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映画『グレートウォール』(2016)ノベライズとアートブック


映画『グレートウォール』のノベライズ(小説版)と、アートブック(設定資料集)がすばらしかったので、ご紹介します。

一部、映画のネタバレもありますので、未見の方はご注意ください。


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(左)原書、(右)邦訳書。




(右)『グレートウォール』マーク・モリス・ノヴェライズ/平澤薫訳(竹書房文庫)竹書房(2017年4月12日初版第一刷)
原案:マックス・ブルックス、エドワード・ズウィック、マーシャル・ハースコヴィッツ
脚本:カルロ・バーナード&ダグ・ミロ、トニー・ギルロイ

(左)"The Great Wall : the Official Novelization" Novelization by Mark Morris, Legendary, Titan Books, Feb. 2017

2ヶ月で翻訳出てるんですね。すごい。

映画のノベライズは、けっこうぺらっぺらの内容のものが多いと思うのですが、これはなかなかオススメです。
解説も目を通しておくといいと思いますし、内容も映画とけっこう違うところがあって、映画はマッシュアップされたんだなあとか、翻訳や字幕と違うところでニュアンスの違いがあったりして、読み比べてみると楽しいです。

特に、映画を見てウィリアムとトバールのコンビにもってかれた方には、ぜひぜひご一読をおすすめいたします。
例えば、字幕では、おそらくわかりやすさ優先で、ウイリアムは上の名前、トバールは下の名前しか表示されていませんでしたが、原書を読むとどちらも上の名前で呼び合ってるじゃんとかね。
うふふふ。



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”The Great Wall : The Art of the Film” Abbie Bernstein, Titan Books, c2017

映画のコンセプト・アートブック、設定資料集です。

映画のアートブックはドリームワークス・アニメーションのものしか買わないと決めていたのに、丸1日悩んだだけで結局買ってしまいました。(実写映画で持ってるのはあと『インターステラー』だけですほんとうなんです)

このアートブックは買ってよかったです。
単体の本としてもすばらしく美しいのですよ。

↑は表紙。
俳優さんがいい感じで描かれています。特にマット・デイモンは、ウィリアムのいいところがよく出ている気がして、お気に入りです。
いい表情ですね。

装丁も凝っています。
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                                背。

背はかがり糸が見えるようになっています。糸は赤。きれいな赤です。
最初、乱丁かと思って購入先のAmazonに問い合わせてしまったのですが、Twitterでお世話になっている方から教えていただいた画像で、これはこういう装丁だということがわかりました。Amazonさんごめんなさい。フォロワーさんいつも貴重な情報をありがとうございます。

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                         のど。

金箔で色つけしてあります。
ちょっと心配なのが、金箔の色つけは時間が経過すると黒くなることがあるのですよね。
特に洋書の品質についてはこのあたりはやや心配かもです。
しかし今はとても美しいです。
あいだあいだから見える白いものは、中に挟んである紙です。印刷が擦れないようにしてあったのだと思います。
洋書でこんな細やかな気配りがされた本、初めて(笑)。

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わかりにくいかもしれませんが、綴じ糸が赤でおしゃれです。
雄大な中国の山岳。美しい絵で、ここだけでも飾っておきたい。


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                        長城の設定。

映画に出てきた長城は、IMDbのトリビアによると、特にどことは決めていなくて、観客の想像にまかせているそうです。

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裏表紙。

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                         クライマックスのシーン。

ノベライズによると、あそこは仏塔らしいです。
言われてみれば大雁塔みたい。
この色鮮やかなステンドグラスの装飾は、チャン・イーモウ監督らしいですね。
チャン・イーモウ監督は、色彩感覚が独特で美しい監督さんだと言われていますが、俳優さんの趣味もいいなと思うことが多いです。

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まだ開封していない、封蝋がされたもの。
勅命でも入ってるんでしょうか。洋封筒だけど(笑)。

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何かの図が入っているらしいですね。
もったいなくて封蝋を切れない。

ほかにもトレーシングペーパーに色刷りしてあるところが何ページもあったりと、かなり力を入れて造本されていることがわかります。
お金をかけて作っていますね。
タイタン・ブックスはほかのアートブックも何冊か持っていますが、いつもこんなに凝っているわけではなかったです。
造本が凝っているわりには、ほかのアートブックより少しお安かったので(買ったとき少し円高だったからというのもあるかもしれませんが)、なかなか良心的だと思います。

アートブックは、映画の印象そのままという感じの配分でした。
つまり、人間に関しては、主人公のウィリアム以外は、それぞれ2~4ページずつくらい、群像劇のように紹介してあります。
残りの、実に本の半分くらいは、饕餮(とうてつ)饕餮饕餮饕餮、ほぼ饕餮たん。
初期イメージからだんだんこうなってきたのね、という感じで、めくってもめくっても緑色。

饕餮たん好きさんにはぜったいオススメします。
この漢字見てるとあの映画の饕餮たん、なんであんなになったのかわかる気がしますね。このうじゃっと、ごじゃっとした感じが。
漢字って象形文字なので、漢字から実物を想像するというのは理にかなっていると思います。


この映画が好きで好きでたまらないという方には、例え文字の部分が読めなくても、絵や写真を見ているだけで十分元が取れると思います。文章の部分もそんなにたくさんありませんし。

文章の部分をまだ全然読めていないので、必要があればこの記事に追記したいと思います。






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by n_umigame | 2017-04-24 00:03 | 映画・海外ドラマ | Trackback | Comments(0)

『グレートウォール』(2016):さらっと感想編

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■映画『グレートウォール』公式サイト 2017年4月14日(金)公開

約1700年かけて作られた人類史上最大の建造物と言われる万里の長城。その建造の真の目的が明かされる、チャン・イーモウ監督によるファンタジックなアドベンチャー。世界中を旅し、辿り着いた万里の長城で、中国中から集められた戦士と共に人類を守るための戦いに挑む男ウイリアムをマット・デイモンが演じる。
(Movie Walkerより)


■予告編



なんですかこのたのしいえいが!(※感想がひらがななところでいろいろ察してやってください)
もう、この映画、大好きです。

1回目を見たあとにパンフレットはもちろん買って、読んで、すぐサントラ買ってノベライズ買ってアートブック買って一週間後に2回目見に行ってノベライズの原書買って来月(2017年5月)に出るUS盤のBlu-ray予約して、イマココ。
我ながらこれは『インターステラー』のとき以来の剛速球ハマりっぷり。『インターステラー』のときはちょうど諸事情あって映画館に見に行けなかったので、今回は後悔しないようにあともう一回くらい劇場で見たいなと思っています。
だってすぐ終わりそうなので!(泣)
なので!

なので、もし気になっている方でこのブログにたどりついてしまった方はぜひお早く!

…ということで、春休み後でゴールデンウィーク前のハコ穴埋め的な扱いを見ていても、映画館によく行かれる方ならお察しのタイプの映画ではありますが、わたしはこれ大好きです。

客観的な評価なら★取り5点満点中3個でもおまけかなあというところですが、主観的にはあとで述べる理由からもほぼ★5点作品です。



以下、ネタバレしています。
未見の方で、自分はこの映画好きそうなにおいがすると感じておられる方は、ぜひ前情報なしで観に行ってくださいませ。





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by n_umigame | 2017-04-23 23:37 | 映画・海外ドラマ | Trackback | Comments(0)

ドリームワークス・アニメーション長編新作の制作が(また)中止



2018年2月に公開予定(北米)だったドリームワークス・アニメーション(以下DWA)の長編新作"Larrikins"(ラリキンズ)の制作が中止されていました。

■Tim Minchin's Outback animation 'Larrikins' cancelled at Dreamworks

■Larrikins: DreamWorks cancels Tim Minchin animated movie

『長ぐつをはいたネコ』の監督でもあるクリス・ミラーさんがティム・ミンチンさんと共同監督で進められていたこともあり、期待していたのですが、残念です。
ティム・ミンチンさんも、この4年間を捧げてきたのに…ととても残念な様子。

DWAが買収されてからこれで『クルードさんちのはじめての冒険』の続編に続き2作目の制作中止になります。今回も親会社の意向が強かったようです。

2014年6月当時に発表されていたDWAの長編新作は以下のようなラインナップでした。
参考記事:

『ヒットマン:エージェント47(原題)』は2015年2月27日公開
『キャプテン・アンダーパンツ(原題)』は2017年1月13日公開
『ムンバイ・ミュージカル(原題) / Mumbai Musical』は2017年3月10日公開
『ザ・クルーズ2(原題) / The Croods 2』は2017年11月3日公開
『ラリキンズ(原題) / Larrikins』は2018年2月16日公開
『マダガスカル4(原題) / Madagascar 4』は2018年5月18日公開
『プス・イン・ブーツ2:ナイン・ライブス&40 シーブス(原題) / Puss in Boots 2: Nine Lives & 40 Thieves』は2018年11月2日公開
(いずれも2014年6月当時)

このうち公開が決定しているのは今年(2017年)秋公開予定の『キャプテン・アンダーパンツ(原題)』のみ。


『マダガスカル4(原題) / Madagascar 4』は企画自体が白紙に戻っていて事実上無期延期、
『ヒットマン:エージェント47(原題)』『ムンバイ・ミュージカル(原題) / Mumbai Musical』に至っては、いつの間にか立ち消え、
『プス・イン・ブーツ2:ナイン・ライブス&40 シーブス(原題) / Puss in Boots 2: Nine Lives & 40 Thieves』はIMDbに2021年公開で返り咲いているものの、公式のアナウンスは現状なし。

…という、何とも悲しくも寒々しい状況です。


最新作はまもなく(3月31日)公開される"The Boss Baby"です。
トム・マクグラス監督の作品なのでこちらも期待しているのですが、インタビューでなぜDWAで働いているのかという趣旨の質問があったようです。
マクグラス監督は「ただDWAが大好きだから」と答えてらっしゃいましたが、何と言いますか…旭日の勢いの会社に勤めている人にそんな質問自体しませんよね…? よいように考えて、アメリカでは才能や実力のある人はどんどん転職(ジョブチェンジではなくカンパニーチェンジ)してキャリアアップしていく人が多いので、マクグラス監督のように才能のある人が、なぜDWAに勤め続けているのかと聞きたかったのかもしれません。しかし、それにしても勤め人には返答しづらいことで、失礼な気がしました。
いつも静かに微笑みながらインタビューには答えてらっしゃるマクグラス監督も、さすがにちょっとお気に障ったのでは…? という表情に見えたのは、ファンの勘ぐりすぎでしょうか。


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by n_umigame | 2017-03-26 23:43 | 映画・海外ドラマ | Trackback | Comments(0)

ドリームワークス・アニメーション新作"The Boss Baby"トレーラー2本+α


ドリームワークス・アニメーションの今年(2017年)の新作長編作品第一弾、"The Boss Baby"(ボス・ベイビー)の第2トレーラーが来ていましたので、貼っておきます。

北米では3月に公開予定、日本は安定の未定です。(しょんもり…)


■The Boss Baby Official Trailer #2 (2017)




第1トレーラーはこちら。
■The Boss Baby Official Trailer #1(2017)






気になるのが、シュレックの制作チームであることをばーんと出してきたことと、監督が…! 

監督がトム・マクグラス監督の単独作品でなくなっているではありませんか……!

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IMDbより。→
いやああああああどういうことおおおおおおお!!(ノД`)

共同監督になられたのは、Hendel Butoyさんという、『ファンタジア2000』などを手がけられた方のようです。
ディズニーから来られたのですね。

それはいいのですけれど、マクグラス監督はなぜ単独監督でなくなったのでしょうか。
しかもクレジットも筆頭でなくなっています。

コミコンやアヌシー映画祭でのインタビューからも、この作品はマクグラス監督の個人的な思い入れが比較的強く、お兄さんへの50年ぶりのラブレターなんだよ❤ などと臆面もなくおっしゃっていたところから、わたくしそれはそれはもう萌え…いや燃えあがり、期待していたのですよ。

それでなくてもマクグラス監督は、実力といいキャリアといい、途中で誰かの助っ人がなければ一本作品を仕上げられないような未熟な監督さんではないと思いますし、そうやってベテランのフォローがあってヒット間違いなしのコンテンツさえ腐らせたどこぞの蜂とは違うのだよ、蜂とは! と池田秀一さんの声で脳内に響き渡っていたのに、どうして? 

なぜ!? 
WHYYYYYYYY!!!!???????

吉報の少ないDWA関連情報の中で、これだけは楽しみだったのに、そしてこれだけは悪くなりようがないと思っていたのに、この仕打ち…。(ムーコ風)

がっくりでございます。

もしかして転職が決まって、契約などの関係でタイミング的に見届けられなくなって、あとは頼んだってことなんでしょうかね…。
あーあ…。


そんでもって、次回作はこの"Captain Underpants"なのですが、最近ファーストルックが出まして。


うーん、このボス・ベイビーとのかぶりっぷり。
DWA、もしかしてもう、自家中毒を起こしているのではないかと心配になりました。
この作品の救いは、監督が『ターボ』のデヴィッド・ソレン監督だということでしょうか。
それから、……それから………、思いつかない…(ノД`)。




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by n_umigame | 2017-01-08 23:44 | 映画・海外ドラマ | Trackback | Comments(0)

『ソーセージ・パーティー』(2016)と『クルードさんちのはじめての冒険』続編中止etc.(後編)

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(画像はAWN.comより。)



***

この記事は後編です。

前編はこちら。→

映画『ソーセージ・パーティー』の結末に触れていますので、ネタバレをさけたい方は、ここで回れ右でお願いします。


***

了解済みの方は↓からどうぞ。









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by n_umigame | 2016-12-05 00:03 | 映画・海外ドラマ | Trackback | Comments(0)

『ソーセージ・パーティー』(2016)と『クルードさんちのはじめての冒険』続編中止etc.(前編)


***

今回の記事は、前半は『ソーセージ・パーティー』の感想、後半は最近のドリームワークス・アニメーション事情について思うことなどです。
長くなりましたので、記事を前後編に分けました。

後半のために、『ソーセージ・パーティー』のオチについても触れています。
映画未見で今から観る予定の方は、ここで回れ右推奨です。

***



まずは映画『ソーセージ・パーティ』の感想から。


スーパーマーケット「ショップウェル」で、ソーセージのフランクは恋人であるパンのブレンダと結ばれホットドッグになることを夢見るなど、食材たちは人間に買われることを望んでいた。ある日、ついに一緒にカートに入れられ喜ぶフランクとブレンダだったが、アクシデントが発生し店に取り残されてしまう。一方、夢がかない購入された食材たちは……。
(シネマトゥデイより)



監督は『劇場版きかんしゃトーマス』シリーズのグレッグ・ティアナンと『マダガスカル3』などのコンラッド・ヴァーノン。音楽はアラン・メンケン。主演と製作はセス・ローゲン。




以下ネタバレですよ~。







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by n_umigame | 2016-12-04 23:58 | 映画・海外ドラマ | Trackback | Comments(0)

ブラナー・シアター・ライブ「冬物語」

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(画像はAmazon.jpより、白水社(白水Uブックス)『冬物語』ウィリアム・シェイクスピア著/小田島雄志訳)


ブラナー・シアター・ライブ「冬物語」
Staff
作:ウィリアム・シェイクスピア 演出:ケネス・ブラナー 演出・振付:ロブ・アシュフォード
舞台・衣装デザイン:クリストファー・オラム  
照明:ニール・オースティン サウンドデザイン:クリストファー・シャット 
​作曲:パトリック・ドイル 
Cast
ポーリーナ:ジュディ・デンチ 
マミリアス:ピエール・アトリ
マミリアス:ルディ・グッドマン
カミロー:ジョン・シュラップネル
アンティゴナス:マイケル・ペニントン
クリオミニーズ:アンス・カビア
ダイオン:スチュアート・ニール  
ポリクシニーズ:ハドリー・フレイザー
リオンディーズ:ケネス・ブラナー
フロリゼル:トム・ベイトマン
アーキデーマス:JAYGANN AYEH
老羊飼い:ジミー・ユール
道化:ジャック・コルヴレイヴ・ハースト
ハーマイオニー:ミランダ・レイソン
パーディタ:ジェシー・バックリィ
エミリア:ゾエ・レイニー

11月に一週間限定で映画館で公開されていた「ケネス・ブラナー・シアター・ライブ」の『冬物語』を観てきました。
ナショナル・シアター・ライブの、ブラナー・シアター版です。舞台を撮影して臨場感あふれる舞台の様子を、映画館の大画面で楽しめるように、という企画です。
舞台の尺そのままなのでインターバル(休憩時間)もそのまま、トータルでだいたい3時間以上あるので、映画館でずっと座ってるのはなかなか大変なものがありますが(しかも何を思ったのか月曜日に観に行ってしまい…その後一週間長かった…)、3時間という長尺を感じさせない舞台でした。観に行ってよかったです。


『冬物語』はW.シェイクスピアの戯曲で、ブラナー・シアターでは18世紀から19世紀頃の衣装なのかな? 比較的近代的なデザインでした。ケネス・ブラナーはシェイクスピアの戯曲を現代的な解釈で語り直す作品を一時期映画でも何本も製作していて、今回の『冬物語』はコスチュームのイメージからブラナー版の映画『ハムレット』に近いように感じました。

ポーリーナ(ポーライナ、と聞こえましたが)役のデイム・ジュディ・デンチは81歳というご高齢ですが、変わらぬハスキーで低い声は艶と張りがあり、立っているだけでも堂々の荘厳さと貫禄がすばらしかったです。確かお目を少し悪くされていて、台本を読むのがたいへんだとか。そんな中でも滔々とセリフを述べられていて、演技を観ているだけで勇気づけられます。
『冬物語』には時間を擬人化した人物が登場して、物語のコーラス(案内役・狂言回し)の役目を務めるのですが、この時間の役もデンチさまがされていました。舞台の冒頭からデンチさまが「さあ冬のお話をしましょう」と言って登場するので、この舞台はあたくしが牛耳ったわ感すごい(笑)。そんなに出ずっぱりの役ではありませんが、要所要所で重要な役割を演じます。

このど迫力のポーリーナ(ポーライナ)にビッシビシしかり飛ばされるのが、ケネス・ブラナー演じるリオンティーズ。ケネス・ブラナーは、自分の演技が映える役というものを本当に良く理解しているなと、観るたびに思います。(けっこうナサケナイ役が似合うと思います(笑)、ヴァランダーのときも思いましたが。)
演技も言うまでもなくうまいですしね。ただ、わたくし、昔からこのナルシシスティックなブラナーさんの演出がちょっと苦手でして。演技ではなくて、演出です。
俳優なんて大なり小なり自己陶酔的でないとできない仕事だと思うので、演技がナルシシスティックなのはいいのですよ。でも彼の場合は演出や監督も兼任されていることが多いですよね。そうすると、ご自分の演じるキャラクターも「そう見えるように」演出されているわけで、それがね、ちょっとあざといなあと感じてしまったのです。映画の『ハムレット』や『オセロ』のときに。今回の『冬物語』でもそれを感じました。

存じ上げない俳優さんの中では、リオンティーズの妻のハーマイオニ役の俳優さんがよかったです。
リオンティーズから、リオンティーズの幼なじみで親友のポリクシニーズと不義密通を働いたという根も葉もない嫌疑をかけられるのですが、夫からそう告げられたシーンの、「藪から棒に何を言い出したんだ、このオッサンは」みたいな表情が秀逸でした。本当にこんな「( ゚Д゚)」顔。笑うシーンではないのに吹き出しそうになってしまいました。わかるよ。

俳優さんで言えば、羊飼い役のジミー・ユールさんを久しぶりに拝見できてうれしかったです。ひところイギリスの刑事ドラマにはよく出てらっしゃいました。

以下、お話ネタバレですので、知りたくない方はここで回れ右してください。

***


『冬物語』は原作未読で、「喜劇だったかな」というようなあいまいな記憶だけで観に行ったので、展開を知らず、純粋にお芝居としても楽しめました。
見終わって「なんちゅーひどい話だ」と思ったので、すぐ原作も白水社版で読んだのですが、原作もこんな話で、どう理解したらいいのか感想が迷子になりました。
シェイクスピア、これ、前半は鬱状態、後半は躁状態のときに書いたんかなと思いましたね。


前半冒頭で、リオンティーズは、自国に親友のポリクシニーズが遊びに来て、大歓迎しています。
ポリクシニーズがもうそろそろ帰るわと言い出したので引き止め、妻のハーマイオニにも「おまえも引き止めなさい」と水を向けるのですが、そのくせ、唐突に(と見えるのですが)リオンティーズは、自分の妻がポリクシニーズと浮気をしていると思い込むのですね。
原作を読むと、お芝居が始まった時点でそもそも疑っていたのかなと感じるのですが(だったらそんな友だちを自分ちに呼ぶなよとも思ったのですが)、証拠をつかんで首根っこ抑えるつもりだったのなら、まあ理解できます。
でもお芝居の方は本当に、何か元々リオンティーズには精神的な疾患があって、妄想と現実の見分けが付かなくなってしまったのかなと言う風に見えました。ポーリーナ(ポーライナ)にもはっきりそう言われています。あなた頭おかしいですと(身も蓋もない)。

不幸にもリオンティーズは王様だったので、自分の国のことではやりたい放題でした。ですが忠実な良い臣下たちに恵まれていて、ポーリーナのように耳の痛い直言をずばずば言ってくれる人もいます。ですがもうすっかり自分の妄想の虜になってしまっているリオンティーズは聞く耳を持たず、妻のハーマイオニを投獄するわ、それを見た幼い息子はショックで亡くなるわ、生まれたばかりの娘を捨ててこいと命じられた臣下(ポーリーナの夫)も、娘はボヘミア王の子だと信じたせいか唐突に熊に食われて死ぬわ、シェイクスピア劇らしい人死にが続きます。

後半は、その16年後。
リオンティーズの狂気が支配する冷ややかで陰鬱だった前半から打って変わって、明朗快活な、ちょっと明るすぎて怖くなるくらい陽気な舞台となります。リオンティーズに捨てられた娘パーディタは父王の親友が治めるボヘミアで羊飼いの娘として美しく育ち、ボヘミア王ポリクシニーズの息子と恋仲になりました。間にいろいろあって、結婚を言い交わした二人は父王の反対を策略でリオンティーズの国シチリアに逃げ、リオンティーズは親子の再会をとげ、死んだと思われていたハーマイオニもポーリーナの機転で生きていたことがわかり、大団円で幕となります。


が、これ、大団円で片付けていいのでしょうかねえ…。と考え込んでしまいました。

舞台が始まる前に、リオンティーズの、人間の過ちと許しについて考えるというようなナレーションが入るのですが、リオンティーズ、だめでしょう、これは。
ケネス・ブラナーさんの泣きの演技があまりにも達者で見ている者の胸をえぐるので、情に流されて「もういいよ」と言いそうになります。
ですが、幼い息子が父親の妄想のおかげで死んでますし、「16年経過しました」とあっさり言われても、無実の罪をきせられて、幼い息子も娘も失い、ただ一人残った家族であるはずの夫はある日突然別人のようになりはててしまったハーマイオニが、その16年間どんな気持ちで生きてきたかを考えると、これは他人があっさり「もう許してあげて」って言ったらあかんやつやと、すぐ考え直してしまいます。
DVの人は、暴力をふるった直後は本当に泣いたり土下座せんばかりに反省しているかのように謝るけれど、また何度も同じように暴力をふるうそうです。治らないんですね。そのうち暴力をふるうのは、こんなひどいことをさせるおまえが悪いと言い出したりして、もうつける薬がありません。
そう思うと、『冬物語』は非常に普遍性のある物語です。
このあとリオンティーズがまた妄想が再発しないとは限らないのです。
実際、ハーマイオニが夫と娘に再会する場面で、リオンティーズは感極まってハーマイオニに、あふれるように俺が悪かったと言うのですが、そこでハーマイオニは表情一つ変えず、夫には一言も言葉をかけずにくりると背を向け、すぐ娘のパーディタの方へ向き直るのです。
百万遍泣いて謝ってもらったところで、幼い息子も、ハーマイオニのつらかった16年という歳月も、共有できたはずの娘との時間も帰ってきません。
ハーマイオニ役の俳優さん、すばらしいなと思いました。
この解釈がなければ、こんな芝居見るんじゃなかったと思ったかもしれません。


リオンティーズの言っていることやっていることは、客観的に見たら百歩譲ってもDV夫のそれで、バカにしか思えないのですが、家庭の問題って当人どうしにとっては大問題でも、はたから見たらそんなもんなのかもしれませんね。
逆に、やはり家族の問題はその家族にしかわからないし、家族以外の人間が「反省しているようだし、もう許してあげたら」と気軽に言うべきではないということかなと、そんな感想にまとまりました。
シェイクスピア、こわい。

そんなお芝居ですが、ところどころ笑えるシーンもありました。後半は全体的に明るいのでもちろんですが、前半の「不幸にも親そっくり」とか「妻の口をふさいでおけない男が死刑なら、お国の臣下は全滅です」とか。
字幕は映画用にかなりかりこんでありましたが、おかげでお芝居を観るのにすっと物語が頭にはいってきやすい、読みやすい訳でした。
シェイクスピアのセリフはとにかく回りくどいので、これくらい刈り込んである方が純粋にお話として楽しめました。しかも絶妙な刈り込みの訳だったと思います。


『冬物語』は『テンペスト』と並ぶシェイクスピア晩年の傑作と言われているそうです。
許しと再生の物語と解釈すれば傑作なのかもしれないですが、まだ簡単に「もう何もかも許す」と言えないわたくしが未熟者なのでしょう。





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by n_umigame | 2016-11-22 00:03 | 映画・海外ドラマ | Trackback | Comments(0)

『ハイ・ライズ』(2015)



■映画「ハイ・ライズ」公式サイト


トム・ヒドルストン主演で、「太陽の帝国」「クラッシュ」で知られるSF作家J・G・バラードによる長編小説を映画化。フロアごとに階級が分けられ、上層階へ行くにしたがい、富裕層となるという新築タワーマンション。このコンセプトを考案した建築家アンソニーの誘いで、マンションに住み始めた医師のロバートは、住民のワイルダーと知り合い、マンションの中で起こっている異常事態を知ることとなる。「マイティ・ソー」シリーズのロキ役で知られるヒドルストンがロバート役を演じるほか、「ドラキュラZERO」のルーク・エバンス、「運命の逆転」のジェレミー・アイアンズ、「アメリカン・スナイパー」のシエナ・ミラーらが出演。監督は「ABC・オブ・デス」「サイトシアーズ 殺人者のための英国観光ガイド」のベン・ウィートリー。
(映画.comより)

こちらは映画の感想です。
原作(本)の感想はこちらへ。→

大筋は原作どおりで、やはりネタバレがどうこうという種類の映画ではないと思いますが、真っ白の状態で作品を楽しみたい方は、ここで回れ右でお願いします。
原作との違いについても触れています。








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by n_umigame | 2016-08-14 23:12 | 映画・海外ドラマ | Trackback | Comments(0)

DWA 2016年~2018年の劇場用新作予定状況



今年のSDCCが、なんだかいまひとつ元気がなくて心配だったドリームワークス・アニメーションですが、劇場公開用の長編は、今後いったいどうなっとるのかい? と思ったので、個人的な備忘録も兼ねてまとめておきます。


2016年7月31日現在で、IMDbでいちおう北米公開日が掲載されているものだけを拾うと、以下のとおり。(公開日時はいずれも北米での予定。)
★(IMDbのDWA作品一覧2016.7.31現在)



・Trolls(トロールズ):2016年11月4日
→一時期ネット配信のみという情報がTwitter上で流れましたが、どうやら劇場公開になったようです。
・The Boss Baby(ボス・ベイビー):2017年3月31日
・Captain Underpants(キャプテン・アンダーパンツ):2016年6月2日
・The Croods 2(『クルードさんちのはじめての冒険2』):2017年12月22日(日本公開2018年2月2日←IMDbの情報ですのであてになりませんが)
・Larrikins(ラリキンズ):2018年2月16日
・How to Train Your Dragon 3(『ヒックとドラゴン3』)2018年5月18日


公開日については、ドリームワークス・アニメーションが、合併予定だったりCEOが交代するかもしれなかったりと経営が不安定なことと、競合している作品の公開日などで今後もころころと変わる可能性が高いです。

詳細は長くなりましたのでたたみます。
一部、あらすじにも触れていますので、気になさる方はここで回れ右でお願いします。






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by n_umigame | 2016-08-01 00:14 | 映画・海外ドラマ | Trackback | Comments(0)

DWA新作"The Boss Baby" SDCC 2016追加情報




こちらの記事(→)で、ご紹介したドリームワークス・アニメーションの新作"The Boss Baby"について、先日開催されたサンディエゴ・コミコン(2016)にて、ファーストルックが公開され、キャストについてももう少し詳しいことがわかりましたので、追加情報です。

特にネタバレになるような情報は出ていませんが、真っ白の状態で映画を観たい方はここで回れ右でお願いいたします。

いちおうもぐりますね。








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by n_umigame | 2016-07-31 23:34 | 映画・海外ドラマ | Trackback | Comments(1)