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*さいはての西*

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『ダメージ シーズン1』(全13話)

ある朝のニューヨーク。高級マンションから血まみれの若い女性がふらふらと路上に出てくる。彼女は警察に保護され、自宅から婚約者が惨殺されているのが発見される。

6か月前、大物弁護士パティ・ヒューズの事務所に、その女性、新人弁護士のエレン・パーソンズが採用された。パティは巨額の賠償金が絡んだ訴訟を主に担当する高名な弁護士であった。エレンはその事務所に雇われ、恋人デービッドとも婚約。 仕事も私生活も順風満帆に思えていたが、採用早々大富豪のフロビシャーを相手にした集団訴訟のスタッフに加えられた事から人生が大きく変わりだしていく。(Wikipedia)


『プラダを着た悪魔』のネガ版みたいなお話なのかなと思っていたら、まったく違いました。
見終わった感想は「こんなに長い必要があるかなあ」でした…。イギリスのテレビドラマは1シーズン6話程度というものが多いように思いますが、その程度で十分見せられたし、かえって引き締まって良かったのではないかと思いました。


血まみれのエレンが路上を彷徨うシーンから始まり、エレンの婚約者デービッドが惨殺されたところを基点に時系列が過去や未来へ前後して物語は進むのですが、その重複が、視聴者を混乱させる以外にあまり物語を深めることに成功しているとは言い難く、大した仕掛けもないのに底上げして大味にしているだけという印象を受けました。
それを証拠に、と言うのも変ですが、全13話中、途中2~3話録画しそこねていた回があったのですが、全然、話、わかりました(笑)。1話完結の物語ではないのに、もし緻密な物語構成のドラマだったら13話中3話も抜けたら筋が追えなくなるはずです。

グレン・クローズの演技を見る、という意味ではたいへんオススメの濃いドラマなのですが、でもグレン・クローズが巧いのはもうわかっているわけですよ。
なので、脇を固める役者さんたちが、グレン・クローズのギャラに食われちゃったのか? と思うような小粒で、しかもぴりりと辛くもない、という中途半端な印象で非常に残念です。どの役者さんたちも役柄に対して典型的すぎるというか優等生的すぎて。これで脇役の役者さんたちが、無名でも「おおっ、この人いいなあ」というような印象を残す役者さんたちだったらまたこの「薄味感」が変わったのではないかと思います。(それを反省?したのか、シーズン2ではウィリアム・ハートがレギュラーで登場するようですが)

エレン役のローズ・バーン、『ノウイング』を先に見ていたせいか、どことなく湿っぽい影のある、華のない女性が似合いますね。どちらの役も、半分は自業自得でどんどん不幸になっていく女というのが。
比べるのがかわいそうだよというご意見もあろうかと思いますが、エレンはパティ(グレン・クローズ)の敵ではないです。
シーズン1最後で婚約者を殺された復讐のためにあえて虎口に戻る覚悟を決め、シーズン2では二人の頭脳戦が繰り広げられるようですが、はてさて。


シーズン1は終わりましたが、アメリカのドラマらしくシーズン2以降に「持ち越し」の「謎」がたくさん残りました。
以下ネタバレです。













最終話でいきなり「聞いてないよそれ」という新事実が続々出てきましたが(笑)、ナイがFBIに協力していた、というのはシーズン2へのつなぎということでまあよしとしましょう。

デービッドを殺した男が実はニューヨーク市警の刑事だった、という事実ですが、彼はフロビシャーにお金で雇われていたのでしょうか。テープが欲しいだけだったら、刑事だったらあんな即物的な方法取らんともっとうまくやれ、職権濫用する方法がほかになんぼでもあるやろ、と思いましたが(笑)最終回に全部持ってこようとしたせいか取ってつけたようでしたね。
それにお金が目的だったらフロビシャーはほぼ破産、どころか殺されちゃったらお金もらえないじゃないですか。この刑事にとってメリットは何?

かくいうフロビシャーも本当に死んだかどうかわかりませんね。

あれだけストーカーに狙われていて鍵を替えないデービッドもまぬけというか何というか…。まあ替えちゃったら話にならないからでしょうが。
ライラはただのストーカーだったのでしょうか。

エレンを殺そうとしたのはパティ、ということで良いのでしょうか。「全部片づいた」という電話をパティにかけたピートおじさん、その電話を切って浜辺で泣き出すパティ、という切り張りの映像からだとそういう解釈しか成り立たない気がするのですが、でもどうせエレンを片づけるなら、あのまま殺人で有罪になるように持っていけば社会的には抹殺されるわけなので、危ない橋を渡ってまで物理的にエレンを殺害するメリットがパティにはないようにも思うのですが、どうでしょう。なのに保釈金を積んでエレンを釈放していますよね??

また、突然夜家に帰ってきたパティの息子も意味ありげでなぞのままです。
エレンが35年前に死産した女の子も何かの伏線なのかなぞのまま。(ふつう何年何月何日~何年何月何日までという墓名碑が、1日しか日付の表示がないお墓が悲しかったですね…)

フィスクが自殺したのも、ゲイだということがばれたから? でも奥さんいますよね? 偽装結婚? たまたまグレッグに出会って好きになっただけ? これもすっきりしません。

デービッドやグレッグ、フィスクという、けっこういいヤツばっかりひどい死に方をして、生き残るのは女と腹に一物抱えた男ばかりという、なんだか制作者の皮肉を感じないでもないシーズン1でした。
でもデービッドたちのような「地の塩」とも言うような人たちが、この世の中には必要なんですよ。
by n_umigame | 2009-08-31 15:24 | 映画・海外ドラマ