『字幕屋のニホンゴ渡世奮闘記』がおもしろかったので、太田直子さんの本をまた読んでみました。
万国の字幕派よ、団結せよ!字幕屋稼業30年、オオタ氏の嘆き節、ボヤキ節炸裂。字幕翻訳の苦労を知ると映画がもっと楽しくなる!映画ファン、字幕派におくる痛快エッセイ。
(帯より)字幕に「、」と「。」がナイって知ってる?!
字幕翻訳の苦労を知ると映画がもっと楽しくなる!
「句読点は使わない」などの字幕ルールや「1秒4文字」の字数制限と格闘する字幕翻訳家。 苦労して訳しても「字幕は読むのが大変」というお客さまも出てくる始末・・・。
字幕屋稼業30年、1000本以上の映画の翻訳を手がけてきた字幕翻訳者・太田直子氏が、 翻訳の苦労や字幕制作のウラ側、日本語と字幕のカンケイなど、字幕屋の日常と本音を明かす。 映画ファン、字幕派に送る痛快エッセイ。
(Amazon.jp)
映画字幕(一部ドラマ字幕)についての現状については前作に詳しいので、興味がある方はぜひそちらをお読みいただければと思います。
今回の本では、テレビドラマシリーズを引き受けることのリスクについても書かれていて、興味深かったです。
例えば、時間が空いているときにあるドラマの字幕を引き受けたとします。でも、映画の字幕翻訳にも、もちろん文芸翻訳にも言えることですが、同じ単語や文章でもそれがどういう文脈(場面)で言われた言葉なのかによって翻訳は変わってきます。単発で終わるものならまだしも、何シーズンも続いているドラマだと、キャラクターの口調などを統一する必要があるので、自分一人で見られない場合は全体を統括する役目の人が必要になると。けれども基本的に個人事業である翻訳家にはそれがむずかしいのだそうです。
確かに、日本語の場合は、キャラクターの一人称が「わたし」なのか「俺」なのかはたまた「ぼく」なのか、それが変わっただけでもずいぶん印象が違ってしまいますよね。
同じ海外ドラマを何シーズンか続けて見ていると、「何だか今シーズンの字幕はどことなく違和感があるなあ」と感じるのは、そのあたりがきちんと詰められていないからかもしれません。
これがまだ英語のドラマならまだしも、ほかの言葉だと字幕に頼りっきりになってしまう身にとっては、やはりきちんと詰めていただきたいなあと思います。やはり、意味さえ取れればいいだろうというものではありませんものね。
そんなわけで今回もとても楽しかったのですが、個人的に特にうれしかったのは、自分がドリームワークスのアニメーションにどハマりした原因の一作『マダガスカル3』の字幕についての裏話が伺えたこと。
問題のシーンは、特に吹き替えでは「そんなこと言ってない」という点では誤訳と申し上げても良いかと思うのですが、話し言葉のテンポやリズムを考えて確信犯的にああいった訳にされたのだなと。
著書中では作品名は明記されていませんが、やはり考えに考えて配慮されたのだなと、改めて知ることができてよかったです。
このシーンが、原語通りに訳しても、日本でも誰もが笑って見られるような日が早く来ればいいのにと思います。
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