいでくださった皆さまがた、ありがとうございました。

更新頻度はほんとうにぼちぼちですが、来てくださっている方があると思うと、やはり励みになっております。

エキサイトブログさんにはとうとう10年間もお世話になりました。
まさかこんなに続くとは。
我ながらびっくりですが、これも本当に、読んで下さっている方、あるいは何かのまちがいで漂着してしまった方々のおかげです。

ブログのデフォルトのサービスのアクセスカウンターがあるのですが、ざっくりしかわからないものでして。
それが今年の途中から、エキサイトブログさんのフリーコースでも、全デバイスのアクセスがカウントされるようになったそうです。

うちは過疎ブログですので、「へー」くらいにしか思っていなかったのですが、開けてびっくり、ざっくりカウンターだった頃と全然数が違うんです。
倍とかそんなもんでなく、

「あわわわわわわわわ(激震)」
   ↓
「デスヨネー!!!今どきパソコンよりスマホで見てる人の方が多いですよねそらね!!!そそそらね!!!!」と自分を落ち着かせ(全然落ち着いてない)
   ↓
「過疎ブログだと思って言いたい放題書いてきたけど、これ、まずいな」(いきなり計算高く)
   ↓
「や、でも母数が過疎だから、3倍が4倍でもどっつーことないか。ないね。ない」と開き直りの境地に至り、
   ↓
「来年もこのまま言いたい放題書くわ!!!!」←イマココ



というわけで、これからもご愛顧のほど。
どうぞ来年もよろしくお願いいたします。

よいお年をお迎えくださいませ。






# by n_umigame | 2016-12-31 23:38 | 日々。

『流砂』ヘニング・マンケル著/柳沢由実子訳(東京創元社)

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がんの告知を受けた北欧ミステリの帝王マンケルは何を思い、押し寄せる絶望といかに闘ったのか。遥かな昔に人類が生まれてから今日まで、我々は何を受け継ぎ、そして遠い未来の人々に何を残すのか。“刑事ヴァンダラー・シリーズ”の著者の最後の作品。闘病記であり、遺言でもある、魂の一冊。
(Amazon.jpより・画像も)


2015年10月に亡くなったスウェーデンの作家ヘニング・マンケルの最初で最後のエッセイ集。肺がん原発の末期がんを宣告されてから、ご自分の年齢である67篇から成る1冊です。

マンケルさんの作品は邦訳が出ているものはほぼ全作品読んでいます。(児童書もあります)
刑事ヴァランダーシリーズなどを読んでいると、なぜアフリカがスウェーデンの社会問題と絡むのかとか、最初は唐突な印象が拭えなかったのですが、このエッセイ集を読んで、マンケルさんの小説は彼の人生と切り離せないものだったのだなと実感しました。
スウェーデン語は全然わからないのですけれど、そしてもちろん翻訳がいいのでしょうけれど、マンケルさんの文章は読んでいると落ち着きます。

病気について直接触れているところはそんなに多くありませんが、これはまぎれもなくマンケルさんの闘病記です。

絵画ついて語られた項がいくつかあるのですが、その中でジェリコーの「メデューズ号の筏」の見方について、びっくりしました。マンケルさんはこの絵を見て、そこに希望を感じ取っていらっしゃったのです。
わたしはこの絵を見て希望を感じたことはありませんでした。むしろ、水平線の遠くにかすかに見える点のように描かれた船が、かえって絶望感を高めている残酷な絵だと思っていました。いかだに無造作にうち捨てられた死に行く人々や、カニバリズムがあったことを容易に想像させる人体の描き方よりも、ほとんど手の届かないところに見せつけられた船=希望の方が、何倍も残酷に感じていました。いかだの様子から、ほとんど人が絶望しかけたであろうときに見せられた決して手の届かないであろう希望は、本当の希望ではないと。希望に見せかけた欺瞞を、あるいは希望の残酷さを描いた作品だと。
けれども、この絵に希望を見たマンケルさんの文章を読んで、涙が出そうになってしまいました。

もっともっとマンケルさんの文章を読んでいたかったです。

全編すばらしいのですが、以下、刺さった部分の抜き書きです。


 がんと付き合うことは、同時にたくさんの前線で戦うことでもある。大切なのは、自分の頭の中の妄想と戦うことにあまり無駄な力を使わないことだ。体を侵略してくる敵と戦うために、全力を注がなければならないからだ。
 巨大な風車の影と戦っている暇はないのだ。
(28「影」p.142)

 三週間が経ち、やっと私が流砂から這い上がって、治療下での死に物狂いの闘いに挑み始めたとき、闘う私にとってもっとも大きな支えになったのは、当然のことだが、本だった。
(中略)だが、いままで経験したことがない不思議なことが起きた。新しい本、未読の本が読めないのだ。私がいつも大いなる関心をもって読むお気に入りの作家たちの本でも同じだ。新しい本、知らない本の中になぜか入り込めない。(中略)
 一瞬、私は怖くなった。本は私を裏切ろうとしているのか? 生涯で一番必要としているときに?
(31「抜け道、明るみへ」p153-154)

 私は常々、どんな夢でも、たとえそれが他の人に関する夢であろうと、本当は自分自身に関する夢なのだと思っていた。
(35「サラマンカへの道」p.178)

 物語を書く人間には二つのタイプがいて、いつも争っている。一方は土をかぶせて隠そうとする。そしてもう一方は掘り起こして暴こうとするのだ。
(35「サラマンカへの道」p.182)

 現代でも、馬から下りて木陰に座り、決定的な決心をする人間が必要だ。
 彼らはどこかに必ずいる。世の中がどんなにひどくなっても。
(36「馬から下りた男」p.187)
 ※英国で奴隷廃止法を制定させることに成功したトーマス・クラークソンについて。

 がんにかかってから、信仰によって慰められている人々のことをたびたび考える。私はその人たちに敬意を表しはするが、羨望は感じない。
 しかし、宗教的信念と同じくらいの確信をもって、私は将来長い氷河期のあと何千年も経ってから地球に存続する人々に関して、絶対にそうなるだろうと信じていることがある。その人間たちはきっと生きる喜びに満ちているだろうということである。
 生きる喜びなしには、人は生き延びることはできない。
(37「子どもが遊んでいるうちに」p.188)

 私はよく死んだ人々のことを考える。彼女のことも同じだ。いつも思うのだが、人はなぜ死んだ人のことを考えるのをやめてしまうのだろうか? 死んだというだけで付き合いをやめてしまうのはなぜだろう? 私がその人たちを思い出すかぎり、その人たちは私の中で生きている。
(44「土の床」p.222)

 昔読んだアフォリズムが頭に浮かんだ。いわく「人生をそんなに真面目に考えるな。どうせ生きてはそこから出られないんだから」。
(57「ドイツの高速道路での惨事」p.292)



人間であることを恥じるな。誇りを持て!
きみの中で次々に扉が開かれる。
きみは決して完成しない。それでいいのだ。
トーマス・トランストルンメルの詩集『ローマ人の弓』からの引用だそうです。このエッセイ集の冒頭で、献辞の次に掲げられているのですが、これを最後に。



ヘニング・マンケルファンもそうでない方にも、ぜひ、おすすめいたします。
もし今何か悩み事があっても、なんだかちょっと目の前が開けたような気持ちになります。

マンケルさん、ありがとうございました。
改めてご冥福をお祈りいたします。ゆっくりお休みください。







# by n_umigame | 2016-12-31 23:36 |

『批評理論入門 :『フランケンシュタイン』解剖講義』廣野由美子著(中公新書)中央公論新社

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批評理論についての書物は数多くあるが、読み方の実例をとおして、小説とは何かという問題に迫ったものは少ない。本書ではまず、「小説技法篇」で、小説はいかなるテクニックを使って書かれるのかを明示する。続いて「批評理論篇」では、有力な作品分析の方法論を平易に解説した。技法と理論の双方に通じることによって、作品理解はさらに深まるだろう。多様な問題を含んだ小説『フランケンシュタイン』に議論を絞った。
(Amazon.jpより・画像も)



メアリ・シェリーの『フランケンシュタイン』を例に取って、『フランケンシュタイン』とはどういった構造でどういったテクニックで書かれた小説かを分析した「小説技法篇」と、小説はどういう切り口で読むことが可能かという方法論で洗い出す「批評理論篇」の、二部構成になっています。

こうやって紹介すると無味乾燥なお勉強本のように聞こえるかも知れませんが、これがめっぽうおもしろい本で、読んでいる間わくわくどきどきしました。文学を専攻する大学生であれば、遅くとも2年生まで、できれば高校生くらいまでに読んでおきたかったと思う本でした。
でももちろん、大人になってから読んでもエキサイティングです。
(あんまりおもしろかったので、同じ著者の『嵐が丘』バージョンも買ってしまいました。『嵐が丘』はロマンス小説を読まない自分にとってのオールタイムベストのロマンス小説なのです。)

メアリ・シェリーの『フランケンシュタイン』は、当時流行したらしい手記(手紙)形式で書かれた小説だということもあって、最初はとっつきにくいですし、主人公のヴィクター・フランケンシュタインがひかえめに言ってもクズなので読んでてイライラしますが、少し読み進めるとぐいぐい読めておもしろいです。
ミステリー好きの方には、この手記という手法に、「信頼できない語り手」問題がすぐ頭をかすめると思いますが、この本でもその旨指摘されています。
未読の方はできれば『フランケンシュタイン』を先に読んでおくと、本書でフランケンシュタインのクズっぷりをクールにズバズバ斬っていく様に首がもげるかとおもうほど頷け、一粒で二度おいしい仕様となっています。


それにしても、メアリ・シェリーには何をどうすればこんなカスの主人公を創造できるのか、聞いてみたかったですね。狙ってできあがるキャラクターじゃないと思うんですよ。
メアリ・シェリー自身の人生も当時としては波瀾万丈のもので、16歳のときに妻子ある男性と恋に落ちてかけおちして、次々と妊娠しては子どもを亡くすという体験をしているそうで、この悲しくも暗い経験が『フランケンシュタイン』という作品にも深い影を落としていることは間違いないでしょう。
『フランケンシュタイン』は次々と悲惨な死に方で人が死んでいく物語で、希望も何も残らない、すがすがしいほどの悲劇的なお話です。
ヘミングウェイの『日はまた昇る』と、”読み終わったときに呆然とするほどすがすがしい悲劇度”で自分の中ではツートップです。


ベネディクト・カンバーバッチとジョニー・リー・ミラーが、ダブルキャストでヴィクター・フランケンシュタインと怪物を演じた、ナショナル・シアター・ライヴの『フランケンシュタイン』を、どちらも見たのですが、この舞台を見る前にこの本を読んでおければよかったです。
NTLの舞台の方は人気売れっ子俳優さんのダブルキャストということもあってか、ヴィクター・フランケンシュタインのクズっぷりがあまり目立たない演出になっていました。
どちらかというとフランケンシュタインと怪物の、同じ手の裏と表のような関係性にフォーカスされた舞台だったと思います。




# by n_umigame | 2016-12-31 23:33 |

2016年 本のマイベスト

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(画像はAmazon.jpより)


今までやったことがなかったのですけれど、一年間で読んだ本の中から自分内ベストを選ぶというイベントに、今年は乗っかってみることにしました。

…のですが、あまりにも選別がむずかしかったため、順不同でだーっと並べてみました。

読書家の方に比べたら自分は全然数を読まないタイプなので(代わりに気に入ったら何度でも同じ本を読む)、そのあたりもご了承ください。
読書傾向は、
・雑食(気が向いたら)
・ランダム(系統立てて読まない)
です。

番号を振ってありますが、数確認のための便宜上のもので順位ではありません。
今年読んだ本であって、今年刊行された本ではないため、再読した本なども含まれています。



■ノンフィクション部門
1.『流砂』ヘニング・マンケル著/柳沢由実子訳(東京創元社)
2.『批評理論入門 :『フランケンシュタイン』解剖講義』廣野由美子著(中公新書)中央公論新社
3.『その島のひとたちは、ひとの話をきかない : 精神科医、「自殺希少地域」を行く』森川すいめい著(青土社)
4.『脳が壊れた』鈴木大介著(新潮新書)新潮社
5.『人工知能は人間を超えるか』松尾豊著(角川EPUB選書)KADOKAWA
6.『謎解き『ハムレット』: 名作のあかし』河合祥一郎著(ちくま学芸文庫)筑摩書房
7.『迷惑な進化 : 病気の遺伝子はどこから来たのか』シャロン・モレアム著/矢野真千子訳(NHK出版)
8.『災害と妖怪 : 柳田国男と歩く日本の天変地異』畑中章宏著(亜紀書房)
9.『世界の辺境とハードボイルド室町時代』高野秀行, 清水克行著(集英社インターナショナル)
10.『白鯨との闘い』ナサニエル・フィルブリック著/相原真理子訳(集英社文庫)集英社

***

とりあえず10冊選んでみました。

***


■フィクション部門
1.『ささやく真実』ヘレン・マクロイ著/駒月雅子訳(創元推理文庫)東京創元社
2.『ミルク殺人と憂鬱な夏 : 中年警部クルフティンガー』フォルカー・クルプフル, ミハイル・コブル著/ 岡本朋子訳(ハヤカワミステリ文庫)早川書房
3.『貴婦人として死す』カーター・ディクスン著/高沢治訳(創元推理文庫)東京創元社
4.『幼年期の終わり』アーサー・C・クラーク著/福島正実訳(ハヤカワ文庫SF)早川書房
5.『中継ステーション[新訳版] 』クリフォード・シマック著/山田順子訳(ハヤカワ文庫SF)早川書房
6.『ムーミンパパ海へいく』[新装版]トーベ・ヤンソン著/小野寺百合子訳(講談社文庫)講談社
7.『狙った獣』マーガレット・ミラー著/雨沢泰訳(創元推理文庫)東京創元社
8.『マクベス』ウィリアム・シェイクスピア著/小田島雄志訳(白水Uブックス)白水社

***

体力がなくなると虚構の世界に出入りできなくなるということが、改めてよくわかった一年でした。
ヘニング・マンケルさんが、『流砂』の中で、本は自分の人生をあれほど支えてくれものなのに、病気になってから初めて読む本が読めなくなったと書いてらして、心から共感しました。
自分の精神状態が荒んでくると、書店に行っても本に呼ばれない/本と目が合わないということもあります。または、自分には必要のない本に手を出して後悔するというパターン。
ネット書店では「自分が欲しいと思っている本」しか買えないので、リアル書店に行けないと自分でもいろいろまずいなと思います。
予期せぬ出会いがないものは世界を狭めます。


ですがマンガは、体力が落ちても別腹で読めるんですよね。どういうことだ。


***

■コミックス部門
1.『薔薇王の葬列』1~(続刊中) 菅野文著(プリンセスコミックス)秋田書店
2.『坂田靖子: ふしぎの国のマンガ描き』坂田靖子著(河出書房新社)
3.『はたらく細胞』1~(続刊中)清水茜著(少年シリウスコミックス)講談社
4.『元気になるシカ : アラフォーひとり暮らし、告知されました』藤川るり著(KADOKAWA)
5.『恋するシロクマ』1~(続刊中)ころも著(コミックジーン)KADOKAWA/メディアファクトリー
6.『決してマネしないでください。』(全3巻)蛇蔵著(モーニングKC)講談社
7.『マリー・アントワネット』惣領冬実著(モーニングKCデラックス)講談社
8.『レディ&オールドマン』1~(続刊中)オノ・ナツメ著(ヤングジャンプコミックスウルトラ)集英社


***

マンガは年末に『はたらく細胞』の最新刊4巻を読んで1巻から読み直したら、どハマりしなおして、最初Kindleで買っていたのを全部紙の本で買い直しました。しかも特典つきを。しかも赤血球ちゃんと白血球さんおそろで欲しかったので3巻も4巻も。キーホルダーかわいい……///// こんなん初めて買いました。使わないけどこれお守りにしよう…。そのいきおいで月刊誌で最新話も読んだ話もあとで聞いてやってください。アナログで描いてらっしゃる方の作品はやっぱり紙の本の方が格段に読みやすいし、魅力も伝わってきやすいと思います。

***


思うところあって、今年、ダンボールで9箱分の本を処分したのですが、もう本当に断腸の思いでしたのに、結局どんどん買ったらいっしょやんけと、この記事書きながら自分につっこみました。来年もやると思いますので、よろしくお願いいたします。
もう手元に置いておくことよりも、「読みたかったら読みたいときに読む」ということに重点を置こうと。本自体はあの世に持っていけないけど、読んだ知識やもらった感動は自分の血肉になるから持って行ける。と信じたい。(てか持っていかんでもええやろ、もう。)


来年もおもしろい本にたくさん出会えますように。
いや、おもしろい本は毎年確実にてんこ盛り出ているのですが、それを読むのが追いついていていないので、来年ももっとおもしろい本を読む時間と体力と精神状態でいられますように。



# by n_umigame | 2016-12-30 23:08 |

『はたらく細胞』1~4巻 清水茜著(シリウスKC)講談社

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(画像はAmazon.jpより)

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白血球、赤血球、血小板、マクロファージ、記憶細胞、キラーT細胞、NK細胞、B細胞、マスト細胞…etc.人間の細胞の数、およそ60兆個! 彼らは皆、体の中で休むことなく働いている! 体内に入ってきた細菌・ウィルス・異物には徹底抗戦! そこには細胞たちの知られざるドラマがあった!シリウス新人賞出身の清水茜が描く、細胞擬人化ファンタジー!
(公式サイトより・画像も)
■公式サイト(試し読みできます)→



4巻が出たので1巻から読み直していたら、しみじみハマり直しました。

ハマり直したのでネットで著者のインタビューを読んだりしました。

お若いのに(まだ22歳でいらっしゃるそうです)今どきめずらしくカラーもモノクロも全部アナログで描いてらっしゃると知り、Kindleで買ったのですが紙の本で買い直そうかとまで思っている始末です。アナログで描かれた原稿は見開きの効果などが電子書籍だと台無しになってしまうのですよね。あと書き込みが細かいので、Kindleだと文字がよく見えないところもありまして。
アナログの人のペンタッチって、やっぱり好きだなあいいなあと思いました。描き直しがきかないし、何というか、その漫画家さんの独特の色気みたいなものが伝わってくるように感じます。この漫画家さんも、ペンタッチがエロい。(絶賛してます)エロいぞ。(絶賛してますよ)

1巻から通しで読むと、3巻辺りからちょっとネタ的にも息切れぎみで、絵もやや描き込みが浅くなってきていて、このまま5巻に行くのはちょっと心配な面もなくはないですが、ずっとおもしろいです。
思わず爆笑してしまうところはやはり1~2巻に集中しているのですけれども。
「あーーーーーーーサッパリした」は何度読んでも笑ってしまいます。

著者の清水茜さんは、インタビュー記事などによると医療系がご専門だったわけではなく、元々高校生の妹さんが「生物」の授業がもっとわかりやすくておもしろいといいのに、と言ってアイデアを出されたところから始まったのだとか。それをマンガの専門学校の卒業制作(?)に出したところ、連載が決まったそうです。
読み切りバージョンでは話の展開上、白血球(好中球)さんが死んでしまうオチだったそうで(まあそうでしょうね…白血球の寿命は通常半日くらいだそうですし)、それを編集担当さんが、この白血球さんがいいのでメインキャラにしましょうと言ったので、メインになったそうです。
編集さん、GJ。
わたしもメインの白血球(好中球)U-1146さんが大好きですよ。仕事熱心すぎて回りからちょっと引かれてるけど、だがそこがいい。「1146」という番号は「良い白」との語呂合わせなのかな? クールで熱く、かっこいいですね。
免疫系ではキラーT細胞がまんま海兵隊で、それも笑いました。うん、軍隊似合う(笑)。

話の展開とか画面の見せ方が、かなり映画を見ている人なんじゃないかなと思わせるので、ハリウッド映画とギャグ漫画が好きな方には迷わずオススメいたします。

お若いのに『八甲田山』もお好きだそうで(わたしですらちゃんと見たことないよ)、4巻の「出血性ショック」回は、これ、そうかも…と思いました。寒いのがリアル(笑)。
…と笑っていますけれど、わたしこの「出血性ショック」回の赤血球ちゃんに不覚にも涙が出そうになりました。

特に医療の専門ではないということもあって(途中から医学監修がつくようになったようですが)、知識として間違っている部分もわりとあるようです。
素人目にも、うーん、これは一般の人に誤解を与えるような表現なので、もう少しこうだったらよかったのになと思う回もありました。
ですが、もしこれを読んで、笑って、人体や生物に興味を持つ小中学生がいたら、それで結果オーライなんじゃないかと思います。マンガに描かれていることを鵜呑みに信じる人はすでに科学者ではないですし、科学者にも向いていません。
理系の人材の前途が危ぶまれている日本で、マンガという日本らしいメディアがきっかけで、将来の有望な人材が育つきっかけになれば、それはもう大手柄なんじゃないでしょうか。こまけーことをぐちぐちと文句を言う前に、一歩踏み出すきっかけを作ってくれていると考えれば、功罪を考えれば「功」の方が大きければ、それでいいと思います。
と言っている自分はもう自他とも認める右脳派ですけれども。すまん。


しかし、改めて、自分の体を大事にしてあげようと思いました(笑)。
24時間365日休むことなく働いたり戦ってくれているのですものね。
赤血球ちゃんと好中球さんについ思い入れが強くなってしまうのは、ここ2年でもともとあった貧血が悪化していろいろと自分でも調べたりしたことと、治療の影響で好中球が健康な人の3分の1から9分の1以下になってしまった時期があり、体内で起きていることを考えるとほんとにやばかったんだなと、個人的な体験も通して思うことでありました。
これ、病院の待合室に置くといいですよ、ほんと(笑)。

しかし、4巻ではとうとう頭部に大けがをしてしまったこの細胞たちの世界=体の持ち主である人は、いったいふだんどういう生活を送っている人なんでしょうね(笑)。だいじにしてください。

5巻も楽しみです。
楽しみすぎて本誌のサイトを見に行ったら、今連載を再開する準備中みたいです。
待ってますー!!







# by n_umigame | 2016-12-26 00:02 | コミックス