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*さいはての西*

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『イースタン・プロミス』(2007)

病院で働くアンナの下に、一人の少女が運び込まれる。意識を失くした少女は、女の子を産み落とし、息を引き取る。バッグに入っていた手帳にはロシア語で日記らしいものが書かれており、少女がロシア人であることが分かる。手術に立ち会ったアンナは、少女の身元を確認するため、ロシア料理レストランのオーナーに相談すると、自分が日記の翻訳をしようと申し出る。しかし、その後、謎のロシア人、ニコライがアンナに近付き始め…。(goo映画)


うわーいててててて、ぎゃーいてててて、ひいいぃぃぃいいぃ!!!

というシーンが多くて、100分という短めの尺にも関わらず、けっこう目を逸らしてました。
飛び道具を使わないとすんごい痛そうな暴力シーンになりますね…。おなかすいてたら貧血になりそうでした。
包丁で小指の先を切っただけであんな痛いのに、あんな(以下自粛)とか、しかもサウナ(=すっぽんぽん)のときにあんたそんな(以下自粛)。(←ここが有名なシーンだったそうですね。)

『フロスト警部』にも東欧諸国から人身売買で売り飛ばされてきた少女たちが出てくるエピソードがありましたが、なんだか『フロスト』の方が痛々しかったのはなぜでしょうか。純粋にフロストの怒りがしみてくるからでしょうか。
イギリス…特にロンドンは本当に東欧からの人身売買の需要のたまり場になっているようで、人身売買をテーマにした作品がほかにもあるようです。
そう言えばこの映画では、アンナ(ナオミ・ワッツ)以外に純粋に怒る人が登場しませんね。皆、歪んでいて、歪んでいますがなんともいえない魅力がしみ出してくるキャラクターに描かれています。

ロシアン・マフィアのボスは、一見温厚そうな老人で、いかにも優しげなことを言ったりするのですが、フランス産ワインと少女を物々交換程度にしか見なしていなく、理由があったら(利己的な理由で)人殺しも何とも思っていない冷酷な人間。
このボスの一人息子キリルはファザコンでへなちょこでアルコール依存症という全方位的にダメ男で、子どもは好きらしく、運転手のニコライに頼り切っていて(というか恋愛感情で好きで?)、なんだか心底憎めないぼんくら息子。多分ゲイなんだけれども、父親は「自分のたった一人の息子が(ゲイなんて)……」とショックを隠しきれない様子で、ファザコンのキリルにはなおさらツライ展開に。
マフィアのファミリーなんぞに生まれなければただの気の弱いゲイのアルコール依存症の人として生きられたかもしれないのに。最後の赤ちゃんのところとか良かったですね。

ヴィゴ・モーテンセン演ずる運転手のニコライが主人公で、実は潜入捜査官であることがけっこうあっさりとわかるのですが、ラスト近く、冗談とも本気とも取れるような、「親分会議で認められて入れ墨も入れたしマフィアのボスになっちゃおかな」というようなセリフを言います。
このラストシーンは「ニコライがどちらに転んだかは観客の判断におまかせします」というような意味深な終わり方でした。

『ロシアン・マフィア』を読んでいて良かったと思ったのは、そこに書かれていたことが映像で見られたところですね。

あと全然関係がないのですが、ニコライがキリルに強制されて女の子を選ぶよう言われて、選ばれた少女の名前、姓がキリネンコ。(出身はウクライナ)
「ここは笑うところじゃないのよ悲しいシーンなのよ笑ったらダメ笑ったら……ぷっ。」と思わず笑ってしまいましたよ『ウサビッチ』ファン処置なしですね。すまん。

あまりにも図体の大きい、しかも何もかもが国がかりという政治体制だった国が瓦解するとたいへんなことになる、しわ寄せはすべて貧しい地域にやってくるのだ、ということが、じんわりとしみてくるお話でした。
by n_umigame | 2009-08-30 18:33 | 映画・海外ドラマ