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エラリイ・クイーンのコミックス & 奥さまによるフレデリック・ダネイさん伝記


昨今のハリウッドでのリブートやらリメイクブームに乗っかって、エラリイ・クイーンも再ドラマ化しないかなー何なら映画化でもええんやで…? と、ひっそり前のめりに日々を送っておりますにせうみがめです同じ思いをしていらっしゃる皆さまごきげんよう。


今回は、フレデリック・ダネイさんの奥さまによる伝記らしき本を発見したので、合わせて、先日出たクイーンのコミックスと合わせてご紹介いたします。

と言っても、どちらも全然手つかずで、伝記の方に至ってはほんとにチラ見した程度ですので、「こんなんありましたぜ」以上のご紹介はできませんが。また読み終わったら記事にできればと思います。
と言うか「ほわー! こんな本出とる!(歓喜の踊り)」以上のところに自分が行ってませんので、そんな感じでご覧いただければと。(そんな時点で記事にすんなレベル)

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1冊目はこちらです。
■"Ellery Queen, Detective (a Dell Comic Reprint)"
(リンクは日本Amazonへ飛びます↑)

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書影画像はAmazon.jpより。


ファンの間では垂涎(笑)(笑うな)のレア・アイテム(笑)(だから笑うな)だった、コミックス版のエラリイ・クイーンです。今で言うところのグラフィック・ノヴェルですね。

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ご覧いただければおわかりいただけるように、エラリイが古式ゆかしいアメコミデザインで、初めて見たとき思いましたね。

クラーク・ケント?

でもこういうレトロな絵柄、だいすきです。

毎回毎回無駄に美女がからんで荒唐無稽な大冒険になるのだけれども、いちおうエラリイが推理して事件は解決するという内容のようで、なんとなんと、「読者への挑戦」があるんですよ生意気な。

▼読者への挑戦
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もちろん、クイーン警視もヴェリー部長刑事も登場しますよ。

▼身も蓋もないことを言うクイーン警視。
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「エラリイ、時間を無駄にするな、犯人の名前を言え」

クイーン・パパ、それを言ったらたいていの本格ミステリの名探偵の見せ場なくなりますから。でもすごい気持ちよくわかる。わかるよ。
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クイーン警視も眼鏡男子。
父子が似てるように描かれているところが、いいねいいね!!!

雰囲気としては、1970年代のドラマ『エラリー・クイーン』に似ているかもしれません。最初のファラオの呪い的なお話とか、ドラマにもありましたし。

おおう、なんと、本国US Amazonの方でもすでに絶版に…(泣)。

今回の本は、今まで単品で出版されたものが合冊で復刊・刊行されたもので、プレミア化していた初版のものより、もちろんお値段もお得になっておりましたので、再版がかかりましたらすかさずポチられることをオススメいたします。

▼これだけ入ってます。お買い得❤
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いろいろ言いましたけれど、ほんとうにレア・アイテム(笑)でしたので、よくぞ復刊してくれましたよ、デル。ありがとう、デル。
ほしいけどそのお値段ではちょっと…というようなレアっぷりでしたからね。
にも関わらず、光の速さで品切れ・絶版になるところを見ると、そうとう部数しぼりおったなって感じで、どう「レア」だったか察するに余りあるかと思われますが、とにかくありがとう、ありがとう、デル。



2冊目は、こちら。
■"My Life with Ellery Queen: A Love Story"
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書影画像はAmazon.jpより。


こちらは、エラリイ・クイーンの片割れであるフレデリック・ダネイさんの3番目の(そして最後の)奥さま、Rose Koppel Dannayさんによるダネイさんの伝記のようです。
目次によると、来日されたときのことについても触れられています。2度来日されていたようですが、2度ともについて記述があります。

フランシス・M・ネヴィンズによる序文もついています。ざっと斜め読みした限りでは、この序文はエラリイ・クイーンの作家としての活動の紹介がメインで、デビューに至る履歴や作品の紹介がほとんどを占めているようです。ラジオドラマやTVドラマについても触れられています。めっちゃ長い序文(笑)なので、クイーンについてひととおり知っている人は、この序文はすっ飛ばしてもいいんじゃないかと思います。細かく読み込んでいないので、もしかしたら小っさ~い新ネタも仕込んできているのかもしれませんが、ぱっと見わかりません。

表紙のラブラブ(死語)のお写真が、『クイーン警視自身の事件』でのクイーンパパとジェシイを思い起こすような、素敵なお写真ですよね~❤❤❤
なんやったら、ハリウッドは、これを映画化してもええんやで…ええんやで…。
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こちらは今、Kindle Fireを持っている方(でプレミア会員の方)は無料で読めるコンテンツなので、お持ちの方は取り急ぎダウンロードしておくのはいかがでしょうか。

こちらのブログにこの本の紹介がありました。

■SleuthSayers
Queen's Quorum


今さらにご紹介いたしますと、エラリイ・クイーンとは、フレデリック・ダネイとマンフレッド・リーという、NY出身の二人の従兄弟同士のデュオ作家の筆名です。(そして二人が生み出した探偵の名前でもあります。後々、作家名=探偵名スタイルをまねっこする人もけっこういて、「まぎらわしいんじゃあ!」とキレているミステリファン多し(笑)。感想書くとき、ほんとそうなんですよね。)
その片割れのリーの方が先に亡くなりました。
こちらのブログによれば、リーさんが亡くなったあとのダネイさんの人生を埋めるように、ローズさんがやってきたようですね。
こちらも読み終わったら、また記事にしたいと思います。


ネヴィンズさんと言いますと、今年(2016年)は、国書刊行会から"Ellery Queen: The Art of Detection"の新訳が刊行される予定だそうです。
https://twitter.com/fujiwara_ed/status/682551686959771648

旧訳の増補改訂版で、エラリー・クイーン・ファンクラブ会長の飯城勇三さんの訳とのことですので、さぞかし暑い一冊になるかと思います。
日本ではどうしてもクイーン関連というと、こういった「研究書デス!」「評論デス!」といったマニアックで硬い雰囲気のものが多くて、末席を汚させていただいているEQFCの会誌『QUEENDOM』でもそんな感じです。それはそれであって欲しいのですが、マンガや、少し柔らかいものになると受け入れてもらえないとまではいかないまでも、軽く見られる雰囲気がいまだにあるように感じます。
それが理由で海外でもさっぱり映像化に恵まれないのでしょうかね~。だったとしたら残念ですね。




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by n_umigame | 2016-03-23 22:01 | *ellery queen* | Trackback | Comments(0)

『バーナード嬢曰く。』(1~2巻)施川ユウキ著(REXコミックス)一迅社


読むとなんだか読書欲が高まる“名著礼賛"ギャグ! 本を読まずに読んだコトにしたいグータラ読書家“バーナード嬢"と、読書好きな友人たちが図書室で過ごすブンガクな日々──。 『聖書』『平家物語』『銃・病原菌・鉄』『夏への扉』『舟を編む』『フェルマーの最終定理』……古今東西あらゆる本への愛と、「読書家あるある」に満ちた“名著礼賛"ギャグがここに誕生!!
(Amazon.jp)


本好きさんの間(一部?)で話題沸騰だったこの作品を、やっと読みました。

ウワサどおり、とっても面白かったです。
もう、笑えばいいやら泣けばいいやら、あるいは我が身をかえりみて穴掘って隠れればいいのかやらです。
本好き、読書好きには、必ず身につまされるところがあるのではないでしょうか。
本ネタマンガだと思っていたのですが、最初は格言マンガだったのですね。格言だけでもたなくなったので本マンガに転向したのだそうです。いいのかそれで(笑)。おかげさまで楽しいから読者としてはありがたいですけれども。


”バーナード嬢”こと町田さわ子は、図書室に入り浸る女子高校生。
それだけでもめずらしいのに、さわ子嬢(と個人的に呼んでいます)は、「本を読まずに読んだフリしたい」人なんですね。
これも今どきめずらしい。
と言うのも、本を読んでいるとかっこいいとか、ある種の基本図書読んでいないと恥ずかしいといったメンタリティそのものが、もう絶滅危惧の考え方だからです。
もうここだけで本好きに支持された理由がわかろうというものです。

さわ子嬢がいかにダメな子かということが、作中何度も強調されて、それで笑いを取るパターンも多いのですが、いやいや、さわ子嬢、全然ダメな子じゃないと思います。

理由のひとつは、上に述べたように、いわば教養主義的な考え方自体が、今どきの人にしてはもうめずらしいから。本を読むことでしか得られないものがあるということを知っているからです。本好きの我田引水と言われればそれまでですが、少なくとも、「そこ」を「良きもの」として目指そうしている人だから。
ふたつめは、「読めと言われたらちゃんと本を読むことができる」から、です。
ここで言う「読む」とは単純に「通読できる」ということです。
よく、歴史上のエピソードとして、お馬鹿さんの代名詞的に、マリー・アントワネットが生涯一冊の本も読み通せないくらい集中力のない人だったと言われますよね。
実はわたくし、常々、そんな人いるのかよと思っていたのですが、いるんですね、実際に。「字しか書いてない本は退屈で読み終われない」そうです。(それを堂々と言ってしまえるところに、皮肉でも何でもなく、ある種の清々しさを感じたくらいです)
確かに本を読むという作業は、訓練だと思います。
小さいうちからやっていると大して苦にならないのですが、いざやろうと思うと、けっこう体力も精神力もいる作業だろうと。自分はスポーツ音痴なので、これがスポーツだと思うと「やれ」と言われても急には入っていけない気持ちがよくわかります。ふだんから体を鍛えていると何でもない山道も、そうでなければ険しいものですよね。(そしておそらく体力を無駄に消耗しない=楽しく行うコツがある。これも訓練でしか身につかないのだと思います)
しかも、本は、映画のように座ってながめていれば何かしらは入ってくるというタイプの情報媒体ではありません。積極的に入っていかないといけない。

ですので、この2点だけをもってしても、さわ子嬢はとても立派だと思いましたよ。本当に。

さわ子嬢のキャラクターも、こんな感じでいいのですが、脇を固めるキャラもとてもいい。

まず、遠藤くん。
遠藤くんも、もちろん男子高校生なのですが、どういうわけか図書室にしょっちゅう入り浸っています。そこでさわ子嬢と出会うわけなのですが、遠藤くんはこのマンガの狂言回しです。"ちょっと前に流行ったベストセラー"を読むのが趣味。ただこの「ちょっと前」もけっこう古くて(笑)、シドニイ・シェルダン(シェリダン)の『真夜中は別の顔』とか、『一杯のかけそば』『さおだけ屋はなぜつぶれないのか』、ダン・ブラウンの『ダ・ヴィンチ・コード』とかとかなんです。遠藤くんのチョイスだけで、うわあ懐かしい(笑)というノスタルジーに浸れること間違いなしです。
次に、神林しおり。
名前からもわかるように(笑)、神林さんはSFファン…というかもうマニア。高校生とは思えないくらいですが、ジャンル小説は特に、10代のころのあの集中力をもってして読みあさる方が良かったなって今になって思うので、神林さん正解です。「SFは基本図書1000冊読んでないとSFファンとは言えない」そうなので、よかったわたしSFファンじゃない(笑)。
そして、長谷川スミカ。
図書委員で、遠藤くんに憧れています。そしてバリバリのシャーロッキアン。長谷川さんも高校生とは思えないくらいめんどくさいシャーロッキアンです(笑)。
もうね、神林さんと長谷川さんの言ってること読んでると、SFファンとシャーロッキアンがいかに面倒くさいかということがとってもよくわかり、じっと手を見ましたよ。
この4人がレギュラーメンバーです。
自分が一番近いのは、神林さんです(笑)。もう断言します。こんなにSF読んでないけど。

そして、キャラクターどうしの化学反応がとてもいいのです。
一話完結のコメディなのに。
私が好きなのは、やはり、さわ子嬢と神林さんの関係。
神林さんは、ある意味、優等生的/マニアックな本との接し方、読み方しかできない読書家で、自分でそれを多少コンプレックスに感じていると思しきところがあります。
最初は俗物っぽいさわ子嬢の読書への態度に、怒りもあらわにからんできて、それどころかグーで殴ったりするような過激な子なのですが(あとで謝ってるけどそのわりにはよく手が出てる(笑))、「かっこつけない」さわ子嬢の本への接し方を見ているうちに、神林さんも自由になっていくのですね。

それが爆発するのが2巻です。(と言うか2巻は神林さんのデレが炸裂してます。かわいいよ神林…)
さまぁ~ずのダジャレ本に大受けしているさわ子嬢を見て、
「見栄とか関係なく
好きなモノを
純粋に好きって
言えるのは
すばらしいな…」
と心から感動して、うるうるしてしまう神林さんに、私もうるうるしちゃいました(笑)。
そうだよね、そうだよね。

優等生が自由すぎる子に感化されたりあこがれたり…という作品はいろいろとありますが、本が好きな神林さんの、このさわ子嬢への何とも言えない憧れのような気持ち、とてもよくわかる気がします。そしてこれが完全に神林さんの片思いだというところも(笑)。

神林さんの名誉のために言うと、さすがに名言も多いです。
「グレッグ・イーガンは
多少よくわからなくても
すっっっごく
おもしろい!!」
「ハードSFを
読む上で求められる
リテラシーとは
『難しい概念を理解
できる知識を持って
いるか』ではない
よくわからないまま
でも 物語の本質を
損なわずに作品全体を
理解するコトが可能な
教養のラインを
感覚で見極められるか
どうか』……だ」

「ディックが死んで
30年だぞ!
今更 初訳される
話が面白いワケ
ないだろ!!」

とか、P.K.ディックやグレッグ・イーガンてハードル高けえと思いがちな向きにも福音のひとこともあれば、

「本は 読みたいと
思った時に読まなくては
ならない
その機会を逃がし
『いつか読むリスト』に
加えられた本は
時間をかけて
『読まなくていいかも
リスト』に移り
やがて忘れてしまうのだ」

とか、いつも心の掲示板に朱書きで貼っておきます! という鋼鉄並みに重量のあるひとことまであります。


いろいろとこねましたが、このマンガを読み終わったときに思うことは、「本っておもしろいよね」という、これにつきます。
そして、読んだ本についてああだこうだ言える友だちがいるって、すばらしいことだよね、と。
3巻も楽しみです。






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by n_umigame | 2016-03-20 23:15 | コミックス | Trackback | Comments(0)

『映画は父を殺すためにある:通過儀礼という見方』島田裕巳著(ちくま文庫)筑摩書房


映画には見方がある。“通過儀礼”という宗教学の概念で映画を分析することで、隠されたメッセージを読み取ることができる。日本とアメリカの青春映画の比較、宮崎映画の批判、アメリカ映画が繰り返し描く父と息子との関係、黒沢映画と小津映画の新しい見方、寅さんと漱石の意外な共通点を明らかにする。映画は、人生の意味を解釈する枠組みを示してくれる。
この本の目次
予告編
1 『ローマの休日』が教えてくれる映画の見方
2 同じ鉄橋は二度渡れない―『スタンド・バイ・ミー』と『櫻の園』
3 『魔女の宅急便』のジジはなぜことばを失ったままなのか?
4 アメリカ映画は父殺しを描く
5 黒澤映画と小津映画のもう一つの見方
6 寅さんが教えてくれる日本的通過儀礼
7 総集編
出版社HP




以下の映画のネタバレがありますので、もぐります。
『スター・ウォーズ』
『フィールド・オブ・ドリームス』
『塔の上のラプンツェル』
『メリダとおそろしの森』
『ヒックとドラゴン2』
『ペンギンズ FROM マダガスカル ザ・ムービー』
「マダガスカル」三部作
『カンフー・パンダ』
『カンフー・パンダ2』










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by n_umigame | 2016-01-05 23:33 | | Trackback | Comments(0)

"The Journey of the Penguin" by Emiliano Ponzi(Penguin Books)


To celebrate 80 years of Penguin Books, a charming picture book that tells the imagined story of the penguin who waddled his way into history as the symbol of a beloved publisher.
(Amazon.jp)


1935年にアレン・レーンによって創業されたペンギン・ブックス。その創業80周年を記念して出版された絵本です。

中は文字(読むところ)はいっさいなく、絵だけで物語をたどれるようになっています。
ペンギン・ブックスのマークシンボルであるペンギンくん(the Penguin=あのペンギン)が、思うところある様子で南極で大勢の仲間から離れて旅に出、成功して家族を得て幸せになるところまでが描かれています。
レトロな絵柄と中間色の色あいがとてもシックで、眺めているだけでもとても楽しい絵本です。飾っておいてもおしゃれ。
ペンギン・ブックスに興味がなくても、ペンギン好き、海の生き物好き(シロクマや巨大タコも登場します。某映画を思い出さざるをえないじゃないですか(笑))、レトロなデザイン好きな方にもおすすめします。

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(※画像は出版社HPより)

こちらのサイトで一部中を見ることができます。


ペンギン・ブックスは、本というと、それまで高価なハードカバーが当たり前だった時代にペーパーバックという廉価版の出版を始めたという意味で、画期的なレーベルであり、出版社でした。
言われてみれば、英語圏の本って判型もばらばらだし重いし臭いし独特の臭いがするし、そして高いですよね。
本というものが一部の教養人の贅沢品だった背景があって、そうなったそうです。
いや、英語圏のペーパーバックってカバー(ダストジャケット)がないのがふつうだし、新刊で購入したのに一回開いただけで背が割れるとかあるあるじゃん?なのですが、それでも、優れたフィクションやノンフィクションを、手軽なお値段で買って読めるようにしたという功績は大きかったと思います。
(日本の本は、ほかのものとの物価と比較してもとても安いと思います。そして廉価版の文庫や新書などの紙質や印刷技術の高さは、間違いなく世界一だと思いますので、これと比較してはいかんのです。たぶん。)


本というものは、「本が身近にある」という環境が大事なんだと思います。
いちいち図書館に借りに行ったり、何か機器を起動したりする必要があるものだと、どうしてもワンクッションあります。なので、そういう手段は本がある程度好きな人向けだと思うのですね。
夏休みに田舎のおばあちゃんの部屋で「この棚にある本は大人の本やから、子どもは見たらあかんで」と言われた本だから見たくなるとか、家で寝転んでて手を伸ばしたところに本があるとか、そういう環境がきっと理想。
それを大人がおもしろそうに夢中で読んでいる姿を見せるともっといい。
たくさんある必要はないのです。数ではなく質で、子どもは特に、おもしろい本があると、それを何度でも何度でも楽しめるものです。話がネタバレだからつまらない本というのは、ネタバレしなくてもつまらない本なのです(言い切りよった)。


パブリック・ドメインで無料で読めるコンテンツであっても、電子書籍なら150円でも、ペンギン・ブックスがシェイクスピアなどを「紙の本」として刊行し続けているのは、きっとこの「身近に本がある」ことの大切さを知ってほしいからということもあるのではないかと思います。

ペンギングループはその後"パフィン"という児童向けのレーベルもペーパーバックで刊行を開始しました。どちらもよちよち歩く可愛い鳥にしたのは、なにかわけがあるのでしょうか。
いつかパフィンくんの絵本も読みたいです。




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by n_umigame | 2016-01-03 00:26 | | Trackback | Comments(0)

『白鯨との闘い』ナサニエル・フィルブリック著/相原真理子訳(集英社文庫)集英社


名著『白鯨』の真実は、小説より過酷だった──19世紀、一艘の捕鯨船がマッコウクジラに襲われ沈没した悲劇と、その後の船員達の恐怖と絶望を綴る衝撃の実話。映画化公開。
1820年11月、捕鯨船エセックス号は巨大なマッコウクジラに襲われ大破した。猛威をふるう自然に翻弄され、心身ともに疲弊した男たちは、脆弱なボートで太平洋の真ん中をさまよう。飢えと渇き、恐怖、絶望…。最悪の状況下、彼らがとった究極の選択とは?メルヴィルにインスピレーションを与え、『白鯨』が生まれる基となった海難事故を詳細に描いた、全米図書賞ノンフィクション部門受賞の衝撃作。
(Amazon.jp)



映画化の便乗本かと思っていましたら、そうではなく、『復讐する海:捕鯨船エセックス号の悲劇』(2003年刊)の文庫化だそうです。(カバーは映画とのタイアップで、主演のクリス・ヘムズワースさんがどばーんと真ん中にいるあれです)
翻訳は『FBI心理分析官』やパトリシア・コーンウェルの作品の訳者でもある相原真理子さん。(2010年にお亡くなりになっていたのですね…存じませんでした。)翻訳が日本語としてとてもこなれていて読みやすいということもあるかもしれませんが、すばらしいノンフィクションです。全米図書賞ノンフィクション部門受賞とのことで、納得です。


映画の方は、最初てっきりハーマン・メルヴィルの『白鯨』("Moby-Dick; or, The Whale")の映画化かと思っていましたらそうではなく、こちらの『白鯨との闘い』("In the Heart of the Sea: The Epic True Story that Inspired ‘Moby Dick’")が原作でした。
映画は日本では2016年1月16日公開です。
なので、内容がどの程度原作に忠実なのかわかりませんが、以下の感想は、本の内容だけでなく、映画のネタバレにもなってしまうかもしれません。

何も知らない状態で映画を楽しみたいという方は、入らないでくださいませ。
(この本を読んで映画も見にいきたくなったため、映画の方とからめた話もしますので)







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by n_umigame | 2016-01-03 00:10 | | Trackback | Comments(0)

北大路公子さんの本


お正月だもの初笑いにいかがですか第2弾。

北大路公子さんの本です。
実は全然存じ上げておりませず、こんなおもしろい作家さんがノーマークだったなんて、アタシも焼きが回ったもんだよ…と日本海を見に行きたくなりました。

いつもお世話になっているカクテキさまが読んでらして、カクテキさんがおもしろいとおっしゃるならこれは絶対わたしも笑えるだろうと読み始めたら、もう、とんでもなかったです。(カクテキさん、ありがとうございます!)
期待した斜め上から来るおもしろさ。というか、くだらなさ(絶賛)。
笑いすぎてどうしようかと思いました。それでなくても腹筋一回壊れてるのに(物理)また壊れるんかいと不安になりましたね。

そんなわけで止まらなくなって次々読んだのは以下のとおりです。(順不同)(あまりにも次々と読んだため順番覚えてない)


『生きていてもいいかしら日記 』(PHP文芸文庫)
『石の裏にも三年:キミコのダンゴ虫的日常』 (集英社文庫)
『頭の中身が漏れ出る日々』 (PHP文芸文庫)
『最後のおでん:ああ無情の泥酔日記』 (新潮文庫)
『枕もとに靴:ああ無情の泥酔日記』(新潮文庫)
『苦手図鑑』(角川書店)
『ぐうたら旅日記 恐山・知床をゆく』(寿郎社)


たった7冊しか出ていないだなんて!!!
(内容が同じ単行本はノーカンです)
新刊が読みたくて地団駄踏んでいます。(地団駄と言えば「雁が飛べば石亀も地団駄」っていうことわざ可愛くないですか。大脱線の上、どうでもいいですが。石亀が地団駄ですよ想像してみてくださいよ。)(ほんとにどうでもいい。)

7冊全部読んで思ったことは、北大路公子さんに「休肝日」などという概念はないということです。
朝から晩まで365日、閏年なら366日毎日飲んでる。レトリックではなく、本当に飲んでる。しかも体脂肪率40%↑って。外見的にはスマートな方だそうですので、それ内臓脂肪ってことですよねかえってマズいですよ。
これからもぜひ新刊が読みたいので、お体だけはおだいじにーーー!!!

すべてエッセイ&紀行ですのでどれから読んでもだいじょうぶですが、迷うようであれば、最新刊で手に入りやすく、北大路節の定番ということで、『生きていてもいいかしら日記 』あたりから、いかがでしょう。。
ただし、どれから読むにしても、何か飲みながら読んでると目の前にあるものが飲み物まみれになる危険性がありますので、おすすめしません。

ぜひ。



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by n_umigame | 2016-01-02 23:02 | | Trackback | Comments(2)

『syunkonカフェ雑記:クリームシチュウはごはんにあうか否かなど』山本ゆり著(扶桑社)


月間600万PVを誇る超人気ブログ「含み笑いのカフェごはん『syunkon』」
そして累計350万部突破のベストセラー料理本『syunkonカフェごはん』
シリーズの著者、山本ゆり初めてのエッセイ&レシピ集。
簡単でおいしい料理もさることながら、そこに添えられた文章が秀逸で
絶大な人気を誇る著者が過去2000を超えるおもしろ話の中から、
大反響の90編+αに加筆。
さらにエッセイにちなんだオリジナルレシピを追加しました。
笑いあり、屁理屈あり、ちょっと切ない話あり。もちろん、おいしい話も満載です。
「役に立たない本かもしれませんが、ちょっとだけ肩の力が抜けて、
読んだ人が今の人生でもいっか! と思えるような本であればうれしいです」(著者)
「この世にぴったりの靴がほとんどない件」
「毎年、去年裸で過ごしてたんかな?と疑問に思うほど着たい服がなくなる」
「今自分が考えている50分の1も他人は自分のことを考えていない」
「飲み会に当日いきなり行きたくなくなることってないですか?」
「レモン1000個分のビタミンCってそんなにいる?」
「美容院にて。流したりないところはありませんか?それはこっちが聞きたい」
「駄菓子屋のおばちゃんはぜんぜん子供好きではない」
…などなど、600万人ファンの心を掴んで離さない軽妙な関西弁と
独自の鋭い視点で綴る女子の日常。
思わずにやににや 笑ってしまう珠玉のエッセイ。
さらに料理が下手でも簡単につくれる! おいしい新作レシピも多数掲載!
(Amazon.jp)




お正月だもの初笑いにいかがですか第1弾。

山本ゆりさんの大人気お料理etc.ブログをまとめた本です。
「お料理etc.」なのは、ブログの読者の方はご存じかと思いますが、ただのレシピブログではないからです。
カフェごはん的なおしゃれ写真にだまされたと思いつつも次々と涙目で読むはめになってしまい、「"揚げない鶏のからあげ"のレシピを探していただけなのに、アタシはなぜこんな目に? もうあっというまに一時間よ? だまされた!」と、涙を拭きながら読んでいました。笑いすぎて。 

どの記事をご紹介しても顔が笑うのですが、当ブログにお越しの方は洋画好きな人も多いかと思われますので、試しにこちらを。

■感激します!!めっちゃ柔らかいラフテー。

用意するものが、まず『タイタニック』のビデオ(前編)ですから。
そんなレシピブログ見たことないわ。

この本以外にも、レシピ本が5冊出ていて、内容はほぼレシピなのですが、取調室風とか、小ネタが料理全然関係ないみたいなものもあって、むしろそればっかり読みたいくらいです。
料理家のはずなのに、おしゃれカフェ風ごはんのはずなのに、そうではない日常の晩ご飯とか、見るとほんとうに勇気が出ます。あまりにも雑で。(ほめてます)(同様の意見多数)食べかけとかね。
そういう写真でも気取らず飾らず、もろ見せなのが、もう。好き。

笑いを取ってきつつも、ちょっとまじめな記事もあり、お人柄が見えるようで読んでいて本当に気持ちがいい本です。
例えば、ブログを書くということについて。この記事はブログを書いている方にはぜひおすすめしたいです。ブログやSNSをやっていて、ときどきもやっとするときに読むと、本当に気持ちが楽になります。

また、個人的に、山本ゆりさんの関西弁は、文字で読んでいるだけでもとてもなつかしいと思っていたら、たぶん10代の頃の生活エリアがものすごく近いです。
ひとくちに関西弁と言っても近畿二府四県で語彙やイントネーションが多少違い、さらに大阪府の中でも摂津、河内では違い、摂津の中でも京都寄りの北部(北摂)とそうではない南部では違い…という、関西以外の地域の人にはわかりにくいと言うか、きっと聞き分けられないと思います(笑)。(わたしだってほかの地域の言葉のニュアンスはわかりません)
なので、中学のときのおもしろい友だちがしゃべっているのをずっと聞いているような安心感や気持ちのよさもあって、ものすごく自分のツボにはまったのだろうと思います。

それをさておいても純粋におもしろいですので、関西弁が嫌いだとか、文字で読むのも苦手だという方以外にはぜひぜひおすすめいたします。まずはブログでお試しで読んでからでもいいですしね。

ただ、やはり本になるということは、編集者などの第三者の目が入っているので、読み物としてブラッシュアップされています。その分、読みやすいです。
ブログでもほぼ同じ記事が読めますが、料理のレシピ以外に、ご家族のことや仕事のこと、お友だちとのことなどなど、とにかく「友だちがいろいろしゃべってる」感じのブログですので、正直、とっちらかってます。(壮大な「おまえが言うな」。)目移りしますし、同じ前置きが何度も来ますので、あまり時間がないけど笑いたいという方には、むしろ本の方でどうぞ。

あ、著者の名誉のためにもつけくわえておくと、実際に作ってみたお料理も美味しかったですよ!
「濃いすぎる」「若い人向き」という感想も見かけましたが、そんなもん、味とか調味料は自分で好きに調節したらいいんです。ファンション誌のコーデ丸パクしないでしょう。モデルさんと同じように着こなせるわけないじゃないっすか。レシピだってそうですよ、ええとこどりでいいんですよー。って、この本読んでたら改めて思いました。




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by n_umigame | 2016-01-02 22:09 | | Trackback | Comments(2)

『『罪と罰』を読まない』岸本佐知子ほか著(文藝春秋)


抱腹必至。読まずに語り、読んで語る読書会
翻訳家、作家、作家であり装丁家の四人が名著『罪と罰』の内容を僅かな手がかりから推理、その後みっちり読んで朗らかに語り合う。
「読む」とは、どういうことか。何をもって、「読んだ」と言えるのか。ドストエフスキーの『罪と罰』を読んだことがない四人が、果敢かつ無謀に挑んだ「読まない」読書会。
(Amazon.jp)

岸本佐知子、 三浦しをん、吉田篤弘、吉田浩美、4名の方の座談会方式で、『罪と罰』について、まずは未読の状態で一部(と言っても本当に1~2ページだけ)を拾い読みし、あれこれと推理をめぐらせながらああだろうこうだろうとツッコミまくり、次に読後に答え合わせをしながら、ああだろうこうだろうとツッコミまくるという、たいへん愉快な本です。
というか、もうこの面子でこの題材でおもしろくないわけがないですね?

今内容紹介を引用させていただくために見たら、あまぞんさんのレビュー欄、地味に荒れてますね?(笑)(2015年12月20日現在)
いや、わたくし、この本、めちゃくちゃおもしろかったですけど。

教養主義が廃れて久しく、大学では文系教養課程を廃止してしまえとか、文系の学部名もいかにも即物的な(あるいは何を勉強するのかわからないようなイメージ先行の)名称に改名されたりして、実学にあらざれば学問にあらずという現在の風潮には、わたくしも危機感を覚える一人です。
「すぐ役に立つ知識はすぐに役に立たなくなる」と言っている方があり、この言葉には深く頷きます。

ですが、この本の面子を見、さらにタイトルを見て、それで「『罪と罰』すら読んだことがないってどうよ」という感想は、やはり筋違いかと思います。肉屋の店頭で「ここは大根も置いてないのか!」とキレられても困るというか、そういう芸風を披露する場じゃないというか、読んでいないことが後ろ暗い(笑)からこそ、こういう企画が持ち上がり、しかもそれが、文芸翻訳家だったり作家だったりするから面白いのではありませんか。
そのギャップを楽しむ本だと思います。

事実、読もうと思ったら、皆さんお忙しい御身の上でしょうに、またたくまに読んで、それをこれだけ突っ込めるくらい読み込んでくることができる方々なのですから。

そして、このある意味捨て身の芸(笑)は、『罪と罰』を未読の読者に読みたいと思わせれば成功だと思いますが、それも成功していると思います。

これだけ本離れ、活字離れが叫ばれている中で、
「そんな本も読んだことないのか(冷笑)」
と言われるのと、
「わたしも有名すぎてかえって読んだことがなかったんだけど、読んでみたらけっこうエンタメでさ、すごくおもしろいの! さすが世界の文豪の傑作だよね!」
と言われるのと、どちらがその本への興味や、読書のモチベーションが上がるか、火を見るより明らかだろうと思われます。
よほど負けん気が強いとか、踏んづけられたら燃えるとか気持ちいいとかいうシュミの方は別でしょうけれども。「そんな本も(冷笑)」派が、本離れに拍車をかけている可能性もなきにしもあらずです。
「北風と太陽」ですね。


Twitterで読書会の常連の方々や、本が好きな方のアカウントを複数フォローさせていただいているのですが、思ったのは、人生の時間は有限で、そんなに本ばかり読んでもいられないし、それでいいのだということです。
そして、いくら本が好きな人でも、好みもあります。好きだからこそ、自分の好きな本がもうだいたい見えてきてしまっているということもあります。
賞を取ろうがエライ先生が大絶賛してようが、今話題だろうが映画化されようが、どうしても食指が動かない本というのがある。

そして本読みの方には同意していただけるかと思いますが、機会に恵まれたかどうかということが、けっこう読書体験を左右します。

つまり、本とは「出会う」ものなのであって、いくら名作・傑作の呼び声が高い作品でも、自分がその本から「呼ばれ」なかったので長年読まなかったということが、いくらでもあるということです。giftsでありcallingsでもあるのですね。

そういうおまえは『罪と罰』読んだのかって? もちろん読んでいませんとも。(どや。)(コッラー!)
『罪と罰』どころかあれだけ『カラマーゾフの兄弟』が流行っていたころすら、いっこも気持ちが揺れませんでしたからね。

わたくしにも教養主義というか、「これだけは読まないとな世界の名作」みたいな時期がありました。
ですがそれも高校生くらいまででしたね。
しかもそのころなぜかクラスでフランス文学が流行っていて、『赤と黒』『狭き門』などあれこれ読みましたが、根がエンタメなわたくしは『三銃士』から大デュマ先生にめろめろになってしまい、文学青年だった祖父に「デュマなんか大衆小説や。そんなんばっかり読んで」と叱られる始末。(岩波文庫のピンクのカバーのやつならいいと思ってたんですよ当時は…。)
大学生のころは英文とアメリカ文学ばっかり読んでいて、もちろん平行して中学の時はまったSF、ミステリばかり読んでいて、今に至るというわけですよ。(どや。)(だからコッラー!)
児童文学は大人になってから改めて読み始めましたしね。子どものころも少しは読んでいましたが、子どもが歩いて行ける距離に図書館も本屋もなく、小学校の図書室か、親が買ってくれていた本棚にあった本を繰り返し読むしかなかったのです。(中学は図書室がしょぼすぎて話になりませんでした。)

そんなわたしでも、この本のおかげで、ぜひ『罪と罰』を読んでみたいと思いました。
生前祖父も「読めー読めーロシア文学読めー」って言っていましたしね、やっとその気になったわ、おじいちゃん。不肖の孫ですまん。
親族に言われても1ミリもわいてこなかった読む気がわいてきたのですから、この本に感謝です。
遠くの親戚より近くの他人ですね!(きっと違う。)




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by n_umigame | 2015-12-20 21:45 | | Trackback | Comments(0)

『円空を旅する』井上雅彦著 (BT BOOKS) 美術出版社


マンガ家・井上雄彦が
江戸時代に12万体もの仏像を彫った
「円空さん」に出会う。
北海道、青森、岐阜、愛知、滋賀、三重を
訪ね歩いて見た仏像の数、約1400体。
描き下ろしスケッチ72ページ掲載。
…………………………………………
“お師匠さんがここにいた! "
「ぼくのマンガが円空の仏像のようであってほしい」。
旅を重ねるなかで井上雄彦はそうつぶやいた。
江戸時代の修行僧であり彫刻家、円空。
生涯に12万体を制作した稀代の人物の
足跡をたどる旅がはじまる——
(Amazon.jp)


『バガボンド』『SLAM DUNK』が代表作の漫画家・井上雅彦先生が、全国の円空仏を尋ねて歩かれた旅のスケッチ・記録本です。
自慢じゃありませんが、『バガボンド』どころか『SLAM DUMK』も読んだことがないのです。今となってはもう自慢していいかもしれません。(よくない)(読みなさい)

東本願寺で親鸞の屏風絵を描かれたというニュースを拝見していましたが、この本でもご自分で「何か知らないけどお寺に縁がある」とおっしゃっています。特に意識的に仏教方面のお仕事を引き受けてらっしゃるというわけではないのですね。

円空は美濃国(現在の岐阜県の西側)出身なので、岐阜県が一番多いのですが、全国を行脚して回ったため、各地に円空仏が残されているのですね。
わたくしは特に仏像が好きというわけでは決してないのですが、どういうわけか円空仏は好きで、旅先や出張先で見かけることがあると時間の許す限りまじまじと見つめています。
なので、書店の店頭でこの本を見かけ、コミックスのところに並んでいたのでシュリンクがかかっていて中身を確認できず、お値段に一瞬迷ったものの、いきおいでえいやと買ってしまいました。


円空仏は、なぜかどれも微笑んでいるように見えます。
特に自分がすさんだ気持ちのときや落ち込んでいるときなどに見ると、なんだか落ち着きます。
自分が好きなもので、地元の方に話題のきっかけとして出したことがあったのですが、「円空仏、どこにでもあるから」と、まるで全国チェーンのコンビニの話みたいに吐き捨てられてしまったことがあります。地元の方からするとそんなものなのかもしれませんね。

逆に言うと、この本でも書かれているように、生活に密着している仏さまなのですね、円空仏は。
ザ・一発彫りの作品が多いそうで、例えば奈良の国宝級の仏像たちのように、仏師の念がこもりまくっていてときどき怖くなるということがない気がします。(『火の鳥 鳳凰編』を読んでしまってからは特に怖くてですね。)


写真や図はオールカラー、井上雅彦先生のスケッチも豊富で、読みやすい本だと思います。
美術出版社から出ているので、円空仏を美術品として鑑賞するために必要な情報なども巻末に簡潔にまとめられていて、円空仏に興味のある人にも、井上先生のファンだという人にも、どちらにもオススメではないでしょうか。井上先生の作品を読んだことがないわたくしが言っているのですから、だいじょうぶです。(全然だいじょうぶな感じがしない。)

わたしもこの本を片手に円空仏行脚をしてみたいです。




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by n_umigame | 2015-12-20 18:40 | | Trackback | Comments(0)

『ホテル1222』アンネ・ホルト著/枇谷玲子訳(創元推理文庫)東京創元社

雪嵐の中、オスロ発ベルゲン行きの列車が脱線、トンネルの壁に激突した。運転手は死亡、乗客は近くの古いホテルに避難した。ホテルには備蓄がたっぷりあり、救助を待つだけのはずだった。だがそんな中、牧師が他殺死体で発見された。吹雪は止む気配を見せず、救助が来る見込みはない。乗客のひとり、元警官の車椅子の女性が乞われて調査にあたるが、またも死体が……。ノルウェーミステリの女王がクリスティに捧げた、著者の最高傑作! 解説=若林踏
(出版社HP)


本書の裏話的な「アンネ・ホルト/枇谷玲子訳『ホテル1222』ここだけのあとがき」はこちらで読めます。
作品の舞台となったフィンセや、(縁起でもないけど)事故に遭った列車の雰囲気、作中に登場する『ネミ』というコミックスなど、画像で見ることができて、わかりやすいです。
舞台となったホテル<フィンセ1222>の紹介もあり。


ハンネ・ヴィルヘルムセンシリーズ8作目とのこと。過去7作も邦訳があったようですが、7作目の『凍える街』以外は現在入手困難な状態のようです。


単純に「吹雪の山荘」ものの新刊だ、うわーい!というただそれだけの気持ちで刊行前からけっこう楽しみにしていた1冊でしたが(だってそう思いますよ、この帯の惹句だと)、ううむ。

何がしたかったのか。

読後の感想はコレにつきます。
いろいろな色のついた風呂敷を思わせぶりに開いたのだけれど、たたまれていないと申しますか。
最後まで読むのが困難なほど退屈だというわけではないですし、今流行の「北欧ミステリ」にありがちな、凄惨なシーンてんこもりだったり、人間関係が陰惨すぎて仕事終わりに読むのはうんざりするようなことはなかったのですが。
個人的に一カ所だけ沁みた箇所もありました。


以下、ネタバレにつきもぐります。







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by n_umigame | 2015-10-20 21:34 | ミステリ | Trackback | Comments(0)